マンションやアパートに住んでいて、インターネット回線は「VDSL回線(配線)」を使っているという方も多いはずです。あるいは、光回線を使っていると思っていたのにどうも速度があまり速くないと感じている方は、もしかすると集合住宅が宅内配線にVDSL回線を導入しているのかもしれません。しかし、VDSL回線でも「IPv6 IPoE」を活用すれば高速化が実現できる可能性があります。VDSL回線とIPv6 IPoEの関係について解説します。
VDSL回線(配線)はマンションやアパートなどの集合住宅で光回線を利用する際に、光回線だけでなく電話回線を併用するタイプの回線または配線です。
VDSL方式では集合住宅の各部屋まで光ケーブルがつながっているわけではありません。光ケーブルは電柱から建物内の共用スペースに電話回線をまとめて管理するための「MDF室」まで引き込まれ、その先の各住居までは電話回線(メタルケーブル)によって配線されています。つまり、建物単位でインターネット接続用光回線が1回線引き込まれ、すべての住居がそれを電話回線(メタルケーブル)でシェアしている形です。
これに対し、建物内のすべての部屋に1本ずつ光回線を引き込む方式を光配線方式と呼びます。最近は光回線方式の集合住宅が増えてきています。
VDSL回線が光回線に比べて遅いのは、1本の光回線をみんなで分け合っていて、さらに電話回線を使っているためです。VDSL回線の速度は一般的に最大100Mbpsと言われますが、実際には100Mbpsに達することはまれで、夜間や休日などの混雑時にはさらに速度が低下することがあります。
ちなみに各部屋にはVDSLの場合はモジュラージャックが、光回線の場合は光コンセントが用意されています。どちらの回線を使用しているかを見分けるときの参考にしてください。
では、集合住宅にVDSL回線が引かれていて、住人が「速度が遅い」と感じている場合、住人自身が速度改善のためにできることはないのでしょうか。
実はVDSL回線を利用していても「IPv6 IPoE接続」に切り替えることで、速度を改善できる可能性があります。
IPv6 IPoE接続は、NTT東日本・西日本の次世代ネットワーク(NGN)へ接続することができ、VNE事業者のサービス「IPv4 over IPv6 接続方式」などでインターネットに接続する方法です。
ここでは技術的な詳しい説明は省きますが、「IPv4 PPPoE」というこれまでの接続方式ではフレッツ網内の網終端装置がボトルネックになっていました。しかし、それに代わる「IPv6 IPoE」という新しい接続方式を利用すれば、網終端装置を経由することなく、光回線本来のスピードを活かした通信環境を整えることができます。それにより速度の改善が期待できるというわけです。
VDSL回線でIPv6 IPoEを活用するには、VNE事業者のサービスに対応したプロバイダー加入が必要です。これによりIPv6通信だけでなく、IPv4通信も可能になります。これは、IPv4通信をIPv6通信にくるんであげる(カプセル化する)ことで実現できて、主流な方式はMAP-Eとなります。MAP-Eを採用したVNEサービスは、「v6プラス(JPNE社)」や「OCNバーチャルコネクト(NTTコミュニケーションズ社)」が有名です。いずれも「IPv4 over IPv6」(IPv4をIPv6でくるむ)の技術ですが、利用するには対応するプロバイダーへ加入する必要があります。
MAP-EはIPv6インターネット上でIPv4通信を行うための規格のひとつです。IPv4パケットをIPv6で「カプセル化」し、カプセル化したパケットを「IPv6のデータ」としてNGN網(NTT東西の次世代ネットワーク)を経由させることで、混雑ポイントを回避できます。そのため、光回線ならではのより快適な通信が可能となります。
v6プラスとOCNバーチャルコネクトは、どちらもMAP-Eを通信方式に使用したサービスの名称です。IPv6インターネット接続と、IPv6ネットワーク上で実現するIPv4インターネット接続の両方を共存させたまま利用できます。
IPv6を活用してもVDSL回線の最大速度が100Mbpsというのは変わりません。これは最終的には電話回線を使用していることによる限界です。これに対し、光回線をそのまま使うとすれば最大1Gbps=1000Mbpsとなります。
VDSL回線で速度に悩んでいる方は上記を参考にしてください。また、IPv6 IPoEを最大限活かすならやはり光回線がおすすめです。
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