引っ越しにあたり、電力会社や水道局に連絡するのに比べて、少し面倒に感じてしまうのがインターネット関連の手続きです。契約先が複数にわたる場合があるというのと、引っ越し先で引き続き同じプロバイダー、ならびに回線事業者を利用するのか、新規で契約するのかといった違いも出てきます。
そこで今回は、引っ越しの際、インターネットの手続きにはどんなことが必要かについて、継続利用、解約・変更・新規利用の場合など、パターン別にその手続きの流れや注意点について解説します。
引っ越し前の住まいでインターネットを利用しているのなら、通常はプロバイダーと回線事業者という2つの業者と契約をしているはずです。
契約はプロバイダーと回線事業者、個々で契約するケースと、セットで契約するケースがあります。セットでの契約の場合は、移転手続き(引っ越しの手続き)や契約解除の手続きはプロバイダーに一括してお願いできるケースがほとんどです。しかし、個々で契約している場合は、回線事業者への手続きが必要です。
引っ越しの際は、まずは自分が両業者と個々で契約したのか、プロバイダーを通して回線事業者とセットで契約したのかを確認しましょう。
引っ越し先となる新住所でも同じインターネットの回線、プロバイダーを継続して利用する場合には、以下のような流れで手続きを行います。
引っ越し先がマンションなど集合住宅の場合、回線設備が導入済みかどうかを管理会社に確認しましょう。導入されているという場合は、回線の種類と回線事業者の名前も聞いておきます。
現在利用している回線事業者かプロバイダーに問い合わせることで、入居を考えている引っ越し先のマンションに同じ回線事業者の回線が導入されているかどうかなどを確認してくれるケースもあります。
※プロバイダーと回線事業者の契約が別々の場合のみ
回線事業者とプロバイダーが別々の契約の場合、まずは回線事業者に連絡が必要です。たとえば、東日本在住の方であれば、NTT東日本に電話をして電話回線(電話を使用している場合)と光回線(光回線を使用している場合)を移転する旨を伝えます。その際、移転先の住所と、現在利用中の電話番号、契約者名などを伝える必要があります。移転先は戸建住宅か集合住宅か、移転先で利用するプランはどれにするのかなども伝え、移転元の最終利用日と移転先の開通工事日を決めます。
また、その際、移転工事費の確認もしておきましょう。なお、NTT東日本とNTT西日本のエリアをまたいでの移転は、一旦、NTT東日本との契約を解約し、NTT西日本と新規契約を結ぶ必要があります。新規契約を結んでも以前の電話番号をそのまま使用できるので、電話番号が変わる心配はいりません。
上記の移転手続きはホームページ上でも可能です。手順は各回線事業者のホームページに詳しく書かれているので、それに従って行えば簡単にできます。
回線事業者(この場合はNTT東日本)に移転の申し込みをしたら、次は以下の流れに沿ってプロバイダーとの手続きに移ります。
また、プロバイダーを通して回線事業者と契約している場合(ほとんどがこのケースです)も、以下の流れに沿って手続きをします。
※プロバイダーと回線事業者の契約が別々の場合、同じ場合、どちらのケースも必要
まず、プロバイダーが引っ越し先でも利用できるかどうかを確かめないといけません。契約先のプロバイダーに電話するか、公式サイトの問い合わせフォームから連絡してみましょう。新住所を伝え、利用可能かどうかを確認します。確認した結果、もしも引っ越し先が対応エリアから外れていたら、解約手続きをして引っ越し先で利用できるプロバイダーを探さなければなりません。
新住所の場所、家の形態によって適用されるプランが異なる場合もあります。細かい点も含め、不明な点はよく確認しておきましょう。
引っ越し先でも継続して現プロバイダーのサービスが利用可能とわかったら、正式に引っ越し(移転)の連絡を入れましょう。電話や公式サイトのフォームから、新しい住所と移転の希望日を伝えることができます。
また、プロバイダーを通して回線事業者と契約している場合、プロバイダーが回線事業者にも移転、継続の旨を連絡してくれるかどうかについても念のため確認しておきましょう。
レンタルしている機器は、一度返却して、新しい機器を使用するケースもあるので注意しましょう。
現在の回線事業者やプロバイダーと解約して、新しい回線事業者やプロバイダーに変更したい場合の流れも紹介します。
回線事業者とプロバイダーを別々に契約している場合は、まず回線事業者に解約の旨を連絡しましょう。連絡先、伝える内容は、上記でお伝えした通りです。
プロバイダーを通して回線事業者と契約している場合は、以下の流れに沿ってプロバイダーを通して手続きをします。
解約にあたって、タイミングによっては違約金がかかる場合があります。その金額と、違約金がかかる期間を確かめます。もう少し待てば違約金がかからなくなるというタイミングであれば、月額利用料と違約金とを比べてみるなどし、解約日を改めて見直してみてもよいでしょう。
電話や公式サイトのフォームから、プロバイダーに解約の連絡をします。解約にあたってはレンタル機器の返却が必要になる場合もあります。その場合、レンタル機器の返却の際に必要な送料は誰が負担するかについても確認しましょう。
引っ越し前の住まいが集合住宅で、回線を個別に引いていた場合などに、工事が必要かどうかを確認します。
のこりの利用料金は、日別で支払うのか丸々一か月分支払うのかなどについても確認しましょう。
現プロバイダーで取得したメールアドレスを引き続き使用したい場合は継続プランを利用
プロバイダーを解約しても、現プロバイダーで取得したメールアドレスを継続して使いたい方もいるでしょう。プロバイダーによっては、月々数百円でメールアドレスだけを継続して使えるプランが用意されているので確認してみましょう。
引っ越しを機に新規の回線・プロバイダーと契約する場合の手続きは以下の通りです。
回線事業者とプロバイダーにそれぞれ新規申し込みのための連絡をします。申し込み窓口は電話かインターネットが一般的で、業者によっては店頭でも受け付けています。
回線事業者への申し込みは、(1)提供エリアの確認、(2)利用を希望するサービスとプロバイダーの選択、(3)個人情報の伝達(入力)、という流れで必要事項を伝えます。申し込みが完了すると開通工事の日時調整の連絡があり、設定に必要な書類などが送付されてきます。
プロバイダーへの申し込みは回線事業者と契約したあとで行います。こちらも回線事業者の名称、希望するサービス(コース)、個人情報などを伝えます。
なお、光コラボレーションなど回線事業者とプロバイダーがセットになったサービスを利用する場合は、光コラボレーションのサービス提供会社への一度の連絡で申し込みが完了します。
回線には大きく分けて、光回線やADSL、CATVなどの「固定回線」と、モバイルWi-Fiルーターを利用する「モバイル回線」があります。
ここでは基本的に固定回線を利用する場合を説明していますが、一人暮らしで利用者が複数ではなく、なおかつ外出先でもインターネットを使いたい人などはモバイル回線を利用するのも便利です(しかし、固定回線には、回線速度が安定し、容量制限がないというメリットがあります)。
固定回線の場合、現在は高速で安定した通信ができる光回線が主流です。光回線を提供している回線事業者の代表はNTT東日本とNTT西日本で、商品名は「フレッツ光」です。NTT以外にもauひかり、NURO光、コミュファ光、ピカラ光、BBIQ、eo光などの事業者が存在します。提供エリアが限られている回線事業者もあるので、まず引っ越し先のエリアで利用できる回線事業者の中から選ぶ必要があります。対応エリアが広いのはNTTで、これに続いてauひかりなども全国にエリアを広げつつあるという状況です。
また、2015年からはプロバイダーなどの会社がNTTの光回線を借り受け、別のブランドで提供する光コラボレーション(光コラボ)が始まりました。回線はフレッツ光と同じですが、プロバイダーとセットになっていて、利用料金も異なります。回線事業者とプロバイダーを別に契約するのがわかりづらかったり、光コラボならではの割引適用が受けられそうだったりする方は、光コラボレーションの利用を選択肢のひとつに含めてみましょう。
回線事業者はこれらの中から、対応エリア、料金、速度と安定性などを比較して選びます。
プロバイダーは回線事業者よりさらに多くの会社があり、選択の幅が広くなります。選ぶときは、知名度や料金だけではなく、サービス内容、サポートの手厚さなども比較してみましょう。また、回線事業者によって契約できるプロバイダーが異なるので、まず前提として回線事業者に対応するプロバイダーの中から選ぶ必要があります。
プロバイダーのサービスとしてはメールアカウントの無料取得、メールボックスの容量無制限、ブログサービスやクラウドサービスの無料または割引利用、Wi-Fiルーターの無料レンタル、保険商品の割引制度などさまざまなものがあります。
またサポートの手厚さに関しては、電話やメールでの問い合わせにすぐに応じてもらえるか、設定方法の説明やFAQなどが充実しているかなどが判断材料になるでしょう。インターネットが使えなくなったときに自分で対処できる自信がない、そもそも始め方がよくわかっていないという方にとっては重要になるポイントです。
さらに、高速通信に対応した新しい通信規格を採用しているかどうかも見逃せないポイントです。具体的には、「IPv6(IPoE)」という方式で接続できれば高速かつ安定した通信が可能です。
継続利用、解約、新規契約いずれの場合も、各社に移転の1ヶ月前には連絡をしましょう。特に新規契約で工事が必要になる場合は工事日の予約なども必要になるので、早めにしておくべきです。場合によっては回線が利用できないことがわかるなど、契約する回線事業者やプロバイダーのプランの見直しを迫られる可能性もあります。
特にフレッツ光の移転手続きはかなり混み合います。引っ越し先ですぐにインターネットを使いたいならできれば1~2ヵ月前、遅くとも2週間前には手続きをしておきたいところです。
これまでモバイル回線であるモバイルWi-Fiルーターのみを利用していて固定回線は使っていなかったという場合は、引っ越し先でも同じようにモバイルWi-Fiルーターを使用できるか、事前に確認しておく必要があります。
なぜなら、モバイル回線は使用する場所によって通信の速度や安定性が変わることがあるためです。対応エリア内であっても、建物の構造や周囲の状況によって、部屋の中では電波がしっかりと届かないというケースもあります。引っ越し先が決まったらモバイルWi-Fiルーターを実際に持っていって、安定した通信ができるかどうかを確かめておきましょう。
引っ越しの際のインターネット手続きにおけるそのほかの注意点は以下の通りです。
引っ越しをするとどうしても引っ越しの前後でインターネットを利用できない期間が発生してしまうことがあります。引っ越し先での工事が必要で、工事日が遅れてしまうのが主な理由です。移転でも新規申し込みでも、工事が必要になるときはなるべく余裕を持って早めに申し込みをしておきたいところです。
それでもブランクが生じてしまうという場合に、パソコンやタブレットなどでインターネットに繋げるには、一時的にスマートフォンのテザリングという機能を利用するという方法もあります。ただ、テザリングを使いすぎると携帯キャリアとの契約時に決めたデータ容量を超えてしまうこともあるでしょう。動画を見たい、ゲームをしたいといった用途にはあまり向きません。
そこでモバイルWi-Fiルーターを1週間~1ヶ月程度の短期間だけレンタルするという方法も考えられます。引っ越しが決まったのが急で手続きが遅れ、インターネットが使えるようになるまでに少し時間がかかるといった場合は、最初から短期間のモバイルWi-Fiルーターを利用することを前提にスケジュールを組んだ方がいいかもしれません。
引っ越し先での回線工事や設置工事をする場合は、立会いが必要になることがあります。光回線の場合、戸建てや回線が引かれていない集合住宅の場合であれば工事にかかる時間は2時間程度でしょう。すでに建物に回線が引かれていて、部屋にまで回線を引いて機器を設置するだけなら30分~1時間程度で終わるはずです。
CATVなどでも業者の担当者が来て回線状況を確認し、インターネットを使用可能にするための設定などをするために立会いが必要なことがあります。
回線・プロバイダーともに継続することにしたとしても、引っ越し先では以前ほど回線のスピードが出ないことがあります。また、夜間の特定の時間帯や休日になると急に速度が落ちるなど安定性に欠けるケースも見られます。これはエリアや建物内の配線方法などの環境・条件が変わると、それらもスピードや安定性に影響するためです。
ただし、IPv6(IPoE)という接続方式を利用すれば、引っ越し先でも高速かつ安定した通信ができる可能性が高くなります。IPv6(IPoE)ではインターネットに接続する際に「網終端装置」を経由する必要がありません。そのため混雑しやすいポイントを回避でき、光回線が本来持つ速度を最大限引き出すことができます。
引っ越ししても快適なインターネットを楽しみたいときは、IPv6(IPoE)が利用できるかどうかという点もチェックしておきましょう。
引っ越しを機に、新たな回線・プロバイダーとの契約を検討されている方に朗報です。
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