格安SIM(あるいは格安スマホ)には、メリットもあればデメリットもあります。メリット、デメリットは、どちらも格安SIMの特徴そのものにも直結しています。その中身をよく理解し、納得してから格安SIMを導入して、後から「こんなはずでは……」と思うことのないようにしてください。ではまず、メリットから順に解説していきましょう。
MVNO各社が提供している格安SIMの最大の魅力は料金が安いことです。現在、スマホを使っている人なら月々の携帯代は6,000円、7,000円は当たり前、本体価格も割賦で支払っている場合には1万円を超えるという人も少なくないはずです。しかし格安SIMでは月々1,000円台、もしくはもっと安い金額で運用することも可能です。
それでは、具体例を見てみましょう。
「DTI SIM」は、契約事務手数料(登録手数料)3,300円(税込)、およびdocomo SIM 発行手数料433円(税込)で始められます。
月間データ容量は、1GB、3GB、5GB、10GB、15GB、20GBから選べます。月額基本料金は1GBのデータプランなら660円(税込)/月、3GBで924円(税込)/月、5GBで1,342円(税込)/月、10GBでも2,310円(税込)/月で提供をしています。1GB、3GBというのは月ごとの上限データ通信量で、1GBでは物足りない方もいるでしょうが、5GBあれば多くの方が許容できる範囲内でしょう。
また、858円(税込)/月で5分以内の国内通話がかけ放題になるオプションも用意しているので、よく電話をかけるという方も安心して利用することができます。
月に6,000~7,000円、またはそれ以上の金額を支払っていた人にとっては、格安SIMの安さは十分すぎるメリットと言えるでしょう。
格安SIMでは、料金体系がシンプルなこともポイントです。NTTドコモ、au、ソフトバンクモバイルなどの大手キャリアの料金プランは複雑すぎて難しいと感じる人も多いはず。「○○オプション」や「○○割」と名前のついた制度が適用されていることはわかっても、それで結局どれくらい得をしているのかよくわからないという人もいるでしょう。
しかし、格安SIMのために用意されているのは、一目見れば理解できるようなプランばかりです。まず上限データ通信量の容量ごとに「データプラン」などと呼ばれるプランがあります。
前述の「DTI SIM」であれば、1GBで660円(税込)/月です。他は会社により、データプランにプラスしてSMSが使えるプラン、音声通話もできるプラン、格安スマホがセットされたプランなどがあります。
いずれにしろ、最初にプランを決めれば「毎月○○円」という定額になっていて、あとは通話料などが加算されるだけです。これなら自分の使い方に合ったプランも簡単に選べるはずです。
大手携帯キャリアの場合、スマートフォンを契約すると、かけ放題の音声通話サービスも契約する必要があります。普段、通話はLINEなどの無料通話アプリを使うという人の場合、実はこういったかけ放題サービスはあまり意味がないのではないでしょうか。
その点、格安SIMであれば、かけ放題などの音声通話サービスなしで音声通話ができるSIMを契約することも可能です。電話を受けるためや緊急の時のために電話番号は欲しいけど、日々の生活ではあまり電話をしない、という人であれば、より契約をシンプルにすることができます。また、データ通信オンリーのプランもあり、通話はインターネット電話を利用する、と割り切ってしまえば、さらに安く運用することも可能です。
最近では格安SIMでも「3分」や「5分」など限られた時間内であればかけ放題になるサービスや、ある程度まとまった通話時間をお得な定額料金で提供するサービスも増えつつあり、音声通話をよく利用する場合も選択肢が増えてきています。DTIでも、前述の通り月額858円(税込)で5分以内の国内通話がかけ放題になるオプションサービスを用意しています。
大手携帯キャリアでは多くの場合、「2年縛り」と呼ばれるような契約をし、契約を更新する月に解約や他社への乗り換えをしないと違約金を支払うことになってしまいます。
該当月に申し出をしなければ契約は自動更新され、その後2年間はまた違約金がかかる仕組みです。一方、格安SIMの場合、プランによっては違約金自体がなかったり、最低利用期間を過ぎれば解約しても違約金が発生しなかったりします。そのため、格安SIMではもっと安くて自分に合うプランが見つかれば、気軽にそちらに乗り換えることができます。
さて、ここからはデメリットを見てみましょう。
格安SIMではキャリアメールが使えません。キャリアメールは、ドコモは「~@docomo.ne.jp」、auは「~@ezweb.ne.jp」、ソフトバンクは「~@softbank.ne.jp」というアドレスのメールのことで、これが使えないと絶対に困るという人は格安SIMは選択肢から外さざるを得ません。
これはドコモのネットワークを借り受けているMVNOの格安SIMでも同じことです。キャリアメールの代わりはGmailやYahoo!メールを使う人が多く、iPhoneを使っていて「~@icloud.com」「~@me.com」というメールアドレスを所持している人はこちらも使用できます。
また、ほとんどの格安SIMではLINEの年齢認証ができません。LINEの年齢認証は各キャリアのユーザーページ(My SoftBank、auお客様サポート、My docomo)経由でしか行えないためで、年齢認証ができないと、LINEのID検索が使えません。それを除けばLINEは通常どおり利用することができます。同様に、格安SIMではキャリア決済サービスなどのキャリアが提供するサービスも使えなくなります。
格安SIMは、大手携帯キャリアから回線設備を借りてサービスを提供しています。NTTドコモ社やKDDI社の設備を利用するため、サービス提供エリアや最大通信速度は同等となりますが、格安SIMの提供会社ごとに借り受けているネットワーク帯域やユーザーの数により、大手携帯キャリアよりも通信速度が遅くなることが多くなります。また、通勤・通学時やお昼休み等利用者が増える時間帯では、格安SIMの提供会社によっては通信速度が安定しない場合もあります。
ただし、遅いといっても動画を高画質で視聴したりしなければ、格安SIMでも実際に利用する分にはほとんど問題がないでしょう。例えば動画視聴やアプリのダウンロードなどは自宅でWi-Fi環境を利用し、外出先はスマートフォンではメールやSNSのチェック、テキストの記事が読めればOKという人であれば、格安SIMでも十分運用できます。
主に自宅や職場においてWi-Fiで使用するという人なら、あえて低料金な小容量プランを選ぶという方法もあるでしょう。
今使っている電話番号をそのままにして乗り換えるMNPは、格安SIMでも利用できます。しかし、大手キャリアの場合のように、ショップで手続きをして即日使えるようになるとは限らないので注意してください。格安SIMが自宅に届くまでの数日間、以前の回線が停止して電話が使えなくなる場合もあります。
ただし、最近では格安SIMでも店頭販売を開始したり、ネットで申し込む場合も到着後に自分で切り替えるタイミングを設定できたり、即日MNPへの対応が進んでいます。
格安SIMではSMS(Short Message Service)はオプションで使用できるようになります。SMSは、メアドがわからなくても電話番号がわかる相手とならメッセージのやりとりができるのが便利で、LINEやモバゲーのユーザー登録認証にも使用することがあります。
そしてSMSの“効用”はそれだけではありません。これは端末によっても異なるのですが、SMS機能がないと音声用の回線が認識されないために、端末が「電波がちゃんとつかめてない」と判断して電波を探し続けることがあります。するとバッテリーがみるみるうちに消費されてしまう「セルスタンバイ問題」が生じてしまうのです。
SMS機能を付加すればこの問題は解決します。ただその分、料金は月150円程度高くなり、またSMSを使えば従量制で利用料がかかります。格安SIMを契約する時はとりあえずSMSを付けておくと上記の問題は回避できますが、SMSを使い過ぎると料金がかさむので注意が必要です。
以上、格安SIM、格安スマホのメリットとデメリットがおわかりいただけたでしょうか。格安SIM、格安スマホを使うなら自分の用途に本当にマッチングするのか、メリットを生かせて、デメリットには目をつむれるかどうかをよく考えなくてはなりません。ただ、それでも格安SIMをすすめる理由があります。
デメリットとしては、キャリアメールが使えなかったり、データ使用量が限られていることが挙げられますが、それぞれのデメリットはある程度回避できる状況にあるからです。通話よりもSNSを利用する、連絡方法もキャリアメールからLINEに切り替えている、データ容量に関しても自宅でWi-Fiを利用するといった使い方をしている方も多いでしょう。デメリットの完全なる回避ではないかもしれませんが、それ以上に、月額の費用を数千円も削減できる格安SIMの費用的なメリットの方が魅力的だと言えるのではないでしょうか。
すべての方に格安SIMが最適とは言いませんが、再度、メリットやデメリットを考えてみてはいかがでしょうか。
2017年1月更新