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映画『明け方の若者たち』あらすじ紹介&ネタバレ考察|ラストで“僕”が携帯電話を失くした意味は?

おさとう

更新日:2023-1-13

<プロモーション>

2021年に公開された映画『明け方の若者たち』。

 

若者から支持される人気WEBライター兼小説家のカツセマサヒコさんの同名小説を原作とし、北村匠海(きたむら たくみ)さんや黒島結菜(くろしま ゆいな)さんがキャストを務めた本作は、恋愛要素を含みつつも大人になっていくことへの葛藤を描いた青春映画となっています。

 

今回はそんな『明け方の若者たち』をまだ見ていない方やすでに見た方に向けて、

 

・『明け方の若者たち』ってどんなストーリーなの?

・どうしてR指定なの?

・ラストシーンの意味が分からなかった

 

などの疑問や悩みを解決していく内容を書いていこうと思います。

 

また、『明け方の若者たち』を無料で視聴できる動画配信サービスやスピンオフ作品の紹介もしていますので、ぜひ読み進めてみてください!

 

 

映画『明け方の若者たち』作品紹介

明け方の若者たち_メインビジュアル

 

『明け方の若者たち』作品概要

公開日

2021年12月31日

監督

松本花奈

原作者

カツセマサヒコ

キャスト

北村匠海、黒島結菜、井上祐貴

楽駆、菅原健、高橋春織、山中崇

高橋ひとみ、濱田マリ、他

上映時間

116分

 

2021年12月31日に、WEBライター兼小説家・カツセマサヒコさんの人気同名小説を原作に製作・公開された映画『明け方の若者たち』。

 

若干16歳で映画『真夏の夢』を制作、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭で審査員特別賞を受賞した経歴を持つ、新進気鋭の女性監督・松本花奈(まつもと はな)さんが監督を務めました。

 

本作は、原作に漂う雰囲気を忠実に再現するため、東京・明大前駅近くの「クジラ公園」や下北沢、高円寺などでロケが行われています。

 

その他にも東京スカイツリーなど、「これぞ東京!」という場所や建物が映画に登場するので、東京の街を楽しむという視点で見ても面白いかもしれませんね。

 

原作者・カツセマサヒコってどんな人?

 

発行部数6万部超えを記録した人気同名小説を映画化した『明け方の若者たち』。

 

原作者のカツセマサヒコさんは、Twitterのフォロワー14万人を抱える人気インフルエンサーの1人です。140字からなる“胸キュン妄想ツイート”で注目を集め「タイムラインの王子様」という愛称で呼ばれるようになりました。

 

現在は、WEBライター兼小説家として活躍しているカツセマサヒコさんですが、大学卒業後は新卒で入社した大手印刷会社の総務部で働いていたそうです。

 

27歳の時に、個人で書いていたブログが大反響を呼んだことがきっかけとなり、編集プロダクションに転職、WEBライターになりました。

 

映画をすでに見た方はピンときたかと思いますが、『明け方の若者たち』の登場人物である“僕”や古賀尚人には、カツセマサヒコさん自身の経験が反映されているのです。

 

現在は独立しフリーランスとなったカツセマサヒコさん。川谷絵音さん率いるバンド「indigo la End」とのコラボ小説『夜行秘密』を出版するなど、小説家として活躍する傍ら、ファッション雑誌にてエッセイの連載、ラジオパーソナリティとしても活躍するなど、マルチな才能を発揮しています。

 

今後もさらなる活躍に期待してしまいますね!

 

映画『明け方の若者たち』あらすじ紹介(ネタバレなし)

 

「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」

その16文字から始まった、沼のような5年間-。


東京・明大前で開かれた学生最後の退屈な飲み会。

そこで出会った<彼女>に、一瞬で恋をした。


下北沢のスズナリで観た舞台、高円寺で一人暮らしを始めた日、

フジロックに対抗するために旅をした7月の終わり・・・。


世界が<彼女>で満たされる一方で、社会人になった<僕>は、

〝こんなハズじゃなかった人生″に打ちのめされていく。


息の詰まる会社、夢見た未来とは異なる現実。

夜明けまで飲み明かした時間と親友と彼女だけが、救いだったあの頃。


でも僕は最初からわかっていた。

いつか、この時間に終わりがくることを・・・。

 

「勝ち組飲み会」と称される退屈な飲み会に参加していた大学四年生の“僕”が、偶然その場に参加していた“彼女”に恋をすることから物語が始まる『明け方の若者たち』。

 

大学を卒業し印刷会社に就職した“僕”は、思い描いていた未来と現実とのギャップに「こんなハズじゃなかった」と苦悩しながらも、“彼女”や同僚と夜明けまで飲み明かすなど少し遅めの青春を謳歌していました。しかし、ある日を境に突然、“彼女”が姿を消してしまい……、という内容になっています。

 

あらすじだけを見ると、本作は東京で生きる若者たちの刹那的な恋愛を描いたラブストーリーなのかと感じるかもしれません。

 

しかし、本作の物語の主軸は「何者にもなれずに大人になっていくことへの葛藤を描いた青春譚」であり、恋愛は1つの要素にすぎないので、恋愛映画が苦手という方でも楽しめる映画となっています。

 

特に、新社会人をはじめとした20代の若者には、“僕”が感じる仕事へのモヤモヤや「このままで本当にいいのだろうか」という将来への不安など、共感できる部分ばかりだと思うので、ぜひ見ていただきたい作品です!
 

 

映画『明け方の若者たち』登場人物・キャスト紹介

映画『明け方の若者たち』の主な登場人物を、演じるキャストとあわせてご紹介していきます!

 

僕(演:北村匠海)

 

大学4年生の時に参加した飲み会で出会った“彼女”に恋した本作の主人公。卒業後は大手印刷会社に就職します。総務部に配属され、仕事にやりがいを感じられずに「このままでいいのだろうか」という不安や焦りを抱きつつも、“彼女”や同僚の尚人と共に少し遅めの青春を謳歌していましたが……。

【北村巧海(きたむら たくみ)】

主人公“僕”役を演じるのは、ダンスロックバンド「DISH//」のボーカル&ギターとしても知られる俳優、北村巧さんです。
 

2007年、9歳の時にCM『HONDA 低床・低重心ミニバン-低床の世界篇-』でデビュー。その後は映画やドラマに、池松壮亮さんや岡田将生さん、小栗旬さんなどが演じる役の幼少期役として出演していました。


2017年には、浜辺美波さんと共に主演を務めた映画『君の膵臓を食べたい』で、日本アカデミー賞新人俳優賞をはじめ数々の新人賞を受賞しています。

彼女(演:黒島結菜)

“僕”が飲み会で出会って恋に落ちる本作のヒロイン。大学院生で、“僕”よりも年上。無邪気で愛嬌がある一方で、ふとした瞬間に憂いを含んだ表情を覗かせるミステリアスな女性です。“僕”や尚人と親交を深めていきますが、ある日を境に姿を消してしまいます。

【黒島結菜(くろしま ゆいな)】

“僕”が一目惚れしてしまう本作のヒロイン“彼女”役を演じるのは、2022年度前期NHK連続テレビ小説(朝ドラ)『ちむどんどん』で、主人公の比嘉暢子(ひが のぶこ)役を演じたことで人気沸騰中の女優、黒島結菜さんです。


沖縄県出身の黒島さんは、中学3年生の時に応募した「ウィルコム沖縄 イメージガールコンテスト」で特別賞の「沖縄美少女図鑑賞」を受賞。ソニー・ミュージックアーティスツの目に留まり、芸能界入りを果たします。
 

その後は

・NTTドコモのCM「docomo LTE Xi 想いをつなぐネットワーク篇」

・クラレ「ミラバケッソ」

・カルピス「カルピスウォーター」

など、さまざまなジャンルのCMに出演し活躍。


2019には、映画『カツベン!』でヒロインの栗原梅子役を演じ、日本アカデミー賞新人俳優賞を受賞しています。

古賀尚人(演:井上祐貴)

“僕”が入社した大手印刷会社の同期。明るく前向きで、誰からでも好かれそうな性格。“僕”や“彼女”ともすぐに打ち解けています。企画部を希望していたが、営業部に配属されてしまったことに不満を持ちつつも、日々の業務に真面目に取り組む好青年です。

【井上祐貴(いのうえ ゆうき)】

主人公“僕”の同僚であり、良き友人でもある尚人役を演じるのは、特撮ドラマ『ウルトラマンタイガ』で主人公の工藤 ヒロユキ役を演じた俳優、井上祐貴さんです。
 

2017年に、第42回ホリプロタレントスカウトキャラバンで審査員特別賞を受賞。翌年2018年に、ミュージカル『ピーターパン』で海賊マリンズ役として俳優デビューを果たしました。


2022年5月18日から6月5日まで上演され、話題となった舞台『奇跡の人』にも出演するなど、今後の活躍がますます期待される若手俳優の1人です。

 

 

映画『明け方の若者たち』はなぜR指定(R15+)なのか?

 

映画『明け方の若者たち』のレイティングは、R15+に指定されています。つまり、15歳未満の方の入場・鑑賞が禁止されているということ。

なぜ本作には年齢制限が設けられているのか、その理由を解説していきます!

 

カップルで見ると気まずい?刺激的なラブシーン!

本作にはいくつかの刺激的なラブシーンがあり、それが年齢制限の理由なのではないかと考えられます。

特に過激なのが、“僕”と“彼女”のベッドシーン。行為中はバスローブを着たままなのでヌードが映るわけではありませんが、2人が体を激しく重ね合わせるシーンが丁寧に描写されています。

直接的な映像ではないにもかかわらず、互いに求め合い愛し合う2人の息づかいが妙に生々しくて、リビングなど家族がいる場所で見るにはすこし勇気がいるなと感じるほど。

付き合いたてのカップルが一緒に見ると、すこし気まずくなってしまうかもしれませんね!(笑)

グロい?痛々しい指切断シーンに注意!

本作がR15+に指定されている理由としてもう1つ考えられるのは、印刷会社内で起きる指切断事故のシーン

 

“僕”が就職した印刷会社で、作業中の職員が機械に手を巻き込まれて指を切断してしまうという事故が起こります。この時、切り落とされてしまった指がはっきりと画面に映るほか、血が流れる描写があるのです。

 

血が苦手な方や、痛々しい表現、グロい表現が苦手な方は、視聴する際に気を付けたほうがいいかもしれません。

 

映画『明け方の若者たち』配信中!無料で見れる動画配信サービスはここ!

映画『明け方の若者たち』のネタバレあらすじの前に、まだ本作を視聴していない方やもう1度本作を視聴したいかたに向けて、本編を最後まで見られる動画配信サービスをご紹介していきます。

 

映画『明け方の若者たち』を視聴できる動画配信サービスは以下の通りです。

配信サービス

月額料金

配信状況・追加料金

U-NEXT

(ユーネクスト)

2,189円(税込)

配信なし

Amazon

プライムビデオ

600円(税込)

見放題

music.jp

1,958円(税込)

レンタル

440円(税込)

GYAO!ストア

都度課金

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440円(税込)

 

上記の中でも特におすすめの動画配信サービスがAmazonプライムビデオ!

 

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【ネタバレ】映画『明け方の若者たち』のあらすじを結末まで解説

ここからは映画『明け方の若者たち』のネタバレを含むあらすじを、結末まで分かりやすく解説していきます。

 

本編の途中で“彼女”の隠された秘密が明かされることが、本作の面白さの1つでもあるので、まだ映画を視聴していない方はぜひ先に視聴してから、本記事を読みに戻ってきてください!

 

それではいってみましょう!

 

※以下、ネタバレを含む内容となっていますのでご注意ください。

 

【起】映画『明け方の若者たち』ネタバレあらすじ

 

2012年4月。

 

大学4年生の“僕”は、同じ大学の知り合いである石田が企画した、早期内定者の集い「勝ち組飲み会」に参加していました。「ソリューション、イノベーション、インテグレーション……」空っぽな横文字ばかりを口にする、いわゆる意識高い系の学生たちに囲まれ、所在なさげにしていた“僕”。

 

そんな中、物憂げな表情を浮かべる女性が1人、それが“彼女”でした。早々に帰ろうと席を立った“彼女”でしたが、鞄やポケットに手を入れて何かを探している様子。「携帯失くしたみたいだから鳴らしてほしい」と、“彼女”は近くに座っていた“僕”に声を掛けます。

 

結局“彼女”の携帯は、ポケットの中にありました。“僕”にお礼を言って店を去る彼女。飲み会の空気が窮屈になった“僕”は席を外し、店のカウンター席で水を飲んでいました。そんな“僕”のもとに、“彼女”からメッセージが送られてきます。

 

「私と飲んだ方が楽しいかもよ笑?」

 

あざとさを感じつつも思わず舞い上がった“僕”は、2人分の代金を支払い店を後にしました。

 

明大前駅近くの「クジラ公園」で合流した2人は、コンビニで買ったハイボール缶を片手に、互いの就職先やかつて聴いていた音楽の話で盛り上がります。会話する中で、“彼女”は大学院生で、“僕”よりも年上だということが分かりました。

 

終電の時間になり駅に向かって歩く2人。“彼女”に夢中になってしまった“僕”は、「俺といたら、きっと楽しいよ」と“彼女”に伝えます。“彼女”は「ありがとう」とだけ答えました。

 

それから数日後、“彼女”に誘われて“僕”は下北沢に舞台を見に行きます。舞台の内容は、就職後に思い描いていた理想の未来と現実とのギャップに悲観した主人公が自ら命を絶つというものでした。「勝ち組飲み会」の延長線上のストーリーみたいだと言う“彼女”。

 

夜になり、お酒を飲みながら食事をする“僕”と“彼女”。店を出て散歩する2人は、どちらからともなく手を繋いでいました。やがてホテルに入った2人は、キスをしようとして歯が当たってしまい笑い合います。

 

「楽しいね」と言う“彼女”。2人は深いキスを交わし、“僕”は「すげー好き」とまっすぐな気持ちを伝えるのでした。

 

朝になり、“彼女”の携帯からアラームとして設定された音楽が流れます。止めようと手を伸ばした“彼女”を制止した“僕”は「なんて曲?」と訊ねました。「エイリアンズ。キリンジ」と“彼女”は答え、2人は再び抱き合うのでした。

 

それ以降、デートを重ねていく2人。東京スカイツリー、“僕”の誕生日を祝ったカフェ、ゲームセンター、バッティングセンターなど、様々な場所で2人は思い出を作っていきました。

 

神社の境内で花火をしていた時、“彼女”が「なんだっていつかは終わるよ。だから今のうちに楽しもう」と言います。それを聞き悲しげな表情を浮かべた“僕”の手には、消えてしまった花火が握られているのでした。

 

【承】映画『明け方の若者たち』ネタバレあらすじ

 

2013年4月。

 

印刷会社に就職した“僕”は研修に参加していました。研修の内容はグループでプレゼンテーションをするというもの。「企画部に配属されたい」という共通の希望を持っていたことから、“僕”は同じグループだった尚人と仲良くなります。

 

数日後、希望に反し“僕”は総務部、尚人は営業部に配属されていました。“僕”と尚人は頻繁に飲みに行っては「こんなハズじゃなかったよな」と愚痴をこぼしながら、理想の企画について語り合う仲になっていきます。

 

しばらく経ち、“僕”は高円寺に部屋を借りて暮らし始めました。引っ越しを手伝ってくれた“彼女”と尚人と共に、飲みに行きます、夢を語り合う“僕”と尚人、それを楽しそうに聞いている“彼女”。

 

店を出た3人はカラオケ、公園、駅前を巡り明け方まで飲み歩きました。この時間が終わらなければいいと願う3人は、太陽に向かって「登ってくるなー!」と叫び、背を向けて走り出すのでした。

 

2014年夏。

 

いまだに仕事にやる気を持てずにいた“僕”は、職場の先輩が毎年有給休暇を取って「フジロック」に行っていることを知ります。その夜、“僕”は「一緒にフジロックに行かない?」と“彼女”を誘いました。しかし“彼女”は乗り気ではなく、代わりに旅行しようと提案します。

 

後日、レンタカーを借りた“僕”と“彼女”は「西の海」を目指して出発しました。“彼女”が予約した豪華なホテルに到着した2人は、海の見える部屋でシャンパンを飲み、キャンドルが灯った泡のお風呂に入り、幸せな時間を満喫します。

 

「もういっそ死んじゃいたい」と口にする“彼女”を抱きしめる“僕”。激しく愛し合った後、“僕”は涙を流しながら「全部好きだよ」と伝えます。“彼女”は「ありがとう」とだけ答えるのでした。

 

旅行から1週間ほど経った頃、会社で起きたトラブルに対応するため工場に駆り出された“僕”と尚人は、作業員が指を切断してしまう事故に遭遇します。

 

機械に切り落とされた指を間近で見た“僕”は、尚人に「不謹慎だけど興奮した」と打ち明けます。「どれだけ自分が退屈な毎日を過ごしてるのか思い知らされた」と漏らす“僕”を、尚人はバッティングセンターに誘いました。

 

バッティングセンターでバットを振る2人。尚人は「“彼女”から返信はまだないのか?」と“僕”に訊きます。“彼女”とは旅行から帰った日を境に、連絡が取れなくなっていました。

 

続けて尚人は「いくら好きでも、相手が結婚してたらハッピーエンドは望めねぇよ」と言います。それに対して“僕”は「そんなこと、最初から分かってたよ」と返すのでした。

 

【転】映画『明け方の若者たち』ネタバレあらすじ

 

2年以上前、「クジラ公園」で一緒に飲んだ夜に、“彼女”は夫が海外出張中であることを“僕”に話していました。下北沢で舞台を見た後にホテルで結ばれた翌朝、“彼女”にどうして自分だったのかと訊く“僕”。「横顔が夫に似ていたから」と答える“彼女”を抱き寄せた“僕”は、指輪をはめた“彼女”の左手を優しく包み込んだのでした。

 

2014年12月。

 

“僕”は“彼女”と喫茶店にいました。しばらく沈黙が続いた後、突然夫が帰ってきたのだと“彼女”が言いました。「嘘でもいいから言ってほしいんだけどさ、少しは好きでいてくれた?」と、“僕”は声を絞り出します。“彼女”は「ちゃんと好きだった」と答えました。

 

それから数日が経った頃、虚ろな目をして部屋にこもっていた“僕”。シャワーを浴びているとき、2つ並んだ歯ブラシが目に入ったことで感情が爆発します。喚き散らし、壁に何度も頭を打ち付けた“僕”は、やがて気を失ってしまいました。

 

“僕”はベッドで目を覚まします。部屋には尚人がいました。何日も会社に来ない“僕”を心配して来たという尚人。落ち込んでいる“僕”に向かって、尚人は「この機会にめっちゃいい男になろうぜ」と励ますのでした。

 

なんとか職場に復帰した“僕”。尚人は“僕”を元気づけようと夜遊びに誘い出します。“僕”は気乗りしないながらも、成り行きで風俗店に行くことになりました。

 

“僕”の失恋を見抜いた風俗嬢のミカにどんな人だったのかと訊かれた“僕”は、初めての一目惚れだったこと、全てが好きだったこと、でも相手は結婚していたことなどを、ぽつりぽつりとこぼしていきます。

 

「2番でいいから、会ってる時だけは、自分だけを見てほしかった。それだけだった」と泣きながら語る“僕”。ミカは黙って“僕”の頭を撫でるのでした。

 

【結】映画『明け方の若者たち』ネタバレあらすじ

 

2016年12月。

 

“僕”は仕事にも慣れ、総務部の業務をテキパキとこなしていました。そんな“僕”のもとに尚人がやってきます。尚人の手には退職届が握られていました。

 

尚人は知人の社長に声を掛けられ、ベンチャーの編集プロダクションに転職することにしたと言います。不安を隠すように笑顔を浮かべ、「よいお年を」と言って去っていく尚人。

 

その夜、“僕”は転職サイトを眺めて眠りました。

 

2017年3月。

 

大学時代の知り合い石田に呼ばれ、久々に再会した“僕”。石田はいわゆるネズミ講にはまっていました。早々に話を切り上げた“僕”は、電話で尚人を食事に誘います。

 

夜、“僕”と尚人は飲みながら互いの現状を語り合いました。“僕”は社内異動の希望を出したと言います。2人は盛り上がり、明け方まで飲み明かしました。

 

薄明るくなっていく街を歩きながら、新入社員だった頃の話を始める尚人。「時間とお金はいっぺんには手に入らない。でも学生の時より金はあったし、頑張ればオールもできた。だから、こんなはずじゃなかったって、公園で酒飲んでたあの頃こそ、人生のマジックアワーだったんじゃないか」

 

尚人と別れ、かつて“彼女”と共に歩いた道を歩き「クジラ公園」に辿り着いた“僕”。すると、ベンチにはハイボールの空き缶が2つ並んで置かれていました。

 

写真でも取ろうかと携帯を取り出そうとして、僕は携帯を失くしたことに気が付きます。苦笑いの後、ため息を吐いた“僕”は明け方の空を見上げるのでした。

 

【解説】“彼女”の秘密を知ることで納得!鑑賞中に抱いた違和感の正体

 

映画『明け方の若者たち』を見ていていくつかの点に違和感を抱いた筆者。それらはどれも、「“彼女”が結婚していた」という事実が明らかになった後に考えると、自然であると納得できるものでした。

 

筆者が気になったポイントを、解説を交えながらご紹介していこうと思います。

 

違和感①:“僕”が言った「押してもいいの?」

下北沢で舞台を見た後、食事をした“僕”と“彼女”は夜道を並んで歩いていました。「もうちょっと押してくれたらいいかも」と彼女に促され、“僕”は戸惑いつつも「押してもいいの?」と口にします。

 

遊び慣れているわけではなさそうだけど女性に不慣れな感じもしない“僕”が、このような煮え切らない反応をするのはどうしてだろうと気になりました。

 

“彼女”が結婚していることを知っていた“僕”は、“彼女”と関係を持つことが“彼女”にとって迷惑にならないかと考えていたのでしょうね。

 

違和感②:「好き」と言われて「好き」と返さない“彼女”

作中、“彼女”は“僕”に「好き」と言われても「うん」や「ありがとう」などと答えます。決して自分も「好き」だとは言わないのです。愛し合うカップルとしては不自然ですよね?

 

さらに、それに対して普通なら不満を抱いてもおかしくないにもかかわらず、“僕”はそのことを当然のように受け止めています。

 

「不倫だから」と言ってしまえばそれまでですが、どうして“彼女”は“僕”に対して「好き」と言わなかったのでしょうか。

 

“彼女”は“僕”を好きではなかった、というわけではないと思います。「少しは好きでいてくれた?」と“僕”に訊かれた際に答えたように、“彼女”はちゃんと“僕”のことを好きだったのでしょう。

 

しかし、“彼女”の結婚相手はあくまでも海外赴任中の夫。仮に“僕”に対して「好き」と口にしてしまったら、“彼女”は「夫を裏切った自分」を認めざるを得なくなってしまう。“彼女”の中にある尊厳が崩れてしまうのです。

 

つまり、“彼女”が“僕”以上に「好き」だったのは、自分自身だったのでしょう。“僕”にはそれが分かっていたので、不満を抱かなかったのだと思います。

 

違和感③:いつも“僕”の右側に立つ“彼女”

“僕”と“彼女”が並んで歩くとき、必ず“彼女”が“僕”の右側に立っていることが気になっていましたが、彼女が既婚者であると知り納得しました。

 

手を繋いだ時、ふと横を向いた時、何気ない瞬間にも、“僕”は“彼女”の左手を意識することになります。その薬指には結婚指輪がはめられている。そのことによって“僕”と“彼女”は、2人の関係が純粋な恋人関係ではないことを忘れずにいられたのでしょう。

 

やはりこれも、“彼女”が自身の矜持を守ろうとした行為だったのではないかと感じました。

 

【考察】ラストシーンの意味は?携帯電話を失くした“僕”が見上げた明け方の空

 

 

映画『明け方の若者たち』のラストシーンは、「クジラ公園」のベンチに2つ並んで置かれたハイボールの空き缶を目にした“僕”が、写真を撮ろうとして携帯を失くしたことに気が付き、明け方の空を見上げるというものでした。

 

このラストシーンには、いったいどんな意味があったのでしょうか?

 

注目すべきは、携帯を失くしたことに気が付いた後の“僕”の表情です。写真を撮ろうとして上着のポケットに携帯がないことに気が付いた“僕”は、顔をくしゃっと歪めながら苦笑します。この時の“僕”の表情は、泣き出しそうなのを必死に堪えているように見えなくもありません。

 

なぜ“僕”は泣き出しそうになったのか。それは、“携帯電話を失くした”という、“彼女”との出会いのきっかけとも言える出来事から、彼女を本気で愛していた日々の記憶が鮮明に浮かび上がってきたからではないかと思いました。

 

そんな“僕”はため息を吐いた後に明け方の空を見上げます。

 

明け方は「夜が明ける頃」を指す言葉です。「夜=“彼女”や尚人と過ごした夢のような時間」が終わりを迎えたこと、そして、それでも日々は続くという意味がラストシーンには込められていたのではないでしょうか。

 

この結末を残酷であると感じるか、救いがあると感じるかは人それぞれだと思います。筆者には、「終わってしまったとしても幸せな時間があったことは確かで、その思い出を胸にしまいながら日々を生きていけばいい」という応援メッセージのように受け取れました。

 

様々な受け取り方ができるラストシーンを、ぜひ“僕”の表情に注目しながらもう1度見てみてください!

 

 

名言と共に振り返る映画『明け方の若者たち』の見どころ

映画『明け方の若者たち』には、思わずハッとするような名言が随所に散りばめられていました。特に印象的だったセリフを3つピックアップして、ご紹介していきます!

 

名言①:「私と飲んだ方が、楽しいかもよ笑?」

「勝ち組飲み会」を先に抜け出した“彼女”から“僕”に届いたメッセージ。

 

何かドラマチックなことが起こりそうな予感を抱いてしまう誘い文句ですよね。ちょっとあざといけど、こんな可愛い誘われ方をして浮かれない男性はいないのではないでしょうか?笑

 

名言②:「そんなこと、最初から分かってたよ」

“彼女”と連絡が取れなくなって数日、尚人に「いくら好きでも、相手が結婚してたらハッピーエンドは望めねぇよ」と言われた“僕”が返したセリフ。

 

映画ではそこから回想シーンになって、“彼女”が結婚していたこと、それを“僕”が知っていたことがあきらかになりましたよね。

 

このセリフからは、“僕”がどれほど“彼女”のことが好きだったのかが伝わってきます。絶対に報われないと分かっていながら、それでも“彼女”の隣に居ることを選んだ“僕”の覚悟と、それに伴う痛みが垣間見えた瞬間でした。

 

名言③:「こんなハズじゃなかったって、公園で酒飲んでたあの頃こそ、人生のマジックアワーだったんじゃないか」

 

久々に2人で集まり明け方まで飲んだ帰り道で、尚人が“僕”に言ったセリフ。

 

マジックアワーとは、日没後と日の出前に体験できる薄明の時間帯を指す言葉で、最も美しい時間とされるものです。そして数分の間に終わってしまう時間でもあります。

 

描いた通りではないけれどそれなりに楽しかった時代こそが、振り返ってみると最も美しい時間であったのではないかと、尚人は言っているのです。

 

まさに本作の全てが集約されたかのようなこのセリフを聞いて、「自身のマジックアワーはいつだったかな」と想いを馳せた方も多いのではないでしょうか?

 

 

映画を盛り上げる音楽!主題歌・挿入歌を紹介

映画『明け方の若者たち』の作中で流れる数々の挿入歌は、登場人物たちの心情を代弁するような歌詞や、見る者の共感を誘うメロディーが印象的でした。

 

そこでここからは、作中で特に印象的だった挿入歌と主題歌についてご紹介していきます!

 

マカロニえんぴつ/『ハッピーエンドへの期待は』

 

主題歌『ハッピーエンドへの期待は』は、10代や20代の若者から人気を博す4人組ロックバンド・マカロニえんぴつが本作のために書き下ろした曲です。

 

“「残酷だったなぁ 人生は」思っていたより いま君に会って思いきり泣いてみたい”という冒頭の歌詞は、“彼女”への恋が終わったことを悲観する“僕”の姿を連想させます。

 

しかし、後半では“愛してるよ ぜんぶ足りなかった毎日”“どの夜のことを思い出してしまってもね 悲しくはないのだ”と歌われており、これらの歌詞から、“彼女”と過ごした日々を「思い返せばいい思い出だった」と前向きに受け入れている“僕”のその後を垣間見ることができる曲となっています。

 

マカロニえんぴつ/『ヤングアダルト』

 

原作者のカツセマサヒコさんは、映画化が決まる前から「映画化するなら主題歌はマカロニえんぴつの『ヤングアダルト』」と言っていたそうです。

 

夢や恋に破れ、絶望に浸る若者に向けた優しい言葉が並ぶこの曲の歌詞は、本作の主人公“僕”の心情をそのまま歌詞にしたのではないかと錯覚してしまうほど。

 

若者への応援歌というよりは、傷ついた心に寄り添ってくれるような曲だなと感じました。

 

KIRINJI(キリンジ)/『エイリアンズ』

 

“彼女”がアラームに設定していたのは、KIRINJI(キリンジ)の『エイリアンズ』という曲です。]

 

2000年にリリースされたこの曲は、鈴木雅之さんや秦基博さんなど、多くのアーティストにカバーされている名曲で、海外からも高い評価を得ています。

 

分かりそうで分からない支離滅裂な歌詞と、一貫してどこか寂しげなメロディが印象的で、1度聴いたら耳について離れない、不思議な魅力を持った曲です。

 

スピンオフ作品『ある夜、彼女は明け方を想う』はどんなストーリー?

 

映画『明け方の若者たち』のスピンオフ作品として製作された『ある夜、彼女は明け方を想う』をご紹介します。

『ある夜、彼女は明け方を想う』作品概要

配信開始

2022年1月8日

監督

松本花奈

原作者

カツセマサヒコ

キャスト

黒島結菜、若葉竜也

小野花梨、井上祐貴、北村匠海

 

『ある夜、彼女は明け方を想う』では、原作でも映画でも語られることがなかった“彼女”の過去やその後が、“彼女”視点で描かれています

 

物語のキーパーソンとなる“彼女”の夫役には、映画『愛がなんだ』や『あの頃。』などに出演している人気俳優の若葉竜也(わかば りゅうや)さんが抜擢されました。

 

“僕”と過ごしていた間の“彼女”が何を考えていたのかを知ることができるので、映画を見た後にこちらのスピンオフを見ると、“彼女”に対する印象も変わってくるかもしれませんよ。

 

『ある夜、彼女は明け方を想う』は、Amazonプライムビデオで独占配信中です!

 

 

『明け方の若者たち』が好きな人におすすめしたい映画2選

映画『明け方の若者たち』を好きだと感じた方におすすめしたい映画をご紹介します!

 

雰囲気の似た作品なので、「学生から大人になることの苦悩」や「報われない恋愛」が好みな方はきっと気に入るはずです!

 

おすすめ映画①:『花束みたいな恋をした』

 

2021年に公開された映画『花束みたいな恋をした』は、明大前駅で終電を逃した大学生の山音麦と八谷絹が、偶然にも音楽や映画の趣味が似ていたことから恋に落ちることで物語が始まります。

 

「明大前駅で出会う」「学生が大人になっていく過程の苦悩が描かれる」など、『明け方の若者たち』と似ている点が多いです。

 

運命的な出会いから恋に落ちた2人が、徐々に気持ちに変化が現れすれ違っていく様をリアルに描いた本作は、誰かを好きになったことのある人なら必ず共感できる作品となっています。

 

『花束みたいな恋をした』が気になった方は、より詳しく解説したこちらの記事もチェックしてみてください!

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おすすめ映画②:『愛がなんだ』

 

2019年に公開された映画『愛がなんだ』は、愛する男・マモちゃんから都合の良い女として扱われても、挫けずに愛を貫く主人公テルコの恋愛模様を描いた作品です。

 

「どんな関係であっても、マモちゃんとの繋がりを感じていたい」という、テルコの愛は『明け方の若者たち』の“僕”にも通じるものがあるのではないでしょうか。

 

「都合のいい関係」や「不倫」など、周囲からは「やめておいたほうがいいのに……」と言われそうな形の恋愛であっても、それも1つの愛の形なのかもしれませんね。

 

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映画『明け方の若者たち』ネタバレあらすじ解説&考察まとめ

今回は、映画『明け方の若者たち』のあらすじをネタバレありで解説してきました!

 

人気WEBライター兼小説家カツセマサヒコさんの同名小説を原作に製作された本作は、20代の若者たちが青春を謳歌するなかで味わう喜びと苦しみを如実に描き出した映画となっています。

 

作中にちりばめられた固有名詞や時代を代表する音楽に共感を誘われ、気が付いたら自身の青春時代を重ねて見てしまっていることでしょう!

 

いつの間にか忙しさに悩殺されるようになった日々。たまには明け方まで映画を見て過ごす夜があっても、悪くないかもしれませんね!

 

※本ページの情報は2023年1月時点のものです。最新の配信状況は各動画配信サービスサイトにてご確認ください。

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執筆

おさとう

純文学・詩・エッセイなどを好み、深夜に散歩することを日々のささやかな楽しみとする20代。スマホのロック画面は『ナイト・オン・ザ・プラネット』のウィノナ・ライダー。読者の皆さんが新たな気付きを得られる記事を目指して書きます。

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