パーフェクトブルーは、今敏監督が1998年に製作したサイコホラー映画です。公開当時から国内のみならず海外でも高い人気を誇っており、数多くの賞を受賞しました。今敏監督の実力を世界に示した記念すべき作品となっています。
今回は、そんなパーフェクトブルーの基本的な情報や登場キャラクター、ストーリーの謎などに迫っていきます。ネタバレを含みますが、パーフェクトブルーの内容が知りたいという方は目を通してみてください。
更新日:2021-9-3
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パーフェクトブルーは、今敏監督が1998年に製作したサイコホラー映画です。公開当時から国内のみならず海外でも高い人気を誇っており、数多くの賞を受賞しました。今敏監督の実力を世界に示した記念すべき作品となっています。
今回は、そんなパーフェクトブルーの基本的な情報や登場キャラクター、ストーリーの謎などに迫っていきます。ネタバレを含みますが、パーフェクトブルーの内容が知りたいという方は目を通してみてください。
後に「パプリカ」「東京ゴッドファーザーズ」などの名作を送り出した今敏監督が最初に手掛けた作品です。ここでは、「パーフェクトブルー」というタイトルに込められた意味や今敏監督について紹介します。
パーフェクトブルーは、「パーフェクト・ブルー完全変態」という竹内義和さんが手掛けた小説が原作です。今敏監督によれば、タイトルは原作からそのまま取ったとフランスで行われたインタビューで語っています。
原作が基になっている作品とは言え、映画の内容は原作とは大きくかけ離れていたこともあり、タイトルの変更を検討した時もあったようです。しかし、今敏監督は「パーフェクトブルー」というタイトルがどこかミステリアスな意味深さが気に入っていたため、このまま使用されることになりました。
作品の監督を務めた今敏さんは、パーフェクトブルーをはじめ、筒井康隆氏原作の「パプリカ」やオリジナル作品「千年女優」などで知られ、多くのファンに愛される人物です。
パーフェクトブルーは監督として初めて手掛けていますが、それ以前の1993年には「ジョジョの奇妙な冒険」で作画や演出などを担当していました。原作の映画化が多い今敏監督ですが、いずれも原作とは内容が大きく変更されているのが特徴です。
原作ファンからすれば、映画でも原作を忠実に再現して欲しいと考えるでしょう。しかし、パプリカの原作を書いた筒井康隆氏は、今敏監督によるアニメ化を熱望していたことがわかっています。
筒井康隆氏だけでなく、多くの表現者からも愛されており、今敏監督が手掛けた作品は多くのファンを魅了しました。2010年に亡くなりましたが、作品の独自性が多くの方に支持され、今もなお人気を誇っているアニメ監督です。
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では、パーフェクトブルーのあらすじを簡単にご紹介しましょう。
パーフェクトブルーは、1998年の日本が舞台となっており、3人組アイドル「チャム」のセンターとして活躍する霧越未麻が主人公です。霧越未麻は、アイドルから女優の道への転身を図ります。
しかし、女優への転身は本人の意思ではなく、利益を優先した事務所の決断だったのです。
霧越未麻のマネージャーは、彼女にアイドルとして活躍することを望んでいたため憤りを覚え、ファンもまた嘆いていました。
その後、女優の道を歩み出した霧越未麻は、マネージャーの反対を押し切ってレイプシーンやヌードを含むグラビアなどの仕事を引き受けるようになります。売れ行きは好調で、一見すると順調見えた霧越未麻でしたが、その頃から彼女の周りで不可解な事件や出来事が起こり始めます。
霧越未麻本人になりすましたブログ・執拗なストーカー・変死事件など、不可解な出来事は多岐に渡りました。アイドルだった自分の幻覚まで見るようになった彼女は、徐々に精神的に追い詰められてしまいます。何が「現実」でどこまでが「虚構」なのか。自分の立っている世界があやふやに崩れていく恐怖。そこがパーフェクトブルーの見どころと言えるでしょう。
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霧越未麻以外にも、パーフェクトブルーには様々なキャラクターが登場します。ここでは、中でも特に重要な人物である日高ルミ・田所・内田守について紹介します。
パーフェクトブルーの主人公です。3人組アイドルグループのセンターとして活躍してきた大人気アイドルの1人でした。女優の転身を図ることになりましたが、自分の周りで不可解な事件や出来事が起こり、「本当に女優を目指していたのか」と自問自答する日々を送るようになります。
霧越未麻の声優はエヴァンゲリオンシリーズの洞木ヒカリ役でお馴染みの岩男潤子が担当しました。
日高ルミは、霧越未麻のマネージャーであり、元アイドルとして活躍していました。
霧越未麻がアイドルとして活躍することを望んでいますが、彼女に寄り添い献身的にサポートします。女優への転身には大反対でした。
声優は「ポケットモンスター」のサトシ役でお馴染みの松本梨香が務めています。
田所は霧越未麻が所属する事務所の社長です。事務所の利益を優先に考える人物であり、霧越未麻に女優へ転身するよう促した張本人でもあります。
声優はハリー・ポッターシリーズのシリウス・ブラックの吹き替えなどで有名な辻親八で、中年男性を忠実に表現しています。
内田守は、女優に転身した霧越未麻に対し執拗なストーカーをする人物です。内田守の部屋は霧越未麻の写真だらけで、盗霧越未麻がいる現場に度々現れたり盗撮したりと、異常に執着しています。
声優は大倉正章が担当しました。
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パーフェクトブルーは、内容がエロい・グロいと感じる人が多いようです。多くの方からそう言われるのには、以下のような理由があります。
霧越未麻は、作中の中で女優としてのキャリアを積むためにレイプシーンの撮影に承諾します。マネージャーであるルミの反対を押し切って撮影に臨みますが、服を無理やり脱がされたり、レイプされたりするシーンがあるため、この作品についてエロい、グロいと感じる方が多いのは当然と言えるでしょう。
また、演技とはわかっていても、レイプされそうになるシーンは辛く悲しい気持ちになる人もいるかもしれません。また、レイプシーン以外にも、ヌード写真撮影に臨んでおり、そういったシーンがあることから、本作品に対してエロいと感じる人がいるのではないでしょうか。
パーフェクトブルーでは、殺人事件が起こります。作品を見た人からは、そんな殺人シーンがグロい・怖いといった感想が聞かれます。
霧越未麻が女優に転身して以降、不可解な事件が次々と起こりました。ひき逃げによってファンが亡くなったり、作中に登場する脚本家の変死事件が起こったりと、思わず顔を背けたくなるようなシーンも登場します。
特に、刃物で何度も刺されたことで無残な姿になった人や、目を刃物でくり抜かれて悲惨な死を遂げた人などは、グロいと感じる要因になっています。
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パーフェクトブルーは、「現実と虚構の交錯」がテーマとなっています。そのテーマ通り、霧越未麻は女優へ転身してからというもの、現実と虚構の区別ができなくなっていきます。
アイドルを辞め、女優としてのキャリアを積むために、霧越未麻はヌードやレイプシーンなどの過激な内容の仕事でも承諾します。しかしその全てが、彼女が自ら希望した仕事ではありませんでした。過激な仕事ばかりやっているうちに、霧越未麻は「本当にやりたかったことなのか」と自問自答するようになります。
そんな最中で、執拗なストーカー被害やアイドル仲間の活躍などが追い打ちをかけ、精神が蝕まれていくのです。
また、今敏監督は「虚構と現実」というテーマを一貫しています。夢が侵略してくる「パプリカ」。女優の一生を追った「千年女優」など、虚構と現実が交差する恐怖や面白さを描いています。
「ダブルバインド」は、パーフェクトブルーの作中で撮影されたサスペンスドラマで、霧越未麻がレイプシーンを演じた作品です。精神科医が刑事のアシスタントとして事件解決に取り組む内容となっています。ダブルバインドで、霧越未麻はレイプをきっかけに別人のようになってしまう女性を演じました。
この「ダブルバインド」には、心理学の用語で「二重拘束」といった意味があり、人に矛盾する支持・命令などで混乱させたり、強いストレスを与えたりすることを指します。ダブルバインドが発生すると、自分の考えが定まらなくなり、幻覚・幻聴などで現実と虚構の交錯が起きます。
つまり、霧越未麻は自身が演じたダブルバインドを現実で体感しているのです。現実では、アイドルだった過去の未麻と女優としての未麻に求められていたことがダブルバインドとなったことで、彼女は精神的に追い詰められていくことになります。
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パーフェクトブルーには、様々な謎が存在します。執拗なストーカーを続ける存在や、霧越未麻の周りで起こる変死事件などの謎を考察していきましょう。
作中では、霧越未麻に迫る過激なストーカーとして、「Mi-Mania」が登場します。パーフェクトブルーでは、「Mi-Mania」がいったい誰なのかが1つの謎となっています。
Mi-Maniaは部屋に霧越未麻へ異常なまでの執着を持ち、作中でも不気味な雰囲気が漂い、怖さも感じさせられるでしょう。Mi-Maniaは、内田守という人物でした。
内田守は、ダブルバインド撮影後、霧越未麻の偽物を殺すと発言したり、暴行しようとしたりと執拗に彼女を付け回します。
そもそも、なぜ霧越未麻の関係者が次々に死んでしまったのでしょうか?後述しますが、それは真犯人の目的が関係しています。
霧越未麻は、自らの意思で女優になろうと行動したわけではありませんでした。アイドルとして活躍していた彼女は、これまでの自分に不満も感じていなかったのでしょう。
所属事務所からアイドルを辞めて女優になるよう勧められたことで、霧越未麻は女優へ転身します。しかし、女優になってからというもの、アイドルだった当時には考えられないような過激な仕事ばかりが入ってきます。
そんな彼女の立場を考え、関係者を良く思わない人物が殺害に及んだのです。
ストーカーであるMi-Maniaは、内田守という不気味な人物でしたが、彼はダブルバインド撮影終了後、霧越未麻に襲い掛かろうとします。暴行しようと掴みかかる内田守は、彼女に対し「もうすぐお前もだ」と発言しました。
内田守が言い放ったこの発言は、あたかも「もうすぐお前も死ぬ」と言っているように聞こえます。襲われそうになった霧越未麻は、ギリギリの所で逃げることに成功します。
しかし、内田守の発言が彼女を追い詰めていたことに変わりはないでしょう。そしてまた、何が現実で何が夢なのか区別ができなくなっていた霧越未麻は、内田守に傷付けられた時に「これは現実だ」と痛感します。
パーフェクトブルーの犯人は誰なのか、それはこの作品の大きな謎と言えます。多くの人は、ストーカーである内田守が全て仕掛けたことではないかと考えたかもしれません。
しかし、パーフェクトブルーの真犯人は、霧越未麻のマネージャーである日高ルミです。なぜマネージャーとして献身的だった彼女が犯行に及んだのでしょうか?
ルミは、霧越未麻が女優の仕事をすることに反対していました。その反対も、霧越未麻を思っての行動のように感じられます。
霧越未麻もまたルミを信頼しており、まさか最も身近な存在が真犯人だとは思いもよらないはずです。
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真犯人だった日高ルミは、いったい何者なのでしょうか?ルミの本当の正体に迫ります。
日高ルミは元アイドルでしたが、3人組アイドル・チャムのように売れないアイドルで悩んでいました。そんなルミの背景から、いつしか自分と霧越未麻を重ねて見るようになっていったのです。
しかし、霧越未麻を自分の姿と重ねて見ていくうちに、もっとアイドルとして成功していって欲しいと思うのではなく、自分がアイドルだと思い込んでいったように感じられます。ドラマ撮影後、内田守からどうにか逃げた霧越未麻は、ルミに会い家まで送ってもらいます。
しかし、ルミに送り届けてもらった場所は自分の家ではありませんでした。というのも、外から見える景色や部屋の家具やインテリアの配置も、自分の部屋とはどこか異なる部分があったのです。
戸惑いを隠せない霧越未麻に、ルミが襲い掛かります。これまで、霧越未麻に優しく接していたルミが、なぜ彼女を襲ったのでしょうか?
このシーンでは、ルミは霧越未麻がアイドルだった当時の姿で現れました。そして襲う直前、「私が本物の未麻」だと発言しています。
ルミは、人気アイドルだった彼女を思ううちに、自分こそが本当のアイドルなんだと思い込んでいったのです。
女優に転身して以降、霧越未麻は誰かが自分を装ってブログを開設し、書き込みしていることに気が付きます。プライベートな内容を細かく書き込みしており、その記事を見て背筋が凍る思いでいました。
このブログは「未麻の部屋」というサイト名でしたが、このサイトを開設したのは真犯人であるルミなのでしょうか?作中で、ルミは自分が未麻だと言い放っていました。
その発言から察すると、「未麻の部屋」を開設してブログを書き続けていくうちに、「自分がアイドル」だという妄想を膨らませていったように考えられます。ルミがブログを書いていたと仮定すれば、「本当の未麻は自分」と発言したことも納得がいきます。
作品の終盤、逃げ出した霧越未麻をルミが外まで追いかけていくシーンがあります。街中でもみ合うシーンから、ルミの執念深さをうかがい知ることができます。
そんなルミの執念はどこからくるものなのでしょうか?ルミは、アイドルだった未麻のサポートをするうちに、自分を重ねていき、あたかも自分がアイドルとして賢明に努力しているように感じていました。
そして、人気アイドルから突然女優へ転身させ、アイドルとはかけ離れた過激な仕事をさせた関係者をルミは憎んでいたのでしょう。霧越未麻はもうアイドルではない、ならば自分が本当の未麻として生きていこう、と考えたのでしょうか?
いずれにしても、ルミが霧越未麻を襲った時点で、自分が本当の未麻だと発言しています。だからこそ、偽物である霧越未麻を消そうと考えたのです。
ルミにとっては、女優になる後押しをした関係者や、霧越未麻の偽物は消し去ろうといった執念がったのです。
ルミとの長い攻防の末、トラックに跳ねられた2人は病院に搬送されますが、霧越未麻が先に退院します。しかし、ルミは精神を病み、精神病院の入院を余儀なくされます。
霧越未麻は、女優としての道を歩み続け、着実にキャリアを築いていきました。女優として成長した彼女は、今の自分があるのはルミのおかげでもあると病院へお見舞いに訪れます。
去り際のラストシーンでは、霧越未麻は「私が本物よ」と発言しています。この発言は、何を意味しているのでしょうか?
霧越未麻は女優に転身して以降、現実なのか夢なのか判断できなくなる程、精神を追い詰められていきました。しかし、ラストシーンでは、女優として成功を遂げ、自信を持って生きている彼女の姿がありました。
これまでの苦悩から、一時は本来自分があるべき姿がわからない状態に陥っていた彼女は、自信を取り戻したことでこのような発言をしたと考えられます。
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ここからはアニメ「パーフェクトブルー」の関連シリーズについて紹介していきます。
アニメ「パーフェクトブルー」は竹内義和さんの小説が原作で、監督は今敏さんが手掛けています。同じ「パーフェクトブルー」というタイトルで宮部みゆきさんの小説がありますが、宮部みゆきさんの作品は、正式には「パーフェクト・ブルー」です。
同じ名前でもストーリーが全く別のものであり、ドラマ「パーフェクト・ブルー」も宮部みゆきさんの作品が元になっていて、どちらもアニメ「パーフェクトブルー」との関連はありません。
「パプリカ」は、小説家である筒井康隆さん原作、監督は今敏さんが手掛けています。「パーフェクトブル」とは違う原作者ですが、同じ監督であるため関連しているのでは?と思うかもしれません。
実際に「パーフェクトブルー」と「パプリカ」は、どちらも夢と現実が交差している内容です。「パーフェクトブルー」では、主人公の未麻がアイドルグループを脱退して女優を目指すが、自分自身の葛藤や嫌がらせなどからパニックに陥ってしまいます。
その中で、どれが現実か夢か、また演技なのかわからなくなり、最後に「私が本物よ」という言葉を発しています。
一方の「パプリカ」は、DCミニを使ったサイコセラピーで、夢の中で活動する「パプリカ」を使いながらDCミニを悪用した犯人を追っていくものです。ストーリーに関連性はないものの、どちらの現実と偽物の世界が交錯している内容であり、人間の深層心理に追求している部分は似ていると感じるでしょう。
今回は、今敏さんが監督を務めた映画「パーフェクトブルー」について考察してきました。現実と虚構をテーマになっていることから、主人公である霧越未麻が女優への転身をきっかけに精神的に追い詰められていく様子が描かれています。
ストーリーの奥深さや霧越未麻の葛藤は、この作品の大きな魅力です。原作を読んだことがある人でも、映画版のパーフェクトブルーは原作と印象が異なるので、今敏監督が手掛けた作品の世界観も感じてみてはいかがでしょうか?
映画だからこそ感じられる現実・妄想・夢の境界線がなくなっていく様子は、見る人にとってもハラハラドキドキさせてくれます。
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