映画『メメント』の作品概要
『メメント』はアメリカでは2000年、日本では2001年に公開された映画です。
監督は、のちに『バットマン』シリーズでも監督を務めるクリストファー・ローラン。
原作は監督の弟であるジョナサン・ローランです。
『メメント』作品概要
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公開年
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アメリカ:2000年
日本:2001年
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監督・脚本
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クリストファー・ローラン
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原作
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ジョナサン・ノーラン
『Memento Mori(英語版)』
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出演
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ガイ・ピアース
キャリー=アン・モス
ジョー・パントリアーノ
ジョージャ・フォックス
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公開時はたった11館での上映でしたが、その後映画を見た人の口コミが広まり、のちに500館以上で上映されました。
さかくら
何回も見たくなる映画です!
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『メメント』のあらすじ
さかくら
ここからはネタバレを含みますので、気を付けてください!
主人公は妻を殺された男、レナード。
レナードは妻を殺された時に自身も頭を殴られ、その怪我がもとでごく短時間しか記憶を保てなくなってしまいました。
「いつも目覚めたばかり」であるように感じているレナードは、妻を殺した犯人を探したいと思っています。
そのために、レナードは会った人の写真を撮ったり、大量のメモを残したり、もっとも重要なことはタトゥーとして自分の体に残したり、記憶がなくても大事なことを忘れないように工夫して生活しています。
以前に会った人や、考えたことを忘れてしまうレナードには、メモだけが頼りです。
「妻を殺した犯人は誰なのか?協力者を信じてもいいのか?」
自分の筆跡のメモとタトゥーを頼りに、レナードは犯人をひたすらに追います。
さかくら
その結末には本当に驚きました!まずは、自分の目で『メメント』を見てくださいね!
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『メメント』の時系列を整理
『メメント』のざっくりとしたあらすじは先ほど書きましたが、それをややこしくしているのは、場面転換によってぐちゃぐちゃに入れ替わる時間軸です。
『メメント』にはふたつの時間軸が存在しています。
時間がさかのぼる「カラーの時間」と、過去から現在へと流れる「モノクロの時間」です。
簡単にではありますが、『メメント』の作中での時間の流れを整理してみました。
実際の時間は、図の左から右に流れています。
ですが映画の中では、それぞれのシーンがこまぎれになっていて、頻繁に場面転換が行われるのです。
現在と過去を行き来し、図の中の数字の順番につぎはぎされた形で、私たちは映画を見ることになります。
つまり、まずは現在①のシーンが流れる。その次のシーンは、過去の1番古い時間②です。
その後シーンは切り替わって、先ほどの①の直前のシーン(③)。また切り替わって、今度は過去②の直後のシーン(④)になる。といった具合です。
さかくら
え?頭がこんがらがってきた……
完全に理解しようとしなくても大丈夫です。とにかく、とてもややこしいことになっている、と思っておいてください。
映画を見て、「つまりどういうこと?」「結局何が起こったの?」と混乱した人も多いと思いますので、ここで一旦、時系列に沿ってストーリーをまとめてみます。
『メメント』の6つの謎の項につながるところには、わかりやすいように謎①~謎⑤のチェックを入れましたので、少し気を付けておいてください。
レナードが前向健忘症になる以前
まずは主人公のレナードが前向健忘症になる前です。
レナードは家に侵入してきた暴漢によって頭を殴られたせいで、前項健忘症になりました。
つまりそれ以前は、レナードの記憶力には何の問題もなかったのです。
このシーンはレナードの記憶、回想シーンとして語られています。
過去の時間軸でレナードが語っている内容ですので、シーンはすべてモノクロです。
レナードが前項健忘症になる前
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●レナードは保険の調査員をしている
↓
●仕事で、記憶を保てなくなったサミーの調査を行う
↓
●サミーは保険の対象外だと判断する
↓
●サミーの妻が死亡する→謎②
↓
●サミーはひとりで施設に入所する
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注意すべきなのは、これらのシーンはすべてがレナードの回想だということです。
つまり、この時代のことで、客観的な証拠があることはひとつもありません。
モノクロの時間軸
次はモノクロの時間軸です。
この時間軸は、作中でジミーが殺される以前の出来事になります。
モノクロの時間
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●モーテルの部屋で目覚める
↓
●誰かから電話がかかってきて、サミーの話をする→謎①
↓
●電話を切って『麻薬に関係』のメモを見つける
↓
●また電話がかかってきて、事件の話をする
↓
●『絶対電話に出るな』というタトゥーを見つける→謎①
↓
●「誰だ?」と相手を問いつめると、電話を切られる
↓
●フロントに電話をつながないよう依頼
↓
●フロント係が部屋に来て、「警察から電話がかかってきた」と言われるが、断る
↓
●「電話に出ろ」と書かれた封筒がドアの下から入れられる。封筒の中にはレナードの笑顔の写真→謎①
↓
●刑事から電話がかかってきてサミーの話をする
↓
●電話の相手にモーテルに来ていると告げられる、フロントでテディに会う→謎①
↓
●テディに教えてもらった廃屋に向かいジミーに会う
↓
●ジミーを殺害し、写真を撮る。写真が段々カラーになっていく
|
モノクロの時間軸のできごとをまとめると、このようになります。
主にレナードが誰かと電話で話していますが、重要な情報がたくさんありますので、そこに注目してくださいね。
カラーの時間軸
ジミーが殺された後の出来事は、作中ではカラーになります。
カラーの時間軸の出来事は、逆再生のようにつぎはぎされているのでわかりにくく、一度ではとても理解できません。
そこで、時間の流れに合わせてできごとをまとめました。
もし自分でも時間の流れに合わせて見たいなら、動画配信サービスなどでラストシーンまで飛んでから、カラーのシーンだけを巻き戻しながら見てください。
モノクロの時間
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●モノクロだったジミーの写真が段々カラーになっていく
↓
●テディが廃屋に来る
↓
●テディがレナードに、すでにインスリンで妻を死なせたのはレナードであること、妻を襲った犯人をすでに殺していることを告げる→謎②
↓
●テディの写真に「こいつの嘘を信じるな」とメモ→謎④
↓
●ジミーの車の写真に「自分の車」とメモ→謎④
↓
●ナタリーのバーに行く
↓
●ナタリーの部屋に行って、事件の話をする
↓
●ナタリーにドットを殺すよう言われ、詰られてナタリーを殴る→謎③
↓
●ナタリーは、レナードに殴られた傷をドットに殴られたと説明する→謎③
↓
●レナードはドットに話をつけると言う
↓
●テディが車にいて話をする
↓
●モーテルにチェックインして、部屋に女性を呼ぶ
↓
●女性に妻のものを部屋の中に置くように頼む
↓
●妻のものを燃やす→謎④
↓
●ドッドに追いかけられ、殴って拘束する
↓
●テディを呼び、ドッドを街から追い出す
↓
●ナタリーにテディの車のナンバーを調べてもらう
↓
●集めた情報とタトゥーからテディを犯人だと確信
↓
●ナタリーに教えられて、ジミーを殺した廃屋に向かう→謎③
↓
●テディを殺し、写真を撮る
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カラーの時間軸ではさまざまなことが起きます。
主な登場人物は、レナード、テディ、ナタリーです。
3人の行動に注目しましょう。
さかくら
それぞれの疑問点を見ていくことで、真相が見えてきそうですね!
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『メメント』の気になるポイント
『メメント』の謎を解いていく前に、押さえておきたい3つのポイントがあります。
3つのポイントは、謎を解く上で特に重要になりますので、覚えておいてください。
レナードの前向性健忘について
レナードは強盗が押し入った時に頭を殴られ、それ以降新しいことが覚えられない前向性健忘になっています。
記憶に関する神経機構の障害が発現した時点が明らかな場合、障害時点以降の情報の記憶障害を前向性健忘という。
脳科学辞典より引用
どんなことでも数分も経てば、レナードは忘れてしまいます。
怪しい人物に追われている時でも自分がなぜ走っているのかを忘れてしまいますし、一夜を共にした相手のことも目を覚ませば覚えていません。
作中で、モーテルの受付であるバートは、レナードに尋ねます。
「それってどんな感じ?」
「目覚めるようだ。いつも目覚めたばかり」
「まいるだろう。全部逆さまだもんな」
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レナードはすべてを忘れるし、全部逆さまなのです。
レナードは『信頼できない語り手』である
皆さんは、『信頼できない語り手』という言葉を聞いたことがありますか?
『信頼できない語り手』とはミステリーやサスペンスなどで用いられる手法のひとつです。
語り手(主人公など)が自分にとって都合の悪い事実をあえて伏せることにより、読者や視聴者をミスリードするといった方法のことを言います。
この方法のポイントは、語り手は嘘をつかないということです。
嘘をつかず、重要な情報を黙っているだけなので、見ている側は矛盾点などに気付きにくく、すっかり騙されてしまいます。
そもそも視聴者は語り手のことを信じ切っていますので、少しおかしいな?と思うくらいでは「自分の勘違いだろう」と勝手に思い込むというわけです。
この手法を使った有名な作品には、アガサ・クリスティーの小説名探偵ポアロシリーズの「アクロイド殺し」があります。
主人公である犯人は、自分にとって不利になる情報を語ることをあえて避け、その結果重要な情報が読者や視聴者には提供されません。
レナードは前向性健忘ゆえに、大事なこともすべて忘れてしまいます。
そのせいで、私たち視聴者には時に重要な情報が提供されないのです。
作中の以前の時間のできごと
『メメント』はレナードがモーテルの部屋で目覚めたところから始まります。
ですが、それ以前のできごとがとても重要であることが、映画を最後まで見るとわかるでしょう。
作中で描かれているレナードがモーテルで目覚めるシーン以前には何があったのか、わかる範囲でまとめてみます。
『メメント』以前のできごと
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●レナードの家に暴漢が侵入し、レナードと妻が襲われる
●レナードは妻を殺した犯人を探し始める
●犯人についてわかった情報をタトゥーにした(事実④まで)
●作中の舞台である街にたどり着き、テディという協力者を得る
●事実⑤「麻薬に関係」というタトゥーを入れようとしていた
●電話で何か良くないことがあった→謎①
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ここまでは、おそらく確かだと考えられます。
レナードが実際に前向健忘症になっていること、タトゥーが残っていることなど、物的証拠がしっかりあるので、事実として良さそうです。
これは逆に考えると、それ以外は証拠がないとも言えますよね。
そのことをしっかり覚えておいたほうが良いでしょう。
さかくら
証拠がない=真実とは限らないということだよね!
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『メメント』の5つの謎
『メメント』は、1回見ただけで理解するのはかなり難しい映画です。
ほとんどの人は1回見た後たくさんの疑問を持つのではないでしょうか。
見終わった後はわからないことが多すぎて混乱してしまうと思いますので、一つひとつ整理していきましょう!
謎①電話について
モノクロの時間軸のほとんどで、レナードは電話をしています。
ですがレナードは電話中、相手の名前を呼ぶことはありません。
電話について重要な情報をまとめてみました。
「電話」について
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●電話の内容は「サミー」「妻が襲われた事件」「麻薬取引」
●「電話に出るな」というタトゥー(まだ掘ったばかり)
●電話に出ないと『電話に出ろ』と書いた封筒がドアの下から入れられる。その封筒の中にはレナードの笑顔の写真が入っていた。
●電話相手に「今フロントにいる」と言われ、フロントに向かうとテディに会った
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確かではありませんが、状況的に考えて電話の相手はテディだったと考えて良さそうです。
レナードの笑顔の写真を撮ったのもテディだったと、のちにテディ自身が語っています。
(あくまでもテディが自分で言っているだけですが…)
そこでさらに疑問になってくるのが、「電話に出るな」というタトゥーです。
このタトゥーはまだガーゼをはがしていないので、掘ったばかりであることがわかります。
なぜこんなタトゥーが入っているのでしょうか?
作中より前に、なにか電話で不利益なことがあったからに違いありません。しかも、タトゥーにするくらいですから、かなり重要なことだとわかります。
さらに言うなら、モーテルに滞在しているレナードに電話をしてくる人物はごく限られているのではないでしょうか。
もしかしたら、テディに何か電話で嘘をつかれたのかもしれません。(あくまで想像ですが……)
謎①の結論
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●電話の相手はテディ
●直前に電話でなにか不利益なことがあった
●「電話に出るな」というタトゥーはテディのせい?
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謎②レナードの妻
レナードの亡くなった妻についても、情報が多くてこんがらがっています。
しかもレナードの妻についての情報は、レナードとテディでその主張が異なっているのです。
レナードの妻について、レナードの主張
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●妻は暴漢に襲われて亡くなった
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レナードの妻について、テディの主張
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●レナードの妻は暴漢に襲われた後も生きていた
●死因はレナードがインスリンを大量に打ったこと
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どちらが本当のことを言っているのでしょうか?
その答えのヒントは、モノクロの時間軸の中にありました。
モノクロの時間軸で、レナードがサミーについて話しているシーン、映像は回想シーンのように見えます。
サミーが施設で椅子に座っている。
「彼は俺にも知っているような目を向けた。だけどそれは嘘だった。知り合いかもしれない間柄だったら知っているふりをする。医者にも自分が普通だと見せようとする。少しでもマトモと思われたい」
サミーが施設で椅子に座っている。
誰かが通り過ぎる。
レナードが施設で椅子に座っている。
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おそらく映画館で見ていたら、見落とすか、見間違いかな?と思ってしまうような一瞬のシーンです。
ですが、その一瞬、施設にいるのはサミーではなくレナード。
このシーンは一体何を示しているのでしょうか?
テディは、「糖尿病の妻に大量のインスリンを与えたのはサミーではなくレナードだ」と主張しています。
つまりこのシーンは、レナードの語るサミーの話が、レナード自身の話だということを示しているのではないでしょうか。
謎②の結論
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●サミーのできごととして語っている話は(少なくとも一部は)レナード自身の話だった
●レナードの妻はレナードがインスリンを大量に投与したことが原因で亡くなった
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謎③ナタリーの目的
『メメント』のストーリーをややこしくしている原因のひとつは、ナタリーの存在でしょう。
ナタリーは、作中でレナードに殺される麻薬の売人、ジミーの恋人です。
以下はナタリーとレナードの初対面で、次のようなやり取りをします。
「ビールをお願い」
「何の用?」
「ビールだ」
「そんなスーツでフラっと来て、ビールってことはないでしょう?」
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ちょっとよくわからないシーンですが、レナードがジミーの車に乗り、ジミーの服を着ていることを考えると、納得がいきます。
そんなスーツとは、ジミーのスーツのことなのです。
おそらくナタリーは、ジミーが殺されたことを悟ったのでしょう。麻薬の売人ですから、いつ殺されても不思議ではありません。
そしてこう思ったのではないでしょうか。
ジミーが死んだら、恋人である自分が疑われる、と。ナタリーは身の危険を感じたことでしょう。
そこで思いついたのではないでしょうか。新しい記憶を覚えられないというレナードに、自分を殺そうとするドッドを殺してもらえばいいのだ、と。
ナタリーはレナードに「あなたがあの記憶の人?」と言います。ジミーからレナードのことを聞いていたのでしょう。
新しい記憶を覚えられないレナードなら思い通りに動かせるし、ドッドを殺したことも忘れるのですから好都合です。
ここでもうひとつ、ナタリーの行動でおかしなことがあります。
それは、廃屋の住所をレナードに教えたことです。
その時ナタリーとレナードはこんな会話をします。
「そうだ。ここに住所書き足しといた。役に立つかも。町外れの空き家だけど、あの、知ってた男が昔大きな取引に使ってた。……近くに人はいない」
「それはぴったりかな」
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この時点でナタリーは、レナードの裸も見ていますので、おそらくほぼすべての情報を握っていると考えられます。
以下の情報はすでに知っていたことでしょう。
●レナードが妻を殺した犯人を捜していること
●犯人の車のナンバー
●そのナンバーがテディの車のナンバーと一致すること
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さらにナタリーは、作中ではテディと顔を合わせていませんが、恋人のジミーからテディのことを聞いていても不思議ではありません。
廃屋に来たジミーはテディの名前を読んでいましたから、麻薬取引にテディが関わっていたことは間違いないでしょう。
つまり、ナタリーにとってはテディも自分を殺しに来るかもしれない危険人物なのです。
そのことから、近くに人がいない、人殺しにぴったりな場所を、レナードに教えたのではないでしょうか。
そしてその狙い通り、レナードはテディを廃屋で殺したのです。
謎②の結論
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●ナタリーは、ジミーからレナードのことを聞いていた
●ナタリーはレナードを利用し、ドッドとテディを殺そうとした
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謎④レナードの行動の理由と、「さて、なんだっけ」という最後のセリフ
視聴者から見ると、レナードはなぜそんなことをするのか?と思うことがあります。
レナードの謎の行動
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①妻の思い出の品物を燃やした
②ジミーの服を着て、ジミーの車を自分のものにした
③テディの写真に「こいつの嘘を信じるな」とメモした
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①の行動に関して、愛している妻の形見を燃やすのは、あまり理解できない行動だと言えるでしょう。
これについてレナードは「きっと初めてじゃない。何度も、忘れようとして」と心の中で思っています。
普段は忘れないために必死なのに、レナードは忘れるために妻の形見を燃やしているのです。そして実際に忘れてしまいます。
②の行動は異常とも言えるでしょう。
自分が殺した相手の服と車を奪い、実際に身に着けるのです。
なぜそんなことをするのでしょうか。そんなことをしたら混乱してしまうだけです。
上着のポケットに決まったものを入れて、習慣づけをするというレナードのやり方とも矛盾します。
ですが、この時レナードはあえてそうしているのです。つまり、自分で自分をわざと混乱させています。
③もおかしな行動ですよね。
時系列順にストーリーを追っていくと、テディの話には矛盾がないことに、視聴者は気付くでしょう。
テディがレナードに話した内容をまとめるとこうなります。
テディの主張
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●妻が死んだのは、レナードのせいだった。
●妻を襲った犯人を、レナードはもう殺していた。
●そのことをもう忘れ、しかもまた犯人探しができるようにわざと事件の資料を破棄した。
●レナードがたった今殺した人間(ジミー)は妻の事件とは無関係だった。
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テディの主張は筋が通っているように思えます。
それなのに、なぜテディの写真に「こいつの噓を信じるな」とメモしたのでしょうか?
それはテディの話がレナードにとって都合が悪かったからではないでしょうか。
レナードはテディの話を嘘だと思い込みたかったのです。
そしておそらくこう思ったのでしょう。「自分に都合の悪いことを話す人間は邪魔だ」と。
テディに「糖尿病だったのはあんたの女房だ」と言われた後、レナードが妻にインスリンを注射するシーンがあります。
テディ「糖尿病だったのはあんたの女房だ」
レナードが妻にインスリンを注射するシーン
レナード「妻は糖尿病じゃない」
レナードが妻をつねるシーン
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これは明らかに、レナードの記憶が書き換えられているシーンでしょう。
「妻は糖尿病じゃない」と自分に言い聞かせ、思い込んでいるのです。
レナードにとって、テディは嘘をつく人間になってしまいました。
テディの話を聞いた後、レナードは「今聞いたことを忘れさせてもらう」と言い、テディの写真に「こいつの噓を信じるな」とメモします。
そして犯人の手がかりの事実として、テディの車のナンバーをメモしたのです。
『メメント』のラストシーンでは、レナードは車を運転しています。
そしてタトゥー屋を見つけて急ブレーキを踏み、最後のセリフは「さて、なんだっけ」です。
このセリフで、レナードはこれまでのことをきれいさっぱり忘れてしまったのだ、と視聴者は気付きます。
狙い通り、自分に都合の悪いことはすべて忘れているのです。そして手元に残ったのは、テディの車のナンバーのメモ。
目の前にはタトゥー屋。このメモを、犯人の車のナンバーとしてタトゥーにするということ以外は、何もレナードは覚えていません。
その後どうなったかは、『メメント』を見た私たちにはもうわかっていますよね。
自分のメモを見たレナードは、(もう忘れてはいますが)自分の狙い通りテディを妻を殺した犯人だと思い、殺してしまいました。
レナードに都合の悪いことを言う人物は、いなくなったのです。
レナードは、自分の筆跡のメモは間違いなく事実だと思っています。
そして視聴者も(おそらく、少なくとも最初は)そのメモを疑いません。
ですがきちんと時系列順に見ていくと、そのメモこそがレナードと視聴者に間違った認識をさせている原因だと気付くのです。
謎④の結論
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●レナードはあえて嘘のメモを残したり、自分混乱させる行動をとることがある
●レナードは自分に都合が悪いことは自ら忘れるし、嘘だということにする
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謎⑤作中の謎のシーン
『メメント』は場面転換や時系列がややこしい映画ではありますが、決して意味のないシーンはありません。
時系列で整理すれば、なるほどと思うこともたくさんあります。
その中でも、意味の分からないシーンが2つあります。
『メメント』の謎のシーン
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①レナードが施設にいるシーン
②レナードが妻とくつろいでいるシーン。レナードの胸には『I’VE DONE IT(俺はやった)』のタトゥー
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①のシーンは、謎②でも触れたように、サミーの話が実はレナード自身の話だということを示しているものだと思われます。
レナードは自分の話をサミーの話と思い込んでいるのです。
そして②のシーン。このシーンは何から何までおかしなことばかりです。
●死んだはずのレナードの妻が生きている
●レナードの胸に『I’VE DONE IT(俺はやった)』とタトゥーが入っている
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レナードのタトゥーは妻が死んだ後に、新しいことが記憶できなくなったので掘り始めました。
レナードの妻が生きているなら、タトゥーが掘ってあるはずがありません。
しかもその胸のタトゥーは、復讐をやり遂げたという内容なのです。
妻が生きているなら、復讐なんてする理由はありませんよね。
つまりこのシーンも、①のシーンと同じようにレナードの思い込みということではないでしょうか。
妻は死んでいないし、復讐もやりとげた。
おかしな話ですが、レナードにとってはそれが一番の願いなのかもしれません。
謎⑤の結論
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●謎のシーンはレナードの思い込みによるもの
●レナードは自分の思い込みを事実であるかのように人に話すことがある
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さかくら
もう何を信じたらいいかわからない!
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『メメント』の真実は結局どういうこと?
以上のことから、私が考えた『メメント』の真実はこうです。
●レナードと妻が暴漢に襲われる
↓
●レナードはその時の傷のせいで前向性健忘になるが、妻は生きている
↓
●レナードが妻にインスリンを大量に投与。妻は死亡。
↓
●レナードは自分のせいで妻が死んでしまったことを忘れ、暴漢に殺されたと思い込む
↓
●一旦は施設に入るが、なぜか施設を出て犯人探しを始める
↓
●テディと知り合う
↓
●ジョン・Gという名前の人物をレナードが殺害
↓
●自分がジョン・Gを殺したことをレナードは忘れる
↓
●テディは電話でレナードがジミーを犯人だと思うように誘導
↓
●テディはジミーと廃屋で待ち合わせをし、廃屋にレナードを向かわせる
↓
●レナードはジミーを殺害
↓
●テディから話を聞いたレナードはあえてテディが犯人であるかのようなメモを残す
↓
●ナタリーがレナードを利用しようと考え、麻薬の取引場所である廃屋に向かわせる
↓
●テディの写真のメモと車のナンバーを見て、テディが犯人であるとレナードは確信
↓
●テディを殺害
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ただし注意してほしいのは、『メメント』の登場人物は全員が嘘をついているということです。
いかにもあやしかったテディやナタリーだけでなく、善良そうなモーテルの受付のバートも、主人公であるはずのレナードまで嘘をついています。
テディの話は一見筋が通っているようにも見えますが、その話が100%真実を話しているかは疑わしいところです。
実際、ジミーという無関係の人間を、テディはレナードに殺させています。その前に殺したジョン・Gが真犯人であったと言っているのはテディだけで、証拠はありません。
もしかしたら、その前にもレナードに犯罪をさせている可能性すらあります。
テディはレナードにこう言います。
「あんたは人殺しじゃない。だからこそうまくいく」
レナードは、誰かれ構わず殺すような人間ではありません。自分が無関係の人を殺すはずがないと信じています。
このセリフは、レナードをすでに何度も利用している人間の発言のようにも聞こえる気がしませんか?
つまり、この映画で信じられる情報は何ひとつないということです。
テディのこんなふうにも言います。
「都合よく自分に嘘をついたが、悪いことじゃない。誰だってそうだ」
「本当だと思いたいことしか覚えられないようだな、あんた」
このセリフが、まさしくこの『メメント』という映画の本質、テーマであるように思います。
ラストシーンで、レナードが「みんな記憶で自分を確かめてる」といいますが、みんなが「本当だと思いたいことしか覚えられない」としたら…どうでしょう?
さかくら
人間の記憶ってあいまいなものなんですね……
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動画配信サービス
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配信状況
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無料トライアル
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月額料金
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見放題作品数
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U-NEXT
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見放題
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31日間
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2,189円
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約30万本
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Amazonプライム
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〇
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30日間
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600円
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約1万本(推定)
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Hulu
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〇
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なし
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1,026円
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約10万本
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DMM TV
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30日間
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550円
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約19万本
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Lemino
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配信なし
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31日間
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990円
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約18万本
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ABEMAプレミアム
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配信なし
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30日間
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960円
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約3万本
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ディズニープラス
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配信なし
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なし
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990円
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約16,000本
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Netflix
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配信なし
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1,590円
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約5,000本(推定)
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ショーシャンクの空に
ストーリー
妻とその愛人を射殺したとしてショーシャンク刑務所に収容された無実のアンディ。粗暴な刑務主任・ハドリーや囚人たちから暴力を受けながらも、彼は持ち前の親しみやすさと元銀行家の手腕を生かし徐々に信頼を勝ち得ていく。そして20年の月日が流れ…。
『ショーシャンクの空に』は1995年に日本で公開された映画です。
タイトルくらいは聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。有名な映画ですが、意外とちゃんと見たことがないという人も多いと思います。
原作はホラー作家として知られるスティーブン・キング。
なぜこの映画が『メメント』が好きな人におすすめかというと…実はこの映画には大きな謎があると言われているのです。
伏線が張り巡らされていて考察のしがいがある、とても面白い映画なのでぜひ見てみてください。
▼『ショーシャンクの空に』についてはこちらの記事もどうぞ!▼
シャッターアイランド
ストーリー
ボストンの沖合に浮かぶ「シャッター アイランド」には、精神を病んだ犯罪者を収容する病院があった。四方を海に囲まれたこの島からある時、ひとりの女性患者が姿を消す。連邦保安官テディ・ダニエルズは捜査のため相棒チャックとともにこの島を訪れるが…。
ここがポイント!
デニス・ルヘインの原作小説は出版当時、最終章が袋とじになっていたことで話題になった。
『シャッターアイランド』は2010年に公開された映画です。
公開当時、映画館ではネタバレしないようにというテロップが流されたことでも話題になりました。
この映画にも多くの謎が隠されています。
あまり話しすぎるとネタバレになってしまいますが、1回目を見ると絶対に2回目を見たくなる映画です!
細部にまで注意しながら見ることをおすすめします。
TENET テネット
ストーリー
特殊部隊の任務中に捕らえられた“名もなき男”。昏睡状態から目覚めた彼はフェイと名乗る男からあるミッションを命じられる。それは“時間の逆行”と呼ばれる装置で過去へ移動できるようになった未来からの敵と戦い、第3次世界大戦を防ぐというものだった。
『TENET-テネット-』は、『メメント』を手掛けたクリストファー・ローランによる映画で、2020年に公開されました。
第3次世界大戦を防ぐため、未来で開発された「時間を逆行させる装置」を使って攻撃してくる未来人との攻防が描かれています。
『メメント』は、目まぐるしい場面転換により過去と現在が入れ替わる映画です。
一方『テネット』は装置によって、目の前で時間がまるで巻き戻しのようにさかのぼります。
『メメント』とは少し違いますが、こちらも複雑なストーリーなので、1回だけでなく、2回、3回と繰り返し見てください。
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(まとめ)U-NEXTで映画『メメント』を見よう!
今回は映画『メメント』の謎について見ていきました。
『メメント』の5つの謎の答えを一つずつ見ていきましょう。
『メメント』の謎と答え
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謎①
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電話のこと
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電話の相手はテディ
「電話に出るな」というタトゥーはテディのせい?
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謎②
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レナードの妻
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レナードの妻はレナードのせいで死んだ
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謎③
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ナタリーの目的
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レナードを利用して、ドッドとテディを殺させようとした
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謎④
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レナードの行動
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レナードは都合の悪い記憶を忘れるために行動することがある
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謎⑤
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謎のシーン
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レナードは自分の都合がいいように思い込むことがある
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この5つの答えから私が導き出した答えは以下の通りです。
『メメント』の真実
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●レナードはテディに利用され、何人ものジョン・Gを殺し、テディも殺した
●レナードはジョン・Gを殺したことをいつもわざと忘れる
●レナードは生きがいを失わないため、永遠に犯人を探し続ける
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レナードは、きっと誰かに強制的に止めてもらうまで犯人を探し続けるのでしょう。
さかくら
なんだか切ないですね……
これはあくまで、私が考えた答えなので、本当かどうかはわかりません。
ですが、この記事が『メメント』を見る手助けになったらうれしいです。
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