映画「シビルウォー・アメリカ 最後の日」のあらすじ・登場人物紹介
【ネタバレ無し】本作のあらすじ
▷予告
□あらすじ
連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。「国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている——」。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領はテレビ演説で力強く訴えるが、ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在していた4人のジャーナリストは、14ヶ月一度も取材を受けていないという大統領に単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへと向かう。だが戦場と化した旅路を行く中で、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていくー
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本作の制作情報
□『シビルウォー・アメリカ 最後の日』
監督
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アレックス・ガーランド
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脚本
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アレックス・ガーランド
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撮影
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ロブ・ハーディ
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美術
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キャティ・マクシー
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音楽
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ベン・ソールズベリー
ジェフ・バロウ
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制作
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DNAフィルムズ(英語版)
IPR.VC
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製作
配給
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A24
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□挿入曲
1)Lovefingers · Silver Apples
2)Suicide – Rocket USA
3)De La Soul – Say No Go
4)Frank Sinatra – Silent Night
5)Sturgill Simpson – “Breakers Roar”
6)Suicide – Dream Baby Dream
登場人物・キャスト吹替え情報
この見出しでは、登場人物や演じる俳優の紹介。なお、日本では字幕のみで吹替えでの上映は行っていないようでした。
リー・スミス :キルスティン・ダンスト
本作の主人公。ベテランの写真家で、戦場カメラマン。
大学生時代にAntifaのスクープで名を上げ、国際写真家団体マグナムフォトの最年少会員に選ばれる。
14ヶ月の間、一度も取材に応じない大統領の元へ単独取材を計画する。
紛争地域を渡り歩いた経験が多く戦闘状態でも、シャッターを降ろす手は緩めない。
モデルとなったのは第二次世界大戦の従軍記者となり、ダッハウ収容所に足を踏み入れた
女性写真家「リー・ミラー」と思われる。
演じる俳優は「キルスティン・ダンスト」。
映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』でトム・クルーズやブラッド・ピットで共演し、若干12歳ながらもその圧巻の演技でゴールデングローブ賞助演女優賞にノミネートされ話題となった。
▷キルスティン・ダンストの代表作
・『スパイダーマン三部作』(2005年)
・『エターナル・サンシャイン』(2004年)
・『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021年)
ジョエル:ヴァグネル・モウラ
リーに同行するロイター社の記者。
体当たり取材に長けており、取材チームのドライバー役から、戦闘中には新米のジェシーのカバーまで、サポート役として活躍する。
戦争や紛争地域が持つ独特の熱を好む。
演じる俳優は「ヴァグネル・モウラ」。
Netflixの人気ドラマ『ナルコス』で麻薬カルテルのボスを演じたことでゴールデングローブ賞のテレビドラマ部門主演男優賞でノミネートされ、注目を集めた。
▷ヴァグネル・モウラの代表作
・『エリート・スクワッド』(2007年)
・『エリジウム』(2013年)
・『グレイマン』(2022年)
サミー: スティーヴン・ヘンダーソン
リーに同行する取材チームの一人で、ニューヨークタイムズに務める記者。
シニアで杖をついているため紛争地域ではお荷物になると危惧されたが、長年の経験から適切なアドバイスでチームをサポートする。
演じる俳優は「スティーヴン・ヘンダーソン」。
著名な映画に出演するほかに舞台俳優としても活躍しており、ブロードウェイの優秀な作品に贈られるハロルド・プリンス生涯功労賞などを受賞してました。
▷ スティーヴン・ヘンダーソンの代表作
・『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』(2011年)
・『リンカーン』(2012年)
・『DUNE/デューン 砂の惑星』(2021年)
ジェシー・カレン:ケイリー・スピーニー
リーに同行する取材チームの一人で、最年少の新米写真家。
自爆テロ現場でリーに遭遇。その後、ジョエルに自分を売り込み、サミーと同じく半ば強引に参加する。
紛争地域での活動に慣れていなく、シャッタ―はおろかカメラすら忘れてしまうなど、まだまだ新米ではあるが、民兵部隊の銃撃戦を取材することで、戦場カメラマンとしての覚悟が決まっていく。
演じる俳優は「ケイリー・スピーニー」。
新進気鋭の若手女優で、2023年公開の映画『プリシラ』第80回ヴェネツィア国際映画祭女優賞を受賞。2024年9月に公開されたエイリアンシリーズの最新作『エイリアン:ロムルス』で主演を務めたことで話題となりました。
▷ケイリー・スピーニーの代表作
・『パシフィック・リム: アップライジング』(2018年)
・『プリシラ』(2023年)
・『エイリアン:ロムルス』(2024年)
大統領: ニック・オファーマン
分断の果てに内戦状態となったアメリカ合衆国を治める大統領。
合衆国憲法違反となる連続3期目の在任、FBIの解体など異例の尽くめ施策を実施している。
「我々は歴史的勝利に近づいている」と国民に訴えるが、現状は19の州が離脱しており、求心力は低下。後述のWFとも勢力争いにも敗戦続きで陥落目前と噂されている。
演じる俳優は「ニック・オファーマン」。
地元イリノイ州で劇団に所属し、俳優や大工、作家としてマルチに活躍。2023年のテレビドラマ『THE LAST OF US』にゲスト出演し、第75回プライムタイム・エミー賞ドラマシリーズゲスト男優賞を受賞し、注目を浴びました。
▷ニック・オファーマンの代表作
『21ジャンプストリート』(2012年)
『なんちゃって家族』(2013年)
ドラマ『FARGO ファーゴ』(2015)
【ネタバレ】映画「シビルウォー・アメリカ 最後の日」の意味不明ポイントを解説
ここからは、映画『シビルウォー・アメリカ 最後の日』の疑問点や知っておくと映画をより楽しめるポイントを解説していきます。
シビルウォーの意味とは
シビルウォー(Civil War)は内戦という意味。アメリカの内戦といえば、1860年代に国を二分した南北戦争と言えるでしょう。この戦争は約4年に渡り、奴隷禁止を掲げた北軍が勝利する形で終わりますが、第二次世界大戦よりも死者を出しており、アメリカにとっては国家の存亡の危機に瀕した出来事。
もちろん、シビルウォーという言葉には決してアメリカだけを悩ませるものだけはなく、周辺国はもちろん日本でさえ、経済影響や武力衝突に巻き込まれる危険性があります。
取材チーム一行の軌跡
ニューヨークからホワイトハウスに向けて旅をする取材班。その距離は、約1379kmと東京・鹿児島間と同じ。
直線距離だと近いように感じますが、本編では州を跨ぐ高速道路が寸断されており、危険な地域を回避するために一般道を使い迂回して進んでいきました。
内戦中の勢力図
本作ではどの勢力が、軍人が、市民が、誰が何と戦っているのか、はっきりとしているシーンとそうでないシーンが多く登場します。
まずは前提として、政府、独立した州などを整理しておきましょう。
1)LOYALIST STATES(連邦政府)
「LOYALIST STATES」と呼ばれる連邦政府に残留した州。かなりの勢力ではあるが、本編開始時にはワシントンD.C.にほど近いところまで前線となっているため陥落間近。
また、連邦政府支配下の地域でも内戦には応じない自治体も存在する。
2)WESTERN FORCES(西部勢力)
カリフォルニア州とテキサス州が反旗を翻すべく結成した同盟軍。二つ星の星条旗が印象的だが、それぞれリベラル層と保守層が多い地域だけあって、そう簡単に同盟とはならないのではないかと疑問に思った視聴者も多いはず。
しかし、ガーランド監督によると「現代の内戦は、過去の明確な境界線で分断された内戦とは違い、全てが崩壊し粉々に分裂してしまうことにある」と語っています。現実で戦争が起きた際に想定外の出来事というフレーズで終わらせないための警鐘なのかもしれません。
3)FLORIDA ALLIANCE(フロリダ同盟)
フロリダ州を中心にオクラホマ州から東側のサンベルト一帯の州の連盟。本編には直接的には登場しません。
4)NEW PEOPLE’S ARMY(新人民軍)
ワシントン州やオレゴン州など、北西部にある九つの州による連合軍。フロリダ同盟と同じく名前のみ登場します。
内戦の原因を観客は既に知っていた⁉︎
冒頭の大統領のスピーチやニュース映像で緊迫感に包まれた内戦状態であると察しますが、本編では何が原因で内戦が起きたかは言及されておりません。そのため、誰が何の為に戦っているか推察する必要があります。
大きなヒントとしては、FBIの解体、合衆国憲法修正第22条違反、などファシストが権力を握っている可能性が高いということです。いわゆる三権分立が機能していない政府の未来かもしれません。
また、内戦の構造もWFという存在を登場させることで、保守とリベラル、共和党と民主党といった単純な二極化を避けています。
特定のイデオロギーがあると確かに作品としては観やすいですが、本作が過激派の政治家やポピュリストが台頭した世界であり、既に現実もそれを迎えつつあると再認識させるための仕掛けかもしれませんね。
冬のテーマパークに潜むスナイパー
リー達が歩みを進める度に血生臭い銃撃戦に向き合うこととなりますが、終盤を除いて、一体どの勢力が戦っているのか明確ではありません。
中盤で、いつまでもクリスマスの装いをしている道に差し掛かった一行はそこで姿の見えないスナイパーに足止めを喰らいます。
プレスと書かれたフォードは狙撃するのは一体何者なのか、現地にいた2人の兵士にジョエルは質問しますが、「撃たれたから撃ち返す」だけと一蹴。
取材班がこの兵士達からも撃たれなかったことが奇跡といえるシーンでしょう。WFなのか政府軍なのか、はたまた地元のミリシアなのか分かりません。観ていて気持ち悪さを感じるほどですが、身の危険が差し迫った状況では報道には力がなく、無秩序であると示唆していると思われます。
ちなみにこの不気味な道路は放置されたイベントの観光案内所だそうで、難民キャンプとなったアメフト場と同じく、実在する廃墟。国の衰退具合は何もスクリーンでなくとも肉眼で見えてしまう。
赤サングラスの兵士は誰?
本編で1番戦慄を覚えるシーンといえば、やはり赤いサングラスの兵士の場面ではないでしょうか?
香港出身の記者と合流しシャーロッツビルに向かう途中、民間人の遺体を処理する兵士達に遭遇し、「お前はどんなアメリカ人だ?」という問いかけが行われたあのシーンです。
極めて、人種差別的な人物でアメリカ国籍を持っていない者は当然の如く処刑し、仮にアメリカ国籍を持っていても出身地によっては処刑することに抵抗のない人物。
先述のスナイパーと同じで部隊章が無いため、制服を着ていてもどの部隊か分かりません。道中で登場したガソリンスタンドを守る武装市民や民兵とは違い、あまりカスタムされていない官製品のM4を所持していたことから、私刑を行う部隊のはぐれ者かもしれません。
しかし、この映画のテーマでもある“混沌化した状況では何が本当か分からない、最悪の事態が起こらないとは限らないというルールに基づくと、この兵士のように混乱に乗じて好き放題する人々が出現することは何一つ不思議ではなく、「どんなアメリカ人か?」という質問も、もはや処刑の前のエクスキューズとしか思えません。
実はこのシーンは予告公開時から話題となっており、フィクションと笑えない所まで来てしまった現実に心を打たれた人が多かったのでしょう。
余談ですが、この赤いサングラスの兵士を演じた俳優は、主演のキルティンの夫である「ジェシー・プレモンス」。プレモンスの迫真の演技にジョエル役のヴァグネルは、カット後も30分以上泣き続けたと語っています。
また、あの赤いサングラスはプレモンス自身のチョイスで、深い意味は無いとのこと。それでも、グラス越しのあの狂気じみた視線は画面越しでもマジマジと伝わってきましたよね。
リーやジェシーのカメラは何製?
リーが使用している比較的新しいカメラはソニーのデジタルミラーレスα7。シャッターチャンスを逃さないために望遠やズームレンズなど、画角ごとに複数カメラを用意しています。
一方で、ジェシーはミラーレスではなく、フィルム式の一眼レフカメラニコンFE2。モノクロのフィルムはコダック製。
約40年前のカメラで、オートフォーカスもなく、露出からピントまで使い手の腕が如実に出てしまうカメラですが、旅を進めるにつれて徐々に使いこなしていくジェシーが印象深いですよね。
また筆者的に暗室も無い難民キャンプのベンチでの現像シーンでの2人のやり取りも忘れ難い。
終盤でリーとジェシーの行動が入れ替わったのは何故?
劇中では、長期のファシスト政権と内戦によって、ジャーナリズムの力は負けてしまいましたが、リーは写真家として報道カメラマンとしてジャーナリズムの信念に誓って行動しています。
そのため、目の前に処刑を待つ人がいようとも、爆発の煙で辺りが立ち込めようとも、ファインダーを覗き続けます。
そして、新米のジェシーには、辛い現実に直面してもカメラのシャッターを押すことで頭の中をリセットしていくことを教えていきました。
しかし、そんな彼女にも盟友であるサムの死によって変化が生じてしまいます。彼の亡骸を一度は写真に収めるものの、すぐに消してしまうのがその証拠。彼との記憶や体験をリセットは出来ないと気がついてしまったのです。
そして、戦場で兵士が銃の引き金を引くようにカメラマンはシャッターを押すだけという教えを破り、身を挺してジェシーを助けてしまいます。
一方、ジェシーは最後まで“戦場カメラマン”の教えを忠実に守り、倒れ行くリーをカメラに捉えていくのでした。
凶弾に倒れたリーに対して、ジェシーやジョエルが一瞥すらしないのがフラッシュを焚いたように脳裏に焼き付いています。
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映画「シビルウォー・アメリカ 最後の日」のあらすじ・意味解説まとめ
2024年10月公開の映画『シビルウォー・アメリカ 最後の日』のあらすじ・キャラクター・制作情報の紹介をはじめに劇中の疑問点などを解説してきました。
対立構造をぼかしたり、WFような同盟関係を登場させたりすることで、観客を上手くフィクションに誘いながらも、“決して現実からは目を背けさせない”といった気合が入ったいい映画でした。
大統領選を控えるアメリカ、本作の公開を受けてどのような風が吹くか注目したいですね。