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映画『ズートピア』で描かれる差別と偏見を徹底考察!あらすじや伏線もネタバレ解説

おさとう

更新日:2023-1-5

<プロモーション>

2016年に公開され、アメリカや日本をはじめ世界中で大ヒットを記録し、2017年にはアカデミー賞長編アニメ映画賞やアニー賞長編アニメ作品賞を受賞したディズニー映画『ズートピア』。


かわいい動物たちがたくさん登場する子ども向けの映画でありながら、「差別」や「偏見」といった人間社会が抱える普遍的な問題が描かれている本作は、子どもと一緒に大人も楽しめる作品です。


そこで今回は、この作品で描かれている差別や社会風刺を考察するほか、あらすじや伏線のネタバレ解説をご紹介していきます。


続編に関する情報やトリビアもあるので、映画『ズートピア』について理解を深めたい方はぜひ読んでみてください!


映画『ズートピア』の概要


あこがれの大都会ズートピアにやってきたウサギのジュディは、「立派な警察官になって世界をよりよくする」ことを夢見ていた。しかし、現実は甘くなかった。配属された警察署の同僚たちが肉食動物の連続行方不明事件を捜査するなか、ジュディはスイギュウのボゴ署長に駐車違反の取り締まりを任される。


ジュディは駐車違反の仕事中、困っているキツネの親子を助ける。しかし彼らは詐欺師だった。騙されたことに腹を立てながらも、ジュディは「立派な警察官」になることを諦めない。ジュディはボゴ署長に直訴し、行方不明になっているカワウソのオッタートンを探すことになる。


唯一の手掛かりは詐欺師のキツネ、ニックだけだった。


ジュディとニックは互いに騙し騙されながらオッタートンの行方を追っていくのだった。


題名

ズートピア(原題:Zootopia)

公開日

2016年3月4日(アメリカ)/2016年4月23日(日本)

監督

リッチ・ムーア/バイロン・ハワード/ジャレド・ブッシュ

脚本

ジャレド・ブッシュ/フィル・ジョンストン

配給

ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ

『シュガー・ラッシュ』で知られるリッチ・ムーア、『塔の上のラプンツェル』のバイロンハワード、そしてジャレド・ブッシュの3人が共同監督を務めています。


全世界興行収入は10億2378万ドルを超え、2016年に公開されたアニメーション映画では1位を記録しています。


『ズートピア』を視聴するならディズニープラスがおすすめ!


映画『ズートピア』を視聴できる主な動画配信サービスは、以下の通り。


配信サービス

配信状況

Disney+(ディズニープラス)

見放題

dTV

レンタル/¥330(税込)

Amazon Prime Video

レンタル/¥400(税込)


上記の中では、月額990円(税込)で利用できるDisney+(ディズニープラス)がおすすめです。


Disney+(ディズニープラス)最大の特徴は、ディズニー作品が見放題であることです。


他の動画配信サービスでも、一部課金することで『アナと雪の女王』『ベイマックス』などのディズニー作品を視聴することができますが、Disney+(ディズニープラス)なら月額料金のみでディズニー作品を視聴することができます


※過去にはU-NEXTでも配信されていましたが、2023年1月に配信終了しています。



【ズートピア2】新シリーズがディズニープラスで配信決定


ディズニープラスでは、2022年11月9日より映画では明かされなかったエピソードを描いたオリジナル短編シリーズ『ズートピア+』が独占配信中です。


全6話からなるオムニバス作品で、人気キャラクターであるナマケモノのフラッシュや、トガリネズミのミスター・ビッグに焦点を当てたストーリーを楽しむことができます。


ぜひ映画本編を楽しんだあとに見てみてください!



かわいい動物たちが暮らす大都会!『ズートピア』のあらすじを紹介

農業が盛んな田舎町に住むウサギの少女ジュディ・ホップスの夢は、大都会ズートピアの警察官になること。しかし、ジュディーの両親は体の小さなウサギが警察官になることに否定的だった。


成長したジュディは警察学校に入学して、体の大きな動物たちにも負けないよう努力を重ねた。その結果ジュディは、警察学校を首席で卒業し、ウサギ初の警察官になった。卒業式では、ライオンのズートピア市長レオドア・ライオンハートとヒツジの副市長ドーン・ベルウェザーに褒め称えられる。心配する両親に見送られ、ジュディは列車でズートピアへと向かう。


配属初日、警察署では肉食動物の連続行方不明事件が捜査されていた。張り切るジュディだったが、スイギュウの警察署長ボゴからは駐車違反の取り締まりを命じられるのだった。


ジュディが街で駐車違反の取り締まりをしていると、ゾウ用のアイス屋で、キツネであるという理由で購入を拒否されているキツネの親子ニック・ワイルドとフィニックと出会う。親子を不憫に思ったジュディは、そのアイス屋が不衛生であることを指摘し、目をつぶる代わりに親子にアイスを売るよう交渉する。


しかし親子は財布を忘れたと言い、帰ろうとしてしまう。ジュディは代わりに親子にアイスを買ってあげて、感謝される。


人助けをして気分の良いジュディは、その後街で親子を見かけるのだったが、親子の行動が怪しかったため2人を尾行することに。すると2人が、ゾウ用のアイスを小さく作り直してネズミに売っている場面を目撃する。実はニックとフィニックは親子ではなく詐欺師のコンビだった


自分が騙されたことにジュディは、ひどく落ち込んでしまうのだった。


それでもジュディはめげずに、翌日も駐車違反の取り締まりを行っていた。そこでジュディは、イタチのデューク・ウィーゼルトンが花屋から球根を盗み出したところに遭遇する。


ジュディは逃げるデュークを追い、何もかもが小さく作られたネズミたちの街に行く。ドーナツ屋の看板の下敷きになりそうだったネズミの女性を助けながら、ジュディは何とかデュークを逮捕することができた。


デュークを警察署に連行したジュディは、持ち場を離れたことをボゴ署長に叱られてしまう。しかしジュディは「もっと警察官らしい立派な仕事がしたい」とボゴ署長に食い下がる。


そんな時、カワウソのオッタートン夫人がやってくる。夫人は「行方不明の夫エミット・オッタートンを探してほしい」と頼むが、ボゴ署長は人手が足りないことを理由に追い返そうとする。それを聞いていたジュディは「私が探します」と、勝手にオッタートン夫人の頼みを受け入れてしまう。ボゴ署長はジュディの勝手な行動に怒り、48時間以内にエミットを見つけられなければジュディをクビにすると宣告する


手掛かりの写真には詐欺師ニックの姿が映っていた。ジュディはニックが何か知っているとにらみ、捜査の協力を頼みに彼のもとを訪ねる。しかしニックは捜査の協力を拒む。ジュディは録音機能付きのにんじんペンで脱税の証拠を録音し、それを使ってニックを脅し捜査に協力させることに成功する。


2人は捜査の末、エミットが乗っていたリムジンカーを見つけ出す。車内にはエミットが乗っていた痕跡があった。そのとき車の所有者ミスタービッグの手下であるホッキョクグマに捕まってしまう。


ミスタービッグはマフィアのボスで、小さなネズミだった。ミスタービッグは、ジュディとニックを、氷漬けにしようとするが、かつてジュディがドーナツ屋の看板の下敷きになりそうになっているところを助けたネズミが、ミスタービッグの娘フルー・フルーだと分かり、2人は解放される。


ミスタービッグから、当時エミットを乗せた車の運転をしていたマンチェスというジャガーを紹介された2人は、マンチェスの家へと向かう。


マンチェスは、エミットが突然凶暴化し「夜の遠吠え」と言いながら彼を襲ってどこかへ行ってしまったと語った。その直後、突然マンチェスは凶暴化し2人に襲い掛かる。


なんとかしてジュディとニックはマンチェスを捕らえることに成功するが、警察の応援がやってきた時にはマンチェスの姿は消えてしまっていた。ボゴ署長はジュディをクビにしようとするが、ニックがジュディを庇い、2人は捜査を再開する。


ニックの提案で、交通監視カメラでマンチェスを追跡することにした2人は、ベルウェザー副市長の協力を得て、監視カメラの映像を確認する。映像にはマンチェスがオオカミたちに連れ去られる瞬間が映っていた。


映像から突き止めたオオカミたちの施設に潜入した2人は、マンチェスとエミットの他、捜索願が出されている肉食動物が凶暴化した状態で閉じ込められているのを見つける。さらにそこに、様子を見に来たライオンハート市長が現れる。


施設から脱出したジュディとニックは警察に通報する。ジュディが撮影した映像が証拠となり、ライオンハート市長は誘拐事件の犯人として逮捕された。


事件を解決したジュディは一躍時の人となり、記者会見に出席する。しかしジュディは会見の中で、凶暴化したのは肉食動物だけで、本能が関係しているのではないかと発言してしまう。その発言に傷ついたニックは、警察官の仲間になってほしいというジュディに対して「肉食動物を相棒にするなんて危険だ」と言って、その場を立ち去ってしまう。


ジュディは世界をより良くしたいと思っていたのに、自分の不用意な発言がズートピア市民の間に混乱を招いたことで、自信を失くし、警察官を辞めて故郷に帰ってしまう。


失意のままにんじんを売るジュディだったが、虫よけの青い花を踏みそうになった子ウサギが「夜の遠吠えを踏むな」と注意されているのを聞いて、凶暴化の原因がその花であることに気が付く。


ジュディは大急ぎでズートピアに行き、ニックに謝罪して共に事件の真犯人を探してほしいと頼み込んだ。仲直りした2人は、以前ジュディが捕まえた泥棒デュークを訪ねる。彼が盗んだ球根こそ、「夜の遠吠え」の球根だったからだ。


デュークはダグというヒツジに依頼されたと白状した。ダグは廃線となった地下鉄の車両を改造したラボで、「夜の遠吠え」から弾丸を作り、それを銃で肉食動物たちに撃ち込んで凶暴化させていたのだった。


ジュディとニックは、ダグから弾丸と銃を奪って警察署へと向かう。しかし、2人の前にはライオンハートの代わりに新たに市長となったベルウェザーが現れ、弾丸と銃を渡せと言った。ベルウェザーこそが、この事件の真犯人だったのだ。


ジュディとニックはベルウェザーに弾丸と銃を奪われ、穴に落ちてしまう。ベルウェザーはニックの首に弾丸を撃ち込み、凶暴化したニックを見下ろしながら自身の計画を語った。ベルウェザーは、肉食動物を凶暴だと思わせてズートピアから追い出し、草食動物だけの世界を築き上げようとしていたのだった。


ニックに首を噛まれたジュディだったが、死んだふりをしておどけ、ニックも何事もなかったかのように笑った。実は事前にニックは弾丸をジュディの実家で栽培しているブルーベリーとすり替えていたのだった。


2人に騙されベルウェザーが語った計画は、ジュディの録音機能付きにんじんペンに録音されていた。そして、ベルウェザーは駆け付けた警察たちに逮捕される。


凶暴化の原因が分かったことで治療薬が作られ、肉食動物たちは元に戻り、ズートピアには平穏が戻った。


その後、ニックはキツネ初の警察官となり、ジュディとコンビを組んで意気揚々とパトカーで走り出すのだった。



実は偏見の持ち主?ジュディの性格を考察

本作の主人公は「立派な警察官になって世界をよりよくする」ことを夢見てズートピアにやってきたウサギのジュディ。


小さな体でありながら勇敢さと正義感を持ち、困難な状況も覆していくジュディは、本作『ズートピア』で諦めないことの大切さを伝えてくれるキャラクターです。


そんなジュディは、一体どのような性格なのでしょうか。作中の彼女の行動や発言から、彼女の性格を考察していきたいと思います。



うさぎのジュディは差別や偏見を許さない


ジュディはその言動から、差別や偏見を許さない性格であるということが分かります。


そのことが分かるシーンをいくつかご紹介します。


・警察学校を卒業し、ズートピア行きの列車に乗るときに父親から「都会は怖い!中でもキツネは最悪だ!」と忠告された際に、ジュディは「キツネ全部がイジワルじゃない。性格の悪いウサギだっている」と言い返します。


・警察署の受付で、チーターのクロウハウザーに「かわいいね」と言われた時、「ウサギは小さくてかわいいけど、だからって見た目で判断されるのは、あまり、その……」と言います。


・アイス屋で「キツネだから」という理由で購入を拒否されていた詐欺師の親子を救うために行動する。


これらの言動から、ジュディは差別や偏見を嫌い、見た目や種族で判断することを許さない性格であることが見て取れます。


ジュディは無意識に差別していた


一見すると非の打ち所がない性格のジュディですが、実はそんなことはありません。


共同監督のジャレド・ブッシュは、インタビューで「悪役だけに偏見を抱かせるのではなく、主人公を含む全てのキャラクターに偏見を抱かせることが、とても重要だった」と語っています。


作中には、ジュディが持つ差別や偏見が分かるシーンがいくつかあります。ジュディは一体どのような偏見を持っていたのか、順番にご紹介します。


まず、ジュディは見た目で判断されることを嫌がるにもかかわらず、見た目を重要視する傾向があります


ジュディは「おひとりさまにんじん」を電子レンジで温めますが、そのにんじんの小ささに肩を落として食べずに捨ててしまいます。


実はこのシーンには対比となるシーンがあります。それはミスタービッグの娘の結婚パーティーでプリンが振舞われるシーン。


ニックは“ネズミサイズのプリン”を味わいながら食べ、にっこりと笑顔になっていました。


他にもジュディの見た目を重要視する傾向が分かるシーンがあります。


ミスタービッグに捕らえられた時、ジュディは次々と登場する大きなシロクマたちにを見て「あれがミスタービッグね!」と繰り返します。名前から勝手に大きな相手であると決めつけている様子が描かれているのが分かると思います。


次に、ジュディには職業差別とまではいかずとも、職業軽視発言が見て取れます。


ズートピアで憧れの警察官になったジュディは、警察署のみんなが連続行方不明事件の捜査を任されるなか、ボゴ署長に駐車違反の取り締まりを命じられます。そこでジュディは「私は警察学校でトップの成績だったんですよ!」とボゴ署長に反論します。


「体が小さいウサギだから正当な扱いを受けられないジュディ」という風に見ることもできますが、新任の警察官に駐車違反を取り締まるように指示することは、別に不自然なことではないとも思います。


また、仕事を終え自宅で両親とビデオ通話をしているときに、駐車違反の切符を切る仕事の制服を着ていることを指摘されたジュディは、「これは今日だけなの!」と誤魔化そうとします。


彼女は作中、しきりに「立派な警察官になりたい」と口にします。しかし、駐車違反を取り締まる仕事も警察官の立派な仕事であるはずです。


ジュディには少なからず「どうして自分が駐車違反の取り締まりなんてしなければいけないのか」という意識があったのだと思います。


ジュディは自身の差別意識や偏見に無自覚でした。しかし無意識に何かを差別してしまうことは、ジュディだけでなく誰にでも言えることではないでしょうか。


『ズートピア』で描かれている偏見や差別は、分かりやすいものだけではなく、“誰もがしてしまうかもしれない差別”もあるのです。そしてそれは、私たちが生きる現実社会でも同じことが言えるのだと思います。


『ズートピア』は社会問題を風刺していた?

狩る側であった「肉食動物」と狩られる側であった「草食動物」が共に暮らす街「ズートピア」は、様々な人種や出身国の人々が隣り合わせに暮らしている多民族国家アメリカをモデルにしています。


作中には、アメリカで実際に起きている社会問題が描かれており、それらを理解することで『ズートピア』をより深く楽しむことができると思いますので、いくつかご紹介していきます。



草食動物と肉食動物は白人と黒人のメタファー


作中に登場する「草食動物」と「肉食動物」は、白人と黒人を表していると考えられます。


物語の冒頭では、ジュディたちが「ズートピアの歴史」についての演劇を行っていました。この演劇では、「何千年もの昔、草食動物は肉食動物を恐れ、肉食動物はその本能的欲求にしたがって草食動物を襲った」と語られています。


しかし、これは捻じ曲げられた歴史である可能性が高いです。それは、ジュディとニックがベルウェザーから逃げるシーンで分かります。


2人は博物館の中でベルウェザーから逃げているのですが、この博物館には「大きな槍を持って佇むマンモスの銅像」「木の上にいるライオンのような動物と、それを槍で狙うウサギのような動物たちが描かれた絵画」がありました。


実際には、武器を用いた草食動物が肉食動物を支配していた過去があるのかもしれません


これは、アメリカの古い歴史に近似する部分があります。かつてアメリカがイギリスの植民地だった時代には、もともとアメリカに住んでいた黒人を、白人が奴隷として扱っていました。


また、「ズートピア」に暮らす動物たちの9割が草食動物であり、肉食動物は1割に過ぎません。「ズートピア」という街では、草食動物が圧倒的なマジョリティなのです。

実際のアメリカも、白人の割合が黒人を上回っています。


これらのことから、『ズートピア』では「草食動物=白人、肉食動物=黒人」を表していると考えられます。


現実にも問題となっている「サービスをお断りする場合がございます」

詐欺師のニックが親子を装い入店したアイスクリーム店には、「サービスをお断りする場合がございます」というプレートがあり、実際にニックは「キツネである」という理由だけでアイスの購入を拒否されています。


これは痛烈な社会風刺です。実際にアメリカでは1960年代まで、白人以外の客の入店を拒否するレストランなどが多くありました。現在でも白人以外の入店を禁止している店は存在しており、たびたび問題となっています。


また、アイスクリーム店の店主がニックに対し「字は読めないだろうが」と言っていますが、これは識字率の低さを風刺しているものと考えられます。


海賊版DVDへの批判

作中、ジュディとニックは「夜の遠吠え」を盗んだデューク・ウィーゼルトンのもとを訪れます。このときデュークは、道端で海賊版DVDを売っているのですが、これはニューヨークなどの路上で、違法に販売されている海賊版DVDをするどく風刺しています


また、このシーンにはユニークな演出がなされています。


デュークが販売している海賊版DVDのタイトルに注目すると『ブーマックス』『塔の上のヒヒンツェル』など、ディズニー作品を彷彿とさせるタイトルが並んでいます。


『ズートピア』を視聴するときには、ぜひ海賊版DVDのタイトルを確認してみてください。


ミドニカンパムホリシシアスは違法薬物

作中で事件解決のキーアイテムとなった植物ミドニカンパムホリシシアスは、違法薬物のメタファーとして描かれていると考えられます。


ミドニカンパムホリシシアスは、クロッカスの一種で紫色の花を咲かせる植物。別名を「夜の遠吠え」と言います。


虫除けとして畑に植えられることがある植物で、かつてテリーおじさんというウサギが「夜の遠吠え」の花を食べて正気を失い、ジュディの母ボニーに噛みつくという事件が起きています。


また、ベルウェザーの計画のもと、ダグは「夜の遠吠え」を使い生成した弾丸を撃ち込んで、肉食動物たちを凶暴化させていました。


ミドニカンパムホリシシアスには、動物を興奮させ凶暴化させる作用があるのでしょう。


ヒツジのダグが地下鉄の車両を改造したラボで、大量の「夜の遠吠え」を栽培し弾丸を生成するシーンは、コカインの原料であるコカや、マリファナの栽培を彷彿とさせます。


何度見ても面白い!『ズートピア』の伏線やトリビアを紹介

映画『ズートピア』にはたくさんの伏線や小ネタが登場します。


作品に一度登場したものは必ず登場すると言っても過言ではないくらいに、『ズートピア』は反復表現が多い作品です。


その中から特に気になったポイントをご紹介していきます。


繰り返される“演劇”


前述したように、物語の冒頭で幼き日のジュディは「ズートピアの歴史」と職業選択の自由を称える演劇を行っています。


演劇の中でジュディは、友人のヒョウが演じる肉食獣に喉元を噛まれ、「血だ!血だ!……そして死んだ」と滑稽に死んだふりをしています。


このシーンは、極めて重要なシーンの伏線でした。


物語の終盤、ベルウェザーによって凶暴化する弾丸を撃ち込まれたニックは、凶暴化しジュディの喉元に噛みつきました。するとジュディは冒頭の演劇で口にした「血だ!血だ!……そして死んだ」という台詞を繰り返し、おどけて見せました。


ジュディとニックの罠にまんまと引っかかったベルウェザーは逮捕され、事件は無事解決します。


映画が始まってすぐのシーンが、事件のラストにつながっているなんて驚かされますね。


“にんじんペン”が示すジュディとニックの関係

録音機能つきの“にんじんペン”の使われ方が、ジュディとニックの関係性を上手に表現しています。


はじめジュディは、ニックの脱税の証拠を録音し、捜査に協力させるために“にんじんペン”を使いました。次にジュディは、私有地に「許可がなくても入れる状況」をつくるために、ニックに“にんじんペン”を取りに行かせました。


ここまでの“にんじんペン”は、ニックに捜査の協力をさせるための道具でしかありません。


しかし、その後ジュディは、捜査に協力してくれたニックに対して、警察の応募書類ともに“にんじんペン”を渡します。この時には“にんじんペン”は、友人に贈るプレゼントとなっているのです。


そして、その後“にんじんペン”は、仲違いした2人が再度コンビを組む際に仲直りの手段として使われ、最後には、2人がベルウェザーの悪事を暴くための道具となります。


このように“にんじんペン”は、ジュディとニックの関係性を表現する重要なアイテムでした。


DMVの職員はナマケモノ!

『ズートピア』の予告ムービーにも使用され、とても笑えるシーンとなっているDMVのナマケモノ登場シーン。


DMVという施設は実際にアメリカにあり、運転免許を取るために行かなくてはならない場所です。実はアメリカのDMVは、手続きが驚くほど遅いことで知られており、アメリカ人が最も行きたくない場所と言われることもあるそうです。


作中でDMVの職員にナマケモノを起用したのは制作陣の遊び心からでしょうか。


ちなみにナマケモノのフラッシュが置いていたマグカップには、「YOU WANT IT WHEN?(いつそれがほしいの?)」と書かれています。


これは「急かさないでね!」ということを訴えていたのかもしれませんね。


また、このDMVで証明写真を撮影しているブタの女性の右側の壁には、ひっかいた跡のようなものが見られます。あまりの遅さにイライラした動物たちが付けたものなのでしょうか。


ミスター・ビッグは『ゴッドファーザー』のオマージュ

ジュディとニックが、行方不明になっているエミットを探すなかで出会うトガリネズミのミスタービッグ。名前に反して小さな体で、どっしりと椅子に座る姿は貫禄があります。


そんなミスタービッグは、1972年の映画『ゴッドファーザー』のヴィトー・コルレオーネをオマージュしたキャラクターです。イタリア訛りのある特徴的な話し方は、ヴィトー・コルレオーネそっくりです。また、ファミリーとして迎え入れたニックが、恩を仇で返すような真似をしたことを責めるという設定も、『ゴッドファーザー』の設定に寄せているのが分かります。


『ゴッドファーザー』は、イタリアから来た移民とその子どもたちの物語を描いた、アメリカを代表するマフィア映画です。


様々な種類の動物たちが集まって暮らすズートピアには、多かれ少なかれ移民がいるということを示す意図があったのかもしれませんね。


「ありのままに」他『アナ雪』ネタが満載

『ズートピア』には、2013年に公開された大人気ディズニー映画『アナと雪の女王』に関係する小ネタがたくさん盛り込まれています。


窃盗犯を捕まえたにもかかわらず、評価してもらえないジュディはボゴ署長に意見します。それに対しボゴ署長が放った言葉が「Let it go.」。「アナ雪」で使用された楽曲『Let It Go』をもじっているのでしょう。日本語訳では「ありのままで」として有名ですが、このシーンでは「ありのままに」と訳されています。


この他にも、「アナ雪」のハンズ王子のケーキ屋さんが登場したり、街中にアナとエルサに似た服装をしたゾウを確認することができます。


また、作中には「アナ雪」だけでなく、映画『ベイマックス』などの小ネタも盛り込まれているので、映画を見る際にはぜひ探してみてください。


キツネのニックには裏設定があった?

作中では、子どもの頃に他の草食動物たちに強引に口輪をはめられるという、壮絶な過去を経験していたことが明らかになるニック。そんなニックは、実は『ズートピア』の制作初期段階では、主人公になる予定でした。


ニックを主人公として制作していた段階では、ズートピアに暮らす肉食動物には首輪が装着され、興奮すると首輪から電流が流れるという設定がありました。


ディズニープラスでは、特典映像としてジュディとニックがシロクマのパーティに紛れ込むシーンを視聴することができます。このシーンでは、5歳になった子どものシロクマに、父親のシロクマが「一人前の証」として首輪をプレゼントするという場面が描かれています。


あまりに世界観が暗いので、この案は採用されなかったそうです。



作品を通して伝えたいことは何?映画『ズートピア』の感想

『ズートピア』という作品は、「互いの違いを知り、深く理解し認め合うことで、世界はより良くなる。そのことを諦めないでほしい」ということを伝えたかったのではないかと、私は感じました。


この映画で描かれているのは、私たち人間の世界そのものです。性別や見た目、出身地など、様々な“個性”を持って、私たちは生きています。その“個性”に対して、「自分と“違う”」「みんなと“違う”」というだけの理由で、差別意識や偏見を抱いてしまうのはとても悲しいことです。


作中では、「差別や偏見はよくないことだ」と分かっている人でさえ、時に無自覚に差別をしてしまっていることもあるのだと、ジュディの言動を通して警鐘を鳴らしていました。


本作の冒頭、ジュディたちの演劇を見た観客の多くは、「肉食動物は凶暴で危険、草食動物はか弱い」というイメージを無意識に持ってしまったのではないでしょうか?


しかし実際には、スイギュウのボゴ署長のように屈強な草食動物もいれば、カワウソのエミットのように小さな肉食動物もいます。


私たちも、ジュディのように今一度、心の中にある差別意識や偏見に目を向ける必要があるのかもしれないですね。



映画『ズートピア』の考察まとめ


今回は、映画『ズートピア』の考察や解説をご紹介しました。


『ズートピア』は、キャラクターがかわいいだけの子ども向け映画ではなく、大人でも楽しむことのできる奥深い作品です。


ディズニープラスでは、記事内でご紹介したジュディとニックが紛れ込んだシロクマのパーティの様子や、ゾウ用のパソコン相手に苦戦するジュディを描いたアニメーションなど、豊富な未公開シーンをすべて視聴することができます。


この機会にぜひディズニープラスで『ズートピア』の世界を楽しんでみてください。


※本ページの情報は2023年1月時点のものです。最新の配信状況は各動画配信サービスサイトにてご確認ください。

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おさとう

純文学・詩・エッセイなどを好み、深夜に散歩することを日々のささやかな楽しみとする20代。スマホのロック画面は『ナイト・オン・ザ・プラネット』のウィノナ・ライダー。読者の皆さんが新たな気付きを得られる記事を目指して書きます。

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