ダークファンタジー「パンズ・ラビリンス」は怖い!?一体どのような作品?
ギレルモ・デル・トロさんが監督を務めたパンズ・ラビリンスは、ダークファンタジー映画です。アメリカとメキシコ、そしてスペインが共同制作しました。日本では、2007年10月に公開されています。
作品の舞台は内戦直後のスペインで、現実と迷宮の間を生きている少女が主人公となっています。「怖い」とか「気持ち悪い」と言われることが多い作品ではありますが、第79回アカデミー賞でアカデミー撮影賞やアカデミー美術賞、アカデミーメイクアップ賞を受賞するという実績を残しているのです。そのため、かなり魅力的な作品であると言えるでしょう。
作中に登場する主要キャラクター
パンズ・ラビリンスには、魅力的なキャラクターが登場します。ここでは、主要キャラクターについてご紹介します。
オフェリア
イバナ・バケロが演じているオフェリアは、おとぎ話が好きな少女です。戦争で父親を亡くしています。その後母親の再婚相手であるヴィダル大尉の屋敷で生活することになります。争いや恐怖ばかりの現実世界に嫌気を感じたころ、魔法の国が存在することを知るのです。
義理の父であるヴィダル大尉の冷たい行動をみて、嫌悪感はどんどん募っていきます。そのため、屋敷での暮らしは居心地の良いものではありませんでした。
パン
ダグ・ジョーンズが演じているパンは、オフェリアが森で出会った羊頭の妖怪です。オフェリアを魔法の国の王女の生まれ変わりだと言い、魔法の国に戻るために必要だとして3つの試練を与えます。
そんなパンは、実は迷宮の守護神であり、地価の王国の番人でもあったのです。オフェリアに対しては、穏やかな態度をとることもありますが、威圧的な態度をとることもあります。
ヴィダル大尉
セルジ・ロペスが演じているヴィダル大尉は、森の中にある砦を指揮している独裁政府軍の退位で、山奥にある軍隊の屋敷に住んでいます。反政府軍を一掃することが目的です。オフェリアの母であるカルメンの再婚相手でもあります。
再婚相手であるカルメンを山奥に呼び寄せたのは、自分自身のそばで息子を出産させたいという身勝手な理由からです。また、とても冷酷で出産時に妻は死んでも問題ないが息子は無事に産ませるようにと医者に言い放つシーンもあります。
カルメン
アリアドナ・ヒルが演じているカルメンは、オフェリアの母親です。ヴィダル大尉と再婚し、お腹には子どもが宿っています。ヴィダル大尉と再婚を機に、山奥にある屋敷に移り住みました。
娘であるオフェリアのことを愛していますが、ヴィダル大尉に対する態度は非常に従順です。山奥にある屋敷まで車で足を運んだことにより、体調を崩してしまいます。
メルセデス
マリベル・ベルドゥが演じているメルセデスは、ヴィダル大尉の屋敷にいるお手伝いの女性です。オフェリアが明晰であることを見抜き、好感を持ちます。
ゲリラの弟であるペドロに協力し、家族との連絡係をしています。また、屋敷にある物資をこっそりと持ち出して弟たちに渡すといった役割も担っているのです。ヴィダル大尉にそれがばれてしまい、リンチされかけますがナイフで大尉の唇を切り裂いて逃げるという勇敢な一面も持ち合わせています。
ペイルマン
ダグ・ジョーンズが演じているペイルマンは、2つ目の試練に出てくる妖怪で子どもを食べてしまいます。顔には目がなく、両手の手のひらに目玉が埋め込まれているという大人でもトラウマになってしまうようなビジュアルを持つキャラクターでもあります。
いつもは椅子に座って静かにしていますが、テーブルの料理を誰かが食べてしまうとその相手に襲いかかり、食い殺そうとします。オフェリアはブドウをつまみ食いしてしたので襲うとします。
Dr.フェレイロ
アレックス・アングロが演じているDr.フェレイロは、地元の医者です。ヴィダル大尉から依頼されて妻であるカルメンを診察しています。そんなDr.フェレイロは、メルセデスと同じようにゲリラの支援も行っていて、ゲリラに対する治療を施しています。
ゲリラがヴィダル大尉に捕まって拷問を受けた際、「殺してほしい」とお願いされました。その時、相手の気持ちを汲み取って、安楽死させるという人道主義者です。
物語は怖い?徹底考察してみた!
パンズ・ラビリンスは、ストーリーが「怖い」とか「気持ち悪い」と言われている作品です。続いては、その内容についてネタバレありで考察や解説していくことにしましょう。
内戦直後のスペイン
パンズ・ラビリンスは、内戦直後のスペインが舞台になっています。そのため、1936年~1939年に起こったスペイン内戦について理解を深めておくと、作品の理解度も変わってきます。では、スペイン内戦を踏まえながらみていきましょう。
スペイン内戦は、第二共和政期のスペインで発生しました。アサーニャが率いる左派の人民戦線政府と独裁者のフランコが率いる右派の反乱軍が争ったというものです。左派陣営にアーネスト・ヘミングウェイやアンドレ・マルロー、ジョージ・オーウェルが参戦していたことは有名なので知っている人も多いでしょう。
パンズ・ラビリンスの世界では、右派がヴィダル大尉側に当たり、内戦が終結した後の犯行勢力がメルセデスを含むレジスタンス軍だと言えます。実際の内戦では、ヨーロッパがスペインを助けに来ないという悪夢をパンズ・ラビリンスの世界に監督が投影していると言われています。
1944年が舞台となっているこの作品では、内戦が終わったものの戦いが続いているという状態です。そんな中でオフェリアは、ファンタジーの世界に想いを馳せていたのです。母親のカルメンは、そんなオフェリアをたしなめつつも、愛していました。
過酷な日々
この作品は、過酷な日々も描いています。監督であるデルトロは、アンデルセンやグリム兄弟、オスカーワイルドなどの世界観を取り上げながら、「魔法が現実世界に起こるのは、現実が残酷だからだ」と語っています。そしてオフェリアが迷宮に迷い込むのは、過酷な現実に直面したからだと説明しているのです。
作中に登場するペイルマンは、協会と子どもたちの食欲がメタファーになっています。手のひらにある目に気を取られてしまいがちですが、手にある穴は聖痕だと考えられるのです。パンは、オフェリアやカルメン、メルセデスなど女性陣と対極にある存在で、男性性の原型でもあります。それもこの作品のメッセージ性を読み取る重要な要素になると言えるでしょう。
パンとの出会い
過酷な現実の中で、オフェリアは不思議な世界に入り込んでいきます。それは、義理の父親になるヴィダル大尉の屋敷に向かう道中にある石像を見つけたことが始まりです。森の中に合った石像は片方の目が落ちていたため、オフェリアがそれを拾ってはめたところ、石造の中からナナフシが出てきました。
そのナナフシをオフェリアは妖精だと思ったのです。その夜石像から現れたナナフシの妖精は、オフェリアを家の近くにある迷宮へと誘います。その場所は、ヴィダル大尉の元で働いているお手伝いのメルセデスから入ってはいけないと言われていた場所でした。
それでもオフェリアは迷宮へと入っていきます。そして奥へ進んでいくとそこには迷宮の守護神であるパンがいました。パンは、オフェリアのことを王女と呼び、自分は王女のしもべだと言います。パン曰く、オフェリアはかつて地底に合ったモアナという王国の王女だと言うのです。
そしてオフェリアに対して、「モアナの王は、オフェリアを再度王国に迎えたいと思っている。しかし、人間の姿になっているため、本当に王女なのか確かめたい。本当の王女だと見極めるためには、満月までに3つの試練をクリアしなければいけない」と説明します。一通り説明するとオフェリアに1冊の本と小さな袋を渡します。渡された本の中には、オフェリアが王女だったことを示す物語が記されていました。
パンから与えられた3つの試練
モアナという王国の王女であることを示すために、オフェリアは3つの試練を与えられます。続いては、3つの試練がどのような内容なのかみていきましょう。
巨大カエルの退治
1つ目の試練は、巨大カエルを退治するというものです。その内容は、大木の下に住んでいる巨大な蛙に2つの石を飲ませるというものでした。オフェリアは、体を汚しながら蛙に石を飲ませることができ、吐き出したものから鍵を見つけ出しました。
そこでゲリラへの報告をするために来ていたメルセデスに見つかり、屋敷へ帰ることになります。そして母親に怒られてしまいます。
そして次の試練を確認するために浴槽で髪を開いたところ、だんだんと赤く染まっていったのです。そんな時、母親の悲鳴が聞こえて慌てて様子を見に行くと大量に出血し、今にも倒れそうになっていました。
父親は医師を呼び、母親が休めるようにオフェリアを1人部屋に移動させます。その部屋で眠りにつくと、パンがオフェリアの元に現れます。そして、早く2つ目の試練を実行するように迫るのです。
しかしオフェリアは母親の容体が心配なので躊躇います。その様子を見たパンは、自身の懐からマンドラゴラの根っこを取り出し、それを牛乳に漬けてベッドの下に置き、毎日オフェリアの血を2滴たらすように伝えます。
その後、2つ目の試練にオフェリアは挑戦することになりました。
怪物の部屋
2つ目の試練は、1つ目の試練よりも危険な内容であり、禁止事項や守らなければいけないこともたくさんありました。例えば、向かった先で行われている豪華絢爛な宴で提供されている料理を食べてはいけない、砂時計の砂が全部落ちる前に戻らなければいけない、転寝しているのは人間ではないといったものです。
注意事項を聞いたオフェリアは、1つ目の試練で手に入れた鍵を使って探検を手に入れました。しかし、禁止事項を破って宴で提供されているブドウを食べてしまったのです。するとそこにいたペイルマンという怪物は目を覚まし、近くにいた妖精2匹を食いちぎってオフェリアに迫ってきます。
オフェリアは必至で逃げますが、砂時計の砂が落ち切ってしまい、扉を開けることができなくなってしまいました。そこでオフェリアは、チョークで新たな扉を描いて何とか逃げ出せました。
そしてパンに手に入れた短剣を渡すのですが、残っていた妖精がブドウを食べてしまったことなどを告げ口し、パンは怒ります。それだけではなく、オフェリアが王女に戻る資格はないと言い、消えてしまいました。
オフェリアが言いつけを守らなかったのは、オフェリアの心の中にある超自我が影響しているのではないかと考察できます。超自我というのは、心の中にある快楽的欲求(イド)を道徳的に抑えている部分です。オフェリアがブドウを食べたのは、快楽的欲求が勝ってしまう人間性を表しているとも言えます。
最後の試練
そのような状況下で、オフェリアにさらなる絶望が襲い掛かるのです。それが弟の誕生です。弟を出産したことにより、母親は死んでしまったのです。
ヴィダル大尉は赤ちゃんが無事に生まれたのであれば、カルメンの死は全く気にしていません。そのため、オフェリアは屋敷に居場所がないと考え、レジスタンス側についているメルセデスと共に逃げようとします。しかし、それに気が付いたヴィダル大尉につかまり、逃亡は失敗してしまいます。
メルセデスは拷問部屋に閉じ込められてしまいますが、ちょっとした隙をついてヴィダル大尉を攻撃し、レジスタンスに合流するのです。そしてオフェリアは1人ぼっちになってしまいます。そんな時、パンが再び現れました。
そして、最後のチャンスとして3つ目の試練をオフェリアに伝えます。その試練というのは、生まれて間もない弟を連れだして、王国まで連れていくというものです。
弟をベッドから連れだして迷宮に行こうとしますが、ヴィダル大尉に見つかってしまいます。何とか逃げ切って迷宮の奥までたどり着き、パンが現れました。そこでパンは、扉を開けるには弟を短剣で刺し、血を流すようにと伝えるのです。
それをオフェリアは拒否し、パンはキレてしまいます。そして、「私に従うと約束したはずだ!」と言い、弟を選んだオフェリアの前から姿を消しました。
メルセデスの存在
メルセデスは、ヴィダル大尉の屋敷のお手伝いです。しかし、それは表の顔で実はゲリラの内通者だったのです。屋敷がゲリラから襲撃された時、倉庫の鍵が壊されていることに気が付いたヴィダル大尉は、鍵を持っていたメルセデスに対して疑いの目を向け始めます。
そして、ゲリラを撃退することに成功して、生きているゲリラの弾性を連れ帰って拷問します。ヴィダル大尉は、家の中に何か盗聴などができる道具が設置されているのではないかと考えて探し始めたところ、カルメンのベッドの下にマンドラゴラがあることに気が付きました。マンドラゴラをくだらないまじないだと言い、暖炉の中に入れて燃やしてしまうのです。
その後、ヴィダル大尉は生き残ったゲリラを拷問しますが、さらなる拷問を行えるように医者に治療をするよう頼みます。しかし、その医者もゲリラの内通者だったため、治療ではなく安楽死させました。
母親の死
オフェリアの母親であるカルメンは、マンドラゴラがなくなったことで再度苦しみ始めます。そして、軍医がやってきて出産を迎えます。難産の末、男の子が生まれました。
しかし、カルメンは出産後に亡くなってしまうのです。オフェリアは悲しみ、ヴィダル大尉は他にも内通者がいることを知ってさらに残酷な考えを持つようになってしまいます。その時に、メルセデスが内通者であることをヴィダル大尉は知ることになります。
そして迎える結末とは・・・
パンズ・ラビリンスは、衝撃的な結末を迎えることになります。最後に、その結末についてみていきましょう。
オフェリアはなぜ殺されたのか
主人公であるオフェリアは、弟を迷宮に連れ出した時にヴィダル大尉に追われていて、最終的に撃ち殺されてしまいます。弟を連れだしたことによって腹を立てていたこともあるでしょうが、元々ヴィダル大尉が冷酷な性格であったこともこの行動につながったのではないかと考えられます。
ヴィダル大尉はどうなったのか
オフェリアを殺した後、ヴィダル大尉も殺されてしまいます。迷宮から戻ってきた時に、ゲリラの襲撃を受けたことが原因となっています。
オフェリアは王女になった
そのような状況をみたメルセデスは、迷宮で何かあったのではないかと考え、向かっていきます。するとそこには、血を流したオフェリアが倒れていたのです。出血していましたが、オフェリアはまだ生きていました。
メルセデスはオフェリアを撫でながら子守唄を歌います。そうすると、オフェリアの血に満月が移り、水たまりに流れ込んでいきました。その時、オフェリアの身体は金色に輝き、もう1つの国へと王女として迎えられていったのです。
なぜオフェリアが王女として迎えられていったのかというと、「無垢な者の代わりに血を流せるかどうか、試すのが本当の試練だった」という王様の言葉にその答えが全て含まれています。つまり、最終的にオフェリアは自分自身が望む世界で王女になることができたということになります。
見る人によって異なる捉え方ができる
パンズ・ラビリンスは、歴史上で起こった事実とファンタジー要素が混在しているため、現実世界がメインの舞台で幻想ともいえるファンタジー部分は主人公の少女・オフェリアが病的に逃避しているという解釈もできてしまいます。作中の現実世界でオフェリアは殺されてしまい、その後ファンタジーの世界に入り込んでいきます。そして、王女として迎え入れられるという結末です。
その結末は、死んでしまう少女の妄想だと考えることももちろんできます。そのような見方をした場合、現実世界で適応できなかった悲劇的な物語になってしまうでしょう。それだけではなく、ファンタジーならではの栄光や自然界に存在する精霊は、まるで霧のように消え去ってしまいます。
しかしながら、パンズ・ラビリンスにはマンドラゴラなどのファンタジー世界の物が現実世界にも侵食していることが分かります。つまり、ファンタジー世界が現実世界よりも優位になっていると言えるのです。監督は、南米的な感覚をもっていることから、現実世界とファンタジー世界は併存していて、どちらかというとファンタジー世界に対する優越を感じていたのではないかと考えられます。そのような思考が根底にあったからこそ、パンズ・ラビリンスではファンタジー世界で主人公のオフェリアが幸せな結末を迎えることができたのでしょう。
パンズ・ラビリンスを観た人からはこのような感想が寄せられています。これらを見てみると、観る人によって意見がかなり違うことが分かります。つまりこの作品が、人によって多岐に渡る見方ができる作品だと言えるでしょう。
現実世界ではない世界でオフェリアが幸せになれたのであればハッピーエンドだと感じる人も少なくありません。しかし現実世界では悲しい最期を迎えているため、バッドエンドだと感じてしまう人も多くいます。それは、リアルな物語として観るのか、おとぎ話として観るのかによって変わるのではないかと考えられます。
「パンズ・ラビリンス」の見どころ
パンズ・ラビリンスには、見どころがたっぷりあります。続いては、具体的にどのような点が見どころになっているのかみていきましょう。
【オフェリアの世界】
1つ目は、オフェリアが作り出した世界です。オフェリアは、内戦で父親を亡くしてしまい、母親のカルメンは独裁的なヴィダル大尉と再婚しました。再婚後の生活はオフェリアにとって苦痛で、自分だけの世界を作り出して心の安定を保とうとしたのです。
カルメンは生活のためにヴィダル大尉と再婚し、妊娠します。内戦が起こっている状況下で女性が子どもと生きていくためには、お金を持つ男性に頼るしかありません。一見すると浅はかな行為に見えるかもしれませんが、過酷な世界で生きるための術なのです。
生きるためには仕方ないことだったかもしれませんが、それによってオフェリアは自身の居場所を無くしてしまいました。そのような状況を受け入れることができなくなり、新しい世界を作り出しました。そして、辛く厳しい現実から目をそらそうとしたのでしょう。
フロイトという精神科医は、私たち人間の心の中には無意識という領域があると提唱しています。無意識の中には欲求が押し込められていて、その欲求を恐れる気持ちとの間に生まれる葛藤を意識できない状態になると精神的な部分に問題が生まれると言っています。また分析心理学の創始者であるユングは、フロイトが提唱する無意識を個人的無意識と呼んでいて、それよりも深い部分には普遍的無意識が存在していると提唱しているのです。
普遍的無意識というのは、パンズ・ラビリンスに出てくるおとぎ話のような世界観で、だれもが何となく知っていて、容易に想像できるものがしまわれている場所です。そしてそれは、肯定的な部分であり、物事を創造するための力を生み出す場所だとユングは考えました。その考えを踏まえてみると、オフェリアが生み出した世界は普遍的無意識の中で生まれたものだと言えます。
【現実ではない世界に依存していく過程】
現実ではない世界に依存していく過程も、パンズ・ラビリンスの見どころの1つだと考えられます。オフェリアが生み出した幻想世界の中でメインとなっているのがパンというキャラクターです。パンは、オフェリアのしもべでありながら、数々の試練を与える指導者という役割も担っています。
作中でパンの見た目はどんどんと生々しいものへと変化していきます。それは、オフェリアの幻想に対する依存度が高まっていることの表れだと考えられるでしょう。現実世界がオフェリアにとってかなり辛いものであるため、逃避したという欲求が高まっているという見方もできます。
現実世界では母親の状態がどんどん悪くなっていき、オフェリアが置かれている立場は悪くなる一方です。初めの頃、パンは迷宮にいました。しかし、それが迷宮以外の場所にも表れるようになっていったのは、現実以外の世界への依存度がかなり高まった状態だったと得るのです。
【ヴィダル大尉の存在】
ヴィダル大尉は、作中でかなり残忍な人物として描かれています。レジスタンスを躊躇いなく殺したり、自分自身に反抗する人は誰であれ容赦なく殺したりしています。人を殺すことに対する罪悪感を覚えていないように思える描写も随所にあるため、非道な人間だと感じてしまう人はすくなくありません。
しかし、彼の視点に立って作品を視聴してみると、心の奥底に闇を抱えているのではないかと考えられます。ヴィダル大尉の父親も軍人であり、死ぬ前に時計を壊して“死の時刻”を息子に託しました。それは、勇敢な死の手本にさせたいという思いがあったのです。
そしてラストシーンでは、時計を触りながらレジスタンスに殺されます。自分自身の死を察した時、「いつか息子に伝えてくれ。父が何時に死んだか。」と言い残していることから、父親の死を意識した状態で死ぬことでコンプレックスを克服したいと考えていたのではないかと考察できるでしょう。その描写を踏まえて考えてみると、ヴィダル大尉自身の心にも深い闇があったと読み取れます。
【大木の下にいる巨大なカエルについて】
試練の中でオフェリアは、大木の下にいる巨大なカエルに出会います。そのカエルは、オフェリアが抱えている恐怖を展化したものだと考えられています。なぜかというと、巨大なカエルは木の根元で虫を貪り、大木を枯らしているからです。
大木を枯らしていることとオフェリアが抱えている恐怖にどのような共通点があるのかよく分からないという人もいるでしょう。そこで注目したのが、カエルに出会う前に交わされたオフェリアとカルメンのやりとりです。オフェリアがカルメンに「なぜ再婚したのか」と問いかけたとき、「1人は寂しいから」と答えました。それに対してオフェリアは「いつも私が一緒にいるのに」と言います。
このやりとりから、母親であるカルメンがほんとに必要としていないのは自分自身ではなく、亡くなった父親の代わりになる男性なのだとオフェリアは痛感するのです。その男性との間には赤ちゃんを身ごもっているため、生まれたらさらに必要ない存在だと疎まれてしまうとオフェリアは感じます。オフェリアのように感受性が強い子どもは、より多くのことを汲み取ってしまうので自分自身が愛されなくなるという不安や恐怖をかなり強く感じたと考察できます。
「パンズ・ラビリンス」は配信されているのか?
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パンズ・ラビリンスの考察まとめ
第79回アカデミー賞でアカデミー撮影賞やアカデミー美術賞、アカデミーメイクアップ賞などを受賞するという実績を持つパンズ・ラビリンスは、トラウマになる作品として知られています。トラウマになってしまうのは、キャラクターの癖が強いことが大きな理由だと言えるでしょう。
パンズ・ラビリンスは、オフェリアが生み出した空想の世界が描かれています。オフェリアが生まれた時代背景や家族の状況などが現実とは異なる世界を生み出しました。その世界の中でオフェリアは自分自身が依存できる世界を作り出し、徐々に依存度が高まっていく様子が描かれています。
辛く苦しい状況になると誰もが逃げ出したいと思うものです。その気持ちをオフェリアは自分の中で具現化し、亡くなった後は空想の世界で生き続けることになりました。そんな結末をハッピーエンドだと感じる人もいれば、バッドエンドだと感じる人もいるのは、観る人の気持ちがどこに向いているかが重要な要素になっていると考えられます。
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