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【ネタバレあり】「千と千尋の神隠し」に隠された謎とメッセージを徹底考察

エンタミート編集部

更新日:2024-3-30

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千と千尋の神隠しは、2001年に公開された独創的な世界感が特徴のアニメ映画です。監督を務めるのは宮崎駿で、世界中から愛され続けているジブリの代表作とも言えます。

 

日本歴代興行収入第1位を何年もキープし続けていたことでも有名で、総興行収入は300億円以上となっています。第75回アカデミー賞長編アニメーション部門賞や第52回ベルリン国際映画祭の金熊賞、ニューヨーク映画批評家協会賞など数々の賞を受賞しています。

 

そんな千と千尋の神隠しですが、物語の中に謎めいたシーンがあったり、裏設定がささやかれていたりします。今回は、千と千尋の神隠しに関する疑問や裏設定について徹底的に考察していきます。千と千尋の神隠しを見たことがある人も楽しめる内容になっているので、ぜひ最後までご覧ください。

 

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「千と千尋の神隠し」はどんなお話?気になるあらすじを紹介!

 

 

千と千尋の神隠しは、主人公である荻野千尋が、両親を助けるために物語の舞台である油屋で働きながら成長していくお話です。千尋と両親は、引越しのため車にたくさんの荷物を乗せ新居に向かっているところからスタートします。千尋は、仲が良かった友人と離れ離れになって転校することに現在も不服の様子です。

 

道中、運転していた千尋の父親は道に迷ってしまいます。その途中、千尋は不思議な銅像のようなものを見つけるのでした。しばらく進むと道は行き止まりになっており、それ以上先は徒歩でトンネルをくぐる必要がありました。

 

母親や千尋は道を戻って早く行こうと促しますが、父親は興味本位で先に進むことにします。トンネルを抜けると、廃墟のような建物が点在しており、美味しそうな食べ物の匂いがしてきます。匂いに誘われ進んでいくと、飲食店が軒を連ねているものの、人が誰もいません。

 

しかし、引き止める千尋をよそに、両親は後でお金を払えば問題ないからと勝手に食べ始めてしまうのでした。両親はご馳走を目の前にして食べるのに夢中の様子で、千尋は見ず知らずの場所に来てしまったことに困りながら散策します。すると、千尋の目の前に一際大きな建物が現れ、「油屋」と書かれています。

 

そのとき、突然現れた少年に「川の向こうへ走れ」と言われ急いで両親の元へ戻ります。しかし、飲食店で食事をしていたはずの両親は巨大な豚へと変貌していたのでした。混乱する千尋でしたが、徐々に建物の明かりが灯り始めます。

 

すると、不思議で怪しい見たこともない生き物が集まり始めます。川のほとりで怯えていると、先ほどの少年が姿を現し、この世界のことや人間が生きるための厳しい掟を教えてくれます。

 

この世界では人間が嫌われており、生きるためには油屋で働くしかなかったのです。そして千尋は両親を助けるべく、ハクという少年に言われるがまま油屋で働き始めるのでした。

 

 

「千と千尋の神隠し」の登場人物を紹介

 

 

ここでは、千と千尋の神隠しに登場するキャラクターや声優について見ていきましょう。千と千尋の神隠しには、個性あふれる魅力的なキャラクターが多く存在します。今回は、特に深い関係があるキャラクターをピックアップしていきます。

 

荻野千尋(千)/柊瑠美

 

主人公の荻野千尋は、不器用で臆病な10歳の少女です。豚にされてしまった両親を人間に戻すべく、物語の舞台となる油屋で働くことになります。声優を務めるのは「崖の上のポニョ」で婦人役、「コクリコ坂から」で広小路幸子役を演じた柊瑠美さんです。

 

千尋の両親(荻野明夫・荻野優子)/内藤剛志・沢口靖子

 

がっしりとしていて探求心が豊かな千尋の父・荻野明夫の声優を務めるのは「ゲド戦記」でハジア売り、「コクリコ坂から」で小野寺善雄役を演じた内藤剛志さんです。千尋にのみそっけない態度を取る千尋の母・荻野優子の声優を務めるのはテレビドラマ「科捜研の女」や「鉄道捜査官」でも活躍している沢口靖子さんです。

 

ハク/入野自由

 

迷い込んだ千尋を助けた謎の少年です。人間の姿と龍の姿を持ち、湯婆婆の弟子として油屋で働いています。声優を務めるのは「ハイキュー!!」で菅原孝支、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」で宿海仁太を演じた入野自由さんです。

 

湯婆婆/夏木マリ

 

千尋が働くことになる油屋の経営者であり、従業員から恐れられるほどの魔力を持った魔女です。声優を務めるのは朝ドラ「おかえりモネ」の新田サヤカや「モアナと伝説の海」でタラおばちゃんを演じた夏木マリさんです。

 

釜爺/菅原文太

 

油屋のボイラー室の番人である釜爺は、溢れ出る優しさや面倒見の良さが魅力である老人です。声優を務めるのは「ゲド戦記」でハイタカ、「おおかみこどもの雨と雪」で韮崎を演じた菅原文太さんです。

 

リン/玉井夕海

 

千尋の世話を焼いてくれる従業員の1人で、さばさばしていて飾らない性格の女の子です。声優を務めるのは数々の舞台で活躍する玉井夕海さんです。

 

カオナシ/中村彰男

 

千尋の優しさに感激し、千尋に付きまとうようになった影のようなキャラクターです。声優を務めるのは「交響詩篇エウレカセブン」でマシュー役を演じた中村彰男さんです。

 

銭婆/夏木マリ

 

銭婆は湯婆婆の双子の姉で、湯婆婆よりも強力な魔力を持っていると言われています。声優を務めるのは同作品で湯婆婆を演じる夏木マリさんです。

 

 

【ネタバレあり】「千と千尋の神隠し」のストーリー

 

 

次に、千と千尋の神隠しのストーリーを簡単にご紹介していきます。ここからはネタバレを含みますので、未視聴の人はご注意ください。

 

ハクとの出会い

 

千尋は料理を頬張る両親をしり目に、街を見て回っているところでハクと出会います。ハクは出会ってすぐに「ここにいてはいけない」と伝え、千尋を追い返すのです。

 

追い返された千尋は両親の元へ向かいますが、そこには変わり果てた両親の姿がありました。なんと、両親は豚の姿になってしまっていたのです。その後、パニックになった千尋の元へ再びハクが姿を現します。

 

ハクは、釜爺のところへ行って「働かせてください」とお願いするよう促します。働かなければ、人間は豚にされて殺されてしまうからです。ボイラー室にいる釜爺は、千尋の頼みに困惑しながらも、タイミングよくご飯を運んできたリンに湯婆婆のところへ連れて行くよう促します。

湯婆婆との対面!油屋で働くことに

 

油屋で働くことで大変な事態を避けられると知った千尋は、湯婆婆の元へ行き、働かせてほしいと懇願します。無断でこの世界に足を踏み入れ、さらには勝手に食事まで始めた両親を

怒っていた湯婆婆ですが、「働かせてください」としか言わない千尋に根負けし、契約と称して千尋の名前を「千」に変えてしまいます。

 

そして、千尋はリンに油屋での仕事を教わっていくのでした。仕事をしながら奮闘する毎日でしたが、徐々に不可解なことが起こり始めます。湯婆婆に名を変えられてしまったため、本当の名前を忘れてしまう千尋でしたが、ハクと密会することで本来の名前を思い出すのです。

 

招かれざる客!オクサレ様とカオナシ

 

働き始めて間もない千尋は、客とそうでない人との区別が付かないため、客ではないカオナシを店内に引き入れてしまいます。その後千尋が担当するオクサレ様ですが、実は名高い河の神様だったことが判明します。千尋の接客に満足した神様は、多くの砂金と団子を置いて去っていくのです。

 

傷を負った白竜

 

仕事の合間に休んでいた千尋は、傷だらけで弱った白竜を目撃します。なぜかその白竜がハクであることを察知した千尋は、「こっちよ」と叫ぶのでした。ハクは銭婆から盗んだハンコが体内にあることが原因で苦しんでいるようでした。

 

そこで千尋は、オクサレ様からもらった団子を白竜姿のハクに食べさせ、ハンコを吐き出させたのです。千尋はそのハンコ返し、ハクのことを許してもらおうと銭婆へ会いに行くことを決意します。

 

銭婆のもとへ

 

銭婆の元へ行こうとした千尋でしたが、千尋が招き入れてしまったカオナシが油屋で大暴れしているため、説得に向かいます。最終的にオクサレ様からもらった団子をカオナシに食べさせて事態は鎮静します。

 

その後、坊と湯バード、落ち着きを取り戻したカオナシを引き連れて銭婆の元へ出発しました。無事にハンコを返すことができ、銭婆からプレゼントを受け取ります。

 

千尋が思い出したハクの本当の名前は

 

銭婆の家から戻ろうとすると、白竜の姿になったハクが目の前に現れます。千尋はハクの背中に乗り、大空を飛んでいる時に、過去にハクと出会っていたことを思い出します。

 

実は、ハクの本当の姿は、千尋が幼いころに溺れかけた「琥珀川」の神様だったのです。本当の名前を思い出したハクは、白竜の姿から人の姿へ戻っていきます。

 

元の世界へ

 

千尋は湯婆婆から課せられた最後の試練を乗り越え、元の世界へ帰る自由を手に入れます。しかし、ハクと一緒に変えることは叶いません。

 

2人は、またきっと会えるという言葉を交わし、千尋はトンネルに向かって歩いていきます。元の姿に戻った両親と再会し、物語は終わりを迎えます。

 

h2:「千と千尋の神隠し」の気になる疑問を徹底考察!

 

 

千と千尋の神隠しには、たくさんの印象的なシーンが存在します。何度も見たことがある人でも、なぜそうなったの?と疑問に感じる場面が多いのではないでしょうか。ここからは、千と千尋の神隠しで気になってしまうシーンについて徹底考察していきます。

 

千尋の母親はなんであんなに冷たいの?

 

千尋の母親は出番が少ないながらも、冒頭の千尋に対する冷淡な態度に衝撃を受ける人が多いです。しかし、あのシーンには「親の正しい存在の仕方は1つではない」というメッセージが込められているのではないかと言われています。

 

この作品には、他人に厳しい湯婆婆が唯一甘やかしている「坊」という息子が登場します。湯婆婆に「外はばい菌だらけだ」を教わり、引きこもっていた坊ですが、千と出会い、銭婆による魔法でネズミの姿に変えられてしまうのです。

 

ネズミの姿になった坊は、千と旅に出たことをきっかけにどんどん自立していきます。

つまり坊は、親からの呪縛から解き放たれたことで1人の人として成長することができたのです。一方で千尋は、両親の元へ帰るために様々な苦難を乗り越えながら成長していきます。

 

臆病だった千尋は子育ての目標となる「自立」を達成し、結果的にそっけない母の元へ帰っていきました。どんなに冷たい態度を取っていたとしても、最終的な子育ての目標となる子どもの自立が実現すれば、子育ては成功と言えます。

 

宮崎駿監督は、湯婆婆と千尋の母親を対比させることで、親の在り方を考えるきっかけにしようとしたのではないでしょうか。最終的に子どもが帰る場所は母親であるというメッセージも感じさせます。

 

h3:なぜ千尋は豚の集団に両親がいないことに気付けたの?

 

湯婆婆は現実世界へ帰りたいという千尋に向けて、「豚の集団から両親を見つけ出せたら解放する」と言います。どの豚にも特徴がなく見分けるのは困難であるはずが、千尋は豚の集団の中に両親がいないことを見抜くのです。

 

このシーンについて、宮崎駿監督は「これだけ経験を経てきた千尋は両親がいないことがわかる。なぜわかるか、でもわかるのが人生ですよ。」と語っています。この言葉から考察できるのは、「千尋は様々な試練を乗り越えて成長し、経験を積んだことによって本質を見抜く力が手に入った」ということです。

 

現に、理屈では説明できない特別な力は現実世界にも存在しています。

 

なぜ「行き」と「帰り」ではトンネルが違う?

 

物語の序盤、トンネルに入っていくシーンで千尋の父が「なんだ、モルタル製か」と発言していますが、終盤で描かれたトンネルは石造りに変わっていました。行きと帰りでトンネルのデザインが変わった原因は、湯婆婆の魔法によるものだったのではないでしょうか。

 

行きは人間を異世界に導くために魔法をかかっていて、帰りはその魔法が溶けたため、本来の石造りのトンネルになっていたと考えられます。

 

ハクが千尋に言った「振り返るな」の意味とは?

 

千尋が現実世界へ戻っていくシーンで、ハクは「振り返ってはいけない」と念を押します。千尋とハクはお互いが惹かれ合っているものの、ハクからは千尋に対して「ここにいてほしくない」という思いも感じられます。ハクがいる世界は千尋にとって異世界であり、千尋が生きていくべき場所は現実世界だと信じているからでしょう。

 

しかし2人はどこかで「ここで別れたらもう会うことはない」と感じ取っているようにも見えます。そんな時に放った「振り返ってはいけない」という言葉には、自分と過ごした日々に囚われず、前を向いて生きていってほしいという思いが込められていると考えられるのではないでしょうか。

 

また、ハクは湯婆婆から「八つ裂きにされる覚悟はあるのかい?」と問われ、「覚悟があります」と答えているシーンがあります。そのやりとりから、振り返るとハクが八つ裂きにされているのを目の当たりにしてしまうため、振り返るなと念を押したという考察もできます。

 

ハクが千尋のために犠牲になれるほど好意を持っているというのが分かるシーンでもあるのです。

 

不思議な世界に迷い込んでからどのくらいの時間が経過していた?

 

物語の中で表現された日数だけを見ると、3泊4日となります。しかし、現実世界に戻ってきたシーンで車がホコリで覆われていたり、周りの草木が異様に成長していたりする点から考えると、3泊4日は短すぎるのではないかと推測できます。戻ってきた後、車のバッテリーが上がっていなかったことから、長くても半年程度だったのではないでしょうか。

 

もう少し詳しく見ていくと、異世界では大潮1回、小潮2回が描かれているため、異世界で過ごしたのは最低1週間ほどなのではないかと考えられます。潮の満ち引きは、月の満ち欠けと深い関係があり、満月や新月の日には大潮に、上弦の月や下弦の月の日には小潮になります。

 

月齢カレンダーなどを見ると分かる通り、満月や新月から上弦の月や下弦の月になるまで、約1週間程度の期間を要します。3泊4日では大潮1回、小潮2回が起こることは現実世界ではありえないことです。

 

しかし、異世界での出来事であるため、現実世界の常識が当てはまらない可能性ももちろんあります。異世界では数年経っているのに対し、現実世界では数日しか経っていないという考え方もできるでしょう。

 

なぜ千尋だけ現実世界に戻れたの?

 

物語を見ていくと、ハク自身も本来は現実世界で生きていたことが分かります。しかし、千尋はなぜかハクと共に現実世界へ戻ることができなかったのです。

 

千尋だけが現実世界に戻れた理由としては、湯婆婆との契約の有無が関係していると考えられます。千尋は確かに湯婆婆との契約を交わしましたが、契約の際に書いた自分の名前を間違えていたことによって契約ができていなかったのではないかと推測できます。

 

自分の名前を間違えて書いてしまったのは、震え上がるほど怖い思いをして緊張していたからではないでしょうか。一方で、千尋より前に異世界に住んでいたハクは、湯婆婆との契約をしっかりと交わしてしまっていたため、現実世界へ戻ることができなかったのかもしれません。

 

 

「千と千尋の神隠し」の裏設定?隠された謎を徹底考察!

 

 

ジブリ作品は、度々裏設定があるのではないか?と考察されています。千と千尋の神隠しも例によって裏設定について気になっている人が多く見られます。ここからは、千と千尋の神隠しに隠された謎や裏設定について考察していきます。

 

海原電鉄の不気味な乗客

 

千尋が銭婆に会いに行くために海原電鉄に乗車する印象的なシーンがあります。車内に数人乗っている黒く透けた人のような生き物の正体については、宮崎駿監督の発言から考察できます。

 

宮崎駿監督は、宮沢賢治のことをリスペクトしており、中でも「銀河鉄道の夜」という作品

を基にして作ったシーンを千と千尋の神隠しに取り入れたかったと語っているのです。銀河鉄道をオマージュしているのであれば、海原鉄道も亡くなった人をあの世に移送するためのものとして描かれている可能性が高いのではないでしょうか。

 

そのように考えた場合、車内の不気味な客は「死者」であり、あの世へ行く途中だったと推測できます。釜爺の「電鉄には帰りがない」「降りる駅を間違えるな」という言葉からも、電鉄に乗ると帰ってこられないような雰囲気を感じるはずです。

 

カオナシの正体

 

カオナシは客として招かれるわけでもなく、従業員として働いているわけでもない空気のような存在です。カオナシが描かれているシーンの中では、千尋に自分自身のことを問われても上手く答えられずにいるシーンや、お金を渡して好かれようとする部分が印象的です。

 

そんなカオナシは、自分の存在意義や居場所の作り方が分からず、混乱しているようにも見えます。さらに、他人を飲み込むことで「話せるようになる」という点から、自己主張ができないタイプなのではないかと推測できます。

 

最終的に銭婆の元で働くことになり、居場所を見つけたと嬉しそうにしているカオナシを見てホッとした人は多いのではないでしょうか。私たちが生きる現実世界でも、「自分自身のことが分からない、でも誰かに必要とされたい」という人はたくさんいるでしょう。

 

現に宮崎駿監督は「カオナシなんて周りにいっぱいいる」「カオナシはみんなの中にもいる」と語っています。これらのことから、カオナシの正体は「多くの人々の気持ちを表現したキャラクター」だと考えられます。

 

リンの正体は白狐?

 

公式パンフレットには、リンの正体は人間だと明記されています。一方で、スタジオジブリが出版している「The art of Spirited away―千と千尋の神隠し」では、リンのラフデザインに対して「白狐」という文字が書かれているのです。

 

たしかに、釜爺から「千尋を湯婆婆のところへ連れて行ってくれ」と頼まれたリンは、イモリの黒焼きで手を打っていました。人間であれば、イモリの黒焼きで喜ぶとは考えづらいため、白狐である説も捨てきれません。

 

また、白狐は「幸運の証」や「徳の高い存在」と言われているため、リンを「白狐のような存在」として描きたかったとも考えられます。油屋で働くことになった千尋をいち早く受け入れ、どんな時も味方で居てくれたリンは、白狐のような存在であったと言えるのではないでしょうか。
 

ハクの正体とその後

 

ハクは千尋が引っ越す前の街に流れていた「琥珀川」という川の神様です。本名は「ニギハヤミコハクヌシ」ですが、湯婆婆との契約で名前を奪われてしまい、ハクと名乗っていたのです。湯婆婆との契約は、本当の名前を忘れることで永遠となってしまいます。

 

しかし、千尋が琥珀川でハクに助けてもらったことを思い出したことがきっかけで、ハクも自分の名前を取り戻しました。名前を思い出したことで現実世界に戻れるようになったハクは、終盤で「元の世界に私も戻るよ」と発言しています。

 

一方で、先ほどもご紹介した通り「湯婆婆に八つ裂きにされてしまった」という説もあります。千尋とハクが別れるシーンで、千尋が「またどこかで会える?」と聞き、ハクは「きっと」と答えます。「絶対」などの強い言葉ではなかったという点から、ハクは八つ裂きにされる運命を受け入れていたのではないかと考えることもできるのです。

 

また、2人の手が離れるシーンでは、ハクの手だけが名残惜しそうに見えることから、もう会えないような雰囲気が感じ取れます。さらに、作中では何度か「この世のルールは絶対」というニュアンスの発言があります。湯婆婆や銭婆の力をもってしても、異世界のルールを覆すことは不可能であるため、八つ裂きは逃れられなかったのではないかと推測できるでしょう。

 

髪留めの意味

 

千尋が銭婆から受け取った髪留めは、カオナシと坊、そして湯バードと銭婆が作ったものです。物語の終盤、千尋が振り返りそうになるタイミングで髪留めが光るシーンがあります。千尋はハクから振り返ってはいけないと念を押されていました。

 

銭婆は、千尋が振り返りそうになることを想定していたため、髪留めに小さな魔法をかけていたのではないでしょうか。また、宮崎駿監督は髪留めについて「異世界で起こったことを夢物語として終わらせたくなかった」と語っていることから、思い出として髪留めを描いたとも推測できます。

 

物語の舞台油屋はなぜ風俗がモデルなのか

 

千尋やリンの役職は、江戸時代の湯屋にも存在していた「湯女」というものです。湯女の仕事内容は、客の入浴の手伝いや売春行為などでした。

 

しかし、宮崎駿監督はそのような部分を描きたかったわけではなく、一昔前の日本の労働環境を表現したかったと言います。例えば従業員が1つの部屋で雑魚寝しているシーンなどは、少し前の日本そのものだったのです。

 

 

「千と千尋の神隠し」を通して宮崎駿監督が伝えたかったこととは

 

千と千尋の神隠しは、千尋が名前を取り戻す物語ですが、実際に宮崎駿監督は何を伝えたかったのでしょうか。宮崎駿監督の発言などから2つの意味を考察していきます。

 

生きることは働くこと

 

まず1つ目に宮崎駿監督が伝えたかったことは、「生きることは働くこと」というメッセージです。宮崎駿監督にとって、生きる意味は「映画を作ること」でしょう。つまり、働くことが生きる意味となっているのです。

 

もちろん、誰もが自分の好きなことを仕事にできるわけではありません。しかし宮崎駿監督は、どのような仕事も「自分や誰かのためになっている」と考えているのではないでしょうか。

 

ハクはもちろん、カオナシや坊なども千尋が油屋で働かなければ、永遠に本当の自分を見つけることができませんでした。これらのことから、自分が働くことによって誰かに良い影響を与えているはずだと考えられるのではないでしょうか。

 

誰かのためになっているのであれば、働く自分に誇りが持てますし、働くこと自体が生きる意味に成りえるはずです。

 

「大丈夫、あなたはちゃんとやっていける」

 

宮崎駿監督はこの物語を通して、「大丈夫、あなたはちゃんとやっていける」と伝えたかったと語っています。両親を豚にされてしまい、絶望の中にいる社会経験のない千尋でも、働くことで居場所を獲得し、物語の中で大きく成長していきました。

 

そんな千尋から勇気や希望をもらった人は多いのではないでしょうか。宮崎駿監督はその気持ちを持ってほしくて、この作品を手掛けたのかもしれません。

 

千と千尋の神隠しまとめ

 

 

千と千尋の神隠しは、10歳の女の子が働きながら成長していく過程が細かく描かれた作品です。非常にシンプルな話でありながら、所々に意味深な表現があったり考えさせられるシーンがあったりする点を考えると、ジブリ作品を愛している人が多いのも納得です。

 

今回、多くのシーンや表現を考察してきましたが、明確になっていない部分も多いです。宮崎駿監督も多く語る必要はないと考えているようなので、今後も明らかになることはないでしょう。

 

しかし、明確になってないからこそ様々な考察ができ、自分なりの終着点を見出すことができる点も千と千尋の神隠しの醍醐味と言えるのではないでしょうか。気になる点や疑問に感じたシーンなどは、ぜひ自分なりの考察をして楽しんでみてください。

 

※本ページの情報は2024年3月時点のものです。最新の配信状況は各動画配信サービスサイトにてご確認ください。

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