海獣の子供のあらすじを解説
自分自身の心の中を言葉にしてさらけ出すことが苦手な中学生の安海琉花は、夏休みの初日に部活の仲間と問題を起こしてしまいます。その頃、母親とも距離を置いていた琉花は、学校でも家でも居場所を失うことになりました。そんなある日、父親が働いている水族館へ行き、水槽の中で魚と一緒に泳ぐ“海”と“空”に出会います。
“海”と“空”との出会いを機に、これまでは見たことがなかった世界に足を踏み入れることになりました。地球上では不思議な出来事が起こるようにもなっていきました。
夜には光り輝く彗星が海に落ち、海に生息している生き物は日本へと移動し始めたのです。そして、大きなザトウクジラが現れ、“歌”を歌って海に生息している生き物に祭りがもう少しで始まることを伝えてきました。
そんな中、“海”と“空”が超常現象と関係していることが判明し、その力を利用しようと考える人も現れます。利用しようと考える人から海洋学者であるジムやアングラードが守ろうとします。
それぞれが持つ思惑が交差していく中で、生命が持つ謎を解き明かせるのでしょうか。いったい“海”と“空”は何者なのでしょうか。
海獣の子供の登場人物と声優について
海獣の子供には魅力的なキャラクターが登場します。次は、登場人物とその声優についてご紹介します。
安海琉花(CV:芦田愛菜)
安海琉花は、自分自身の心の内を言葉にすること、人と接することが苦手な中学生です。運動神経は高い方で、部活はハンドボール部に属しています。とあるトラブルから部活動が中止になった夏休みに、海と空に出会って事件に巻き込まれることになってしまいます。
特技は、水中でも普段のように物にピントを合わせられるということです。空が消えてしまう直前に、隕石を託されて体の中に宿します。
声優は、子役の頃から大きな活躍を見せている芦田愛菜さんです。アニメの声優としては、吹き替え版『怪盗グルー』のアグネス役、劇場版ポケットモンスター『みんなの物語』のラルゴ役、映画『えんとつ町のプペル』のルビッチ役などを複数の作品に出演しています。女優としての活躍ももちろんですが、葺き替え声優やアニメ声優として活躍する場面が増えています。
海(CV:石橋陽彩)
海は、琉花が東京湾で出会った不思議な雰囲気を持つ少年です。泳ぎが得意で、魚たちと交流できるという能力を持っています。乾燥するのが苦手で、水中にいた方が元気に行動できるという特徴を持つ人物でもあります。
産まれてから2歳か3歳くらいまで兄である空と一緒にジュゴンの群れの中で暮らしていました。デデとジム・キューザックに保護されました。
声優は、石橋陽彩さんが務めています。子役俳優や歌手として活躍しています。吹き替えは、『リメンバー・ミー』のミゲル役を務めたという経験を持っていますが、日本のアニメはこの作品が初めての出演です。東宝×ホリプロ「フランケンシュタイン」や演劇実験室◎万有引力「身毒丸」といった舞台で活躍した実績も有しています。
空(CV:浦上晟周(うらがみせいしゅう))
空は、海の双子の兄で、乾燥を苦手としているという点は弟の海と同様です。ジムのサーフィンの先生でもあります。海とは違って白い肌が特徴的です。
海を守るために、ジムやアングラードに自分自身の身体を調べるようにお願いします。小笠原沖では隕石を入手していて、それを琉花に渡しています。
声優は、浦上晟周さんが務めています。浦上晟周さんは、俳優やタレントとして活躍している人物で、声優としての仕事はこの作品が初めてです。テレビドラマは『ここは今から倫理です。』や『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』などに出演していて、映画は『僕に、会いたかった』や『HOKUSAI』などに出演しています。
ジム・キューザック(CV:田中泯(たなかみん))
ジム・キューザックは、水族館で働いている科学者です。身体には、これまで旅をしてきた地域のタトゥーが彫られています。若かりし頃に、空に似ている「海の子供」が自分自身の過失によって命を失ってしまった経験があり、それがトラウマになっています。
空や海について調べながら、「海の子供」や世界の元だと言われている「原人」の謎を追っている人物です。
声優は、田中泯が務めています。俳優として知られていますが、本業はダンサーです。アニメの吹き替えは、『鉄コン筋クリート』のネズミ(鈴木)役、『ちいさな英雄-カニとタマゴと透明人間-「透明人間」』の盲目の男役を演じたという経験を持っています。
アングラード(CV:森崎ウィン)
アングラードは、若い天才海洋学者です。以前は、ジムの相棒でした。中世的な外見が特徴の人物です。
今は、ジムとは違うアプローチ方法で海の謎に迫っています。意味深な発言が多いキャラクターでもあります。
アングラードの声優は森崎ウィンさんです。歌手や俳優として活躍しています。吹き替えをするのは今作が初めての挑戦ですが、『僕と彼女とラリーと 』や『闇金ウシジマくん』などの映画、『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年のこと』や『桜の塔』などのテレビドラマでは活躍の場が広がっています。
デデ(CV:富司純子)
デデは、占い師という側面と科学者という側面を持つ老婆です。海の何でも屋を自称しています。ジムとは旧知の仲で、いなくなってしまった琉花たちを探すために船を出します。
声優は、富司純子さんです。富司純子さんの本業は女優ですが、『サマーウォーズ』の陣内栄役を務めた経験があります。
安海正明(CV:稲垣吾郎)
安海正明は、琉花の父親です。水族館で働いていて、ジムと一緒に研究をしています。
声優は稲垣吾郎さんが務めています。劇場版のワンピースやサザエさんなどに特別出演した経験がありますが、声優としてメインキャストに起用されたことはありません。
安海加奈子(CV:蒼井優)
安海加奈子は、琉花の母親です。夫の正明とは別居していて、家でずっとビールを飲んでいます。海女の家系に生まれたのですが、後継者になることを嫌って両親とは離縁しています。
声優は、蒼井優さんです。蒼井優さんはこれまでに、様々な作品に声優として参加したという実績を持っています。
海獣の子供に関する考察
海獣の子供の作中には、意味深な描写があちこちに盛り込まれています。それらについて考察している人も少なくありません。続いては、ザトウクジラの『歌』やパンスペルミア説、宇宙と私たちの体、海の幽霊、宗教との関連性、誕生祭について考察していきます。
ザトウクジラの『歌』について
ザトウクジラの『歌』は、海獣の子供がどのような作品なのかを知るために、重要な要素だと考えられています。ザトウクジラは仲間同士でコミュニケーションをとるため、海の中で歌を歌います。その歌は、何キロも先にいる仲間にも伝わるのです。
作中に登場する海と空は、海の中にいる生き物と言葉以外のツールでコミュニケーションをとることができています。そして琉花も海や空と同じくザトウクジラの歌を聴くことができました。これは、海獣の子供のキャッチコピー「一番大切な約束は言葉では交わさない。」につながる重要な要素だと考えられます。
パンスペルミア説について
パンスペルミア説も、海獣の子供について理解を深めるための重要な要素だと言われています。しかし、作中ではあまり深堀されていないので何のことかよく分からないという人も多いはずです。
パンスペルミア説というのは、生命のはじまりに関する科学的な仮説のことです。生命は宇宙にたくさん存在していて、地球で生きている生命は他の天体で生まれた微生物が地球に到達し、進化を遂げたと考えられています。
作中には、海がある星=子宮、隕石=精子だという表現があります。つまり、卵子の役割を持っている惑星に精子の役割を持つ隕石が入り込むことによって、今地球上にあるような生命が誕生するという考え方です。このことから、生命の誕生祭にも深いかかわりがあると考察できます。
宇宙と私たちの体について
海と空は、体が光る発光現象が起こったり、ジュゴンに育てられたという経緯から海の中で長く過ごせたりします。さらに、普通の人間と比べると極端に乾燥に弱いという特徴を持っています。しかし、いくら調べてもその理由は明らかになりません。
なぜかというと、海と空は地球に暮らしている人間とは別物だという可能性が考えられるからです。海から来た、宇宙から来た、他の惑星から来たなど色々な考察ができます。そのような考察をするのが当たり前のような感じがしますが、ジムは神話の中に登場する原人や神と関りがあるのではないかと考えます。
謎は解き明かされていませんが、海や空が神だとしたら、光を放って消えてしまったことも辻褄が合うように思える人も多いはずです。神は神話の世界で私たちと同じように肉体を持っているような描写になっていることが多いため、海や空のように人間と同じ体を持って人間界に現れても不思議ではないと考えられます。
海の幽霊について
海の幽霊は、海獣の子供の主題歌のタイトルにもなっています。そのため、作品にも深い関わりがあると考えられます。
光を放って海の生き物が1ヶ所に集まり、光となって消えていくのです。このような現象は、海や空をきっかけにしていろいろな場所で起こるようになりました。その現象を海や空は、ジムと共に世界を巡りながら追いかけています。
発光現象のことを、海や空、ジムは海の幽霊と呼びました。海の幽霊には、世界のどこかで生活している誰かの記憶が含まれているのだと考察されています。
宗教との関連性について
海獣の子供は、バリヒンドゥーとの関係があると考察されています。その理由には、バリヒンドゥーの儀式で欠かすことができない影絵「ワヤン・クリ」が原作者のTwitterに投稿された原画や原作に出てきたという点が挙げられます。
影絵というと日本では子どもに見せるものという印象が強いです。しかし、ワヤン・クリは結婚式などの儀礼に使うとても神聖なものです。影が映っている観客側が現世や現実世界、演者側が異世界やあの世という立ち位置になっています。
日本の影絵は観客側から見ることが前提ですが、ワヤン・クリは演者側から見ても世界が成り立ちます。これを空間移動と考えると、海や空が行っていたことに当てはまるのです。
それだけではなく、隕石=精子、地球=子宮という考え方もワヤン・クリの中にある宇宙創造に関する話から来ていると言われています。作中では、アングラードが宇宙創造に関して語っています。
これらの要素を踏まえて考えてみると、海獣の子供はバリヒンドゥーと深いつながりがあると言えるのです。
誕生祭について
海獣の子供に出てくる誕生祭は、蛙の詩人として知られている草野心平さんが手掛けた「誕生祭」という詩から着想を得たと原作者は語っています。「誕生祭」は、蛙の卵からおたまじゃくしが孵ったことの喜びを表現したものです。ここで、実はバリとの関係性を見出すことができます。
作中に出てくるデデは、アイヌのムックリに似た口琴を鳴らします。アイヌのルーツがなさそうなデデですが、実は貼りにもゲンゴンと呼ばれる口琴があるのです。元になった詩には「ぎやわろつぎやわろつぎやわろろろりつ」という言葉がありますが、これをバリ人は口琴で奏でます。
蛙は、ガムランの銅鼓にも描かれている生き物です。豊穣や再生の象徴として蛙が描かれています。このことから、蛙というキーワードがバリと海獣の子供をつなげていると考えられます。
この関係性はとても不思議です。しかし、その関連性が海獣の子供の大きなテーマである“つながる”について考えるきっかけになると考察することもできます。
また、最後のシーンで琉花が隕石を食べます。それについて疑問を感じた人もいるはずです。海獣の子供における隕石は、それ自体が記憶を示していて、記憶を混ぜるシンボルになっています。
空や海、琉花、アングラードが料理をして魚などを食べたり、空が発行して水中の生き物に食べられたりといった描写も作中にあります。食事は生きるためのものであり、食べられる側は死んでしまうのは当たり前のことです。しかし死んでしまったとしても、消えるのではなく食べた側の身体に混ざり合います。
つまり、言葉にしなかったとしてもさまざまな生命が形を変え、あらゆる場所に潜んでいるということを揶揄している描写だと考えられます。したがって、琉花は誕生祭でとても大きな記憶フォルダーを垣間見、隕石を口にすることで体の中にその記憶を混ぜ合わせたと言えるのです。これも、言葉にとらわれることなく、音や形などの感覚を通したコミュニケーションを表していると考察できます。
海獣の子供の評判は?
海獣の子供に限ったことではありませんが、映画は観る人によっていろいろな感想を持つものです。つまらないと感じた人もいれば、怖いと感じた人もいます。もちろん面白いと感じた人もいるので、どのような感想を持った人がいるのかピックアップしながら紹介していきます。
つまらないと感じた人の感想
まずは、つまらないと感じた人の口コミや評判から紹介します。
海獣の子供は、つまらないというよりも理解ができないという感想を持つ人が多く見られます。また、1度目ではつまらないとかわけがわからないと感じても、2回目は水族館に行くようなノリで見ると良かったというツイートもありました。人によっては、自分の知識が足りないことによってつまらなく感じたのか、そもそも作品自体が微妙だったのか分からないという声もあがっていることから、それに共感できる人もいると考えられます。
海獣の子供は、私たちが想像するような分かりやすい起承転結がないという点もつまらないと感じる要因の1つかもしれません。作品のテーマにもあるように、言葉だけで理解しようとしてはいけない作品だと考える人がいるのも頷けます。想像するような展開にならないだけではなく、どことなく怪しさを感じてしまうという点も、つまらないと感じている要因の1つといっても過言ではないという声もありました。
怖いと感じた人の感想
海獣の子供を観た人の中には、怖いと感じた人もいるようです。続いては、怖いと感じた人の口コミや評判を紹介します。
海獣の子供が怖いと感じた人の多くは、美しすぎる描写に圧倒されたというケースです。私たちの身近にある大きな自然の驚異を感じさせるような描写だからこそ、そのような感想を抱くのだと考えられます。
怖いという感想を抱いた人の中には、このように感じた人もいます。スピリチュアルな要素や宗教的な要素が盛り込まれていることが、このような感想を持つ要因だと考えられます。
この作品は、海が舞台になっています。サイズが大きい海洋生物も登場するため、それに対する恐怖心を感じてしまう人もいるようです。つまり、海洋恐怖症などの人にはハードルが高い作品ということになります。
面白いと感じた人の感想
海獣の子供を観た人の中には、もちろん面白いと感じた人もいます。最後に、面白いと感じた人の感想を紹介します。
海獣の子供は、ストーリーが難解な作品です。しかし、原作者である漫画家の五十嵐大輔さんならではの世界観に引き込まれ、面白さを感じられる作品でもあります。
Twitterで感想を調べてみると、面白いと感じる人もいますが、つまらないとか怖いと感じてしまう人がいることもわかります。怖いと感じてしまう人の中には、あまりにも芸術的過ぎる描写に恐怖を感じてしまう、海洋恐怖症には怖すぎるといった感想を抱いた人もいました。このことから、海獣の子供はリアルな描写で描かれる世界観が魅力の1つだと言えます。
考察に関しても様々な見方ができる作品です。ザトウクジラの『歌』は、超音波を使って遠く離れた仲間とコミュニケーションをとることができるため、「一番大切な約束は言葉では交わさない。」というキャッチコピーの意味を表す重要な役割を担っていると考えられます。その他にも、パンスペルミア説や宇宙と私たちの体、宗教との関連性、誕生祭など考察できる要素が盛り込まれています。
海獣の子供を観たことがないけど興味があるという人は、U-NEXTなどで1度チェックしてみるのがおすすめです。見方を変えて複数回視聴するとより深い部分まで理解できるようになっていきます。