時計じかけのオレンジは、1971年、アメリカで公開されました。アンソニー・パージェスの・社会風刺小説が原作となっており、スタンリー・キューブリック監督の代表作として知られています。スタンリー・キューブリックが織りなす独特な世界観と展開を支持するファンも多く、SF好きには必見の作品です。
今回は、そんな世界を震撼させた時計じかけのオレンジについて解説していきます。映画について知りたい、あのシーンはどういう意味だったのか、など、詳しい内容が知りたい人はぜひ見てみてください。
更新日:2021-8-30
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時計じかけのオレンジは、1971年、アメリカで公開されました。アンソニー・パージェスの・社会風刺小説が原作となっており、スタンリー・キューブリック監督の代表作として知られています。スタンリー・キューブリックが織りなす独特な世界観と展開を支持するファンも多く、SF好きには必見の作品です。
今回は、そんな世界を震撼させた時計じかけのオレンジについて解説していきます。映画について知りたい、あのシーンはどういう意味だったのか、など、詳しい内容が知りたい人はぜひ見てみてください。
主人公であるアレックスが繰り広げるのは、暴力・性・欲望など、思わず目を背きたくなるようなものばかりです。
劇中でも人間が持つ欲や悪、自由を細かく表現されているので、一部からは人間が持っている悪意を誘い出してしまうのではないかといった指摘もされていました。では、映画時計じかけのオレンジのあらすじを詳しく見ていきましょう。
作品の舞台になっているのは、近未来のイギリス・ロンドンです。主人公は15歳の少年であるアレックス・デラージです。
暴力や非行に明け暮れていたアレックス・デラージは、不良グループのリーダーとして毎晩のように残酷な行為を繰り返していました。そんな毎日を過ごしていたある日、不良仲間たちで「リーダーに相応しいのは誰か」を巡って口論になります。
口論の決着はつかず、問題は平行線のままでしたが、その後強盗に向かった先に居合わせた女性に対し、アレックスはむしゃくしゃした気持ちをぶつけてしまいます。いつもの軽い気持ちのつもりでしたが、女性はオブジェを思い切りぶつけられ、死んでしまいました。
パトカーが近くまで迫る中、アレックスは慌てて仲間とともに逃亡しようします。しかし、結果的に仲間に裏切られ、警察に逮捕されてしまったのです。
アレックスには女性殺人容疑に加え、これまでの悪行の数々を顧みて懲役14年の刑が言い渡されます。とにかく早く出所したかったアレックスは、牧師に媚びを売ったり模範囚を演じたりと刑期を軽くしてもらえるよう行動します。
その後刑務所での行いやキリスト教の信仰心などが内務大臣に注目されると、アレックスの思惑通り刑期を短くする提案が持ち上がるのです。しかし、刑期を短くする代わりに「ルドヴィゴ療法」の被験者になるよう頼まれます。
もちろん承諾するアレックスでしたが、ルドヴィゴ療法は非常に過酷な治療でした。ルドヴィゴ療法は、まず薬を飲まされてから拘束服を着用し、椅子に縛られた上で瞬きができないよう両目を固定されて行われます。
そして、目が乾くのを防ぐための目薬を差されながら暴力・性虐待などの残酷な映像を見せられます。毎晩のように悪行に及んでいたアレックスからしてみれば、どんなに残酷な映像を見せられようとも何も感じないばかりか、楽しんで見られると思えました。
しかし、最初に飲まされた薬には吐き気や不快感を促す作用があったため、徐々に残酷な映像とともに嫌悪感を抱くようになります。ルドヴィゴ療法の真の目的は、残酷な映像と薬の作用を掛け合わせ、暴力や性虐待といった行為に嫌悪感を抱かせ、拒否反応を起こすようにするものでした。
さらに、アレックスの大好きなベートーベン交響曲第9番をBGMとして使用したことで、アレックスは好きな曲を聞く度に拒否反応が出るようになってしまったのです。
長きにわたって続いたルドヴィゴ療法を経て、アレックスは自宅へと帰ります。しかし、長く悪行を働いてきたアレックスに対して親切にしてくれる家族はいませんでした。
自宅にはいられず町に出ても、今度は自分が暴行したホームレスや不良仲間から痛めつけられる始末です。どこに行ってもアレックスには居場所がなく、途方に暮れた末にとある家に助けを求めます。
その家は、かつてアレックスが不良仲間とともに暴行した作家の住民が住んでいたのです。そうとは知らず、親切にしてくれる作家にアレックスは少しずつ心を開いていきます。
一方、作家もアレックスが以前暴行を加えた張本人だと気付いていませんでした。しかし、事件の後に肺炎でなくなった妻を想う度、暴行した人達を憎まずにはいられなかったのです。
作家本人もまた、暴行によって下半身不随になり、車椅子生活を送っていました。アレックスは、自身がルドヴィゴ療法の被験者であることを作家に伝えます。
作家は、そもそも政府が人権を無視して権力を振りかざすことに対して不信感を抱いていました。ルドヴィゴ療法について聞かされ、作家は政府に立ち向かおうと決心します。
そんなある日、ある出来事がきっかけでアレックスが暴行を加えた本人だと気付いた作家は、怒りに震えながら復讐を決意します。アレックスが、とある部屋に監禁されていることに気が付いた頃、ベートーベン交響曲第9番が流れ出します。
ルドヴィゴ療法を思い出し辛く苦しむアレックスは、苦しみに耐えられず自殺を図ります。部屋から身を投げて自殺を図ったアレックスは、病院で目を覚ましました。
ひどくケガをしていたものの、命に別状はありませんでした。そして、彼はルドヴィゴ療法の効果がなくなっていることに気が付くのです。
ここからは、時計じかけのオレンジで登場する人物を紹介していきます。主人公であるアレックスをはじめ、作中には多くの重要人物が登場してきます。
まずは主人公のアレックス・デラージュです。アレックスは、不良グループのリーダーとして仲間とともに悪事ばかりを企み犯行に及んでいました。
自宅の部屋には卑猥な女性の絵を飾っていたり、引き出しで蛇を飼育したりと通常であれば理解し難い性格の持ち主と言えます。ベートーベンの交響曲第9番を好んでおり、1日の終わりには必ずその日の出来事を思い出しながら音楽を楽しむほどでした。
アレックスを演じたのは、俳優のマルコム・マクダウェルでした。作中での彼の演技力が話題となり、カリスマ的存在として世界にその名を知らしめました。
ミスター・アレクサンダーは、アレックス一行に襲撃された作家です。郊外の一軒家に妻と住んでいましたが、アレックス達から暴行を受けた後、妻を肺炎で亡くしています。
自身も下半身不随の体となって車椅子生活を余儀なくされており、自分達の生活を一変させたアレックス達を今でも憎んでいます。居場所をなくしたアレックスが助けを求めてきた当初は、アレックスが暴行した張本人だと気付いておらず、快く自宅に招き入れました。
権力を振りかざす政府に対して不信感を抱いており、アレックスがルドヴィゴ療法の被験者であることを知ると、対抗措置を取ろうと考えます。そんなミスター・アレクサンダーを演じたのは、俳優のパドリック・マギーです。
内務大臣のフレデリックは、俳優のアンソニー・シャープが演じた人物です。治安回復を公約に掲げ、政治犯を刑務所に送り込もうと積極的に取り組んでいました。
ルドヴィゴ療法の被験者としてアレックスを指名した人物でもあり、治療後のアレックスの変化を自身の功績として訴えます。しかし、アレックスが自殺を図ったことによってルドヴィゴ療法が非人道的行為だと問われるようになり、非難回避を図ります。
ディムは、アレックス率いる不良グループのメンバーの1人です。アレックスとともに悪事を働いていましたが、アレックスに対しては良く思っておらず、バカにしたり反発したりする姿が見られます。
また、アレックスが警察に逮捕されるよう仕向けた1人でもあり、逃げようとしたアレックスをビンで殴って逃走しています。その後警察官となり、出所したアレックスと再会しました。ディムを演じたのはウォーレン・クラークです。
ジョージーもまた不良グループの一員として悪事を働いていた人物の1人でした。作家であるアレクサンダー夫妻の襲撃にも加わっています。
彼もまたディムと同様アレックスに反発しており、アレックスが警察に捕まるよう仕向けました。その後、ディムとともに警察官になっています。ジョージーはジェームズ・マーカスが演じました。
ピートも不良グループの一員で、アレックス達とともに悪事を働いてきました。作家のアレクサンダー夫妻の襲撃にも加わっています。
ディムやジョージーと同じくアレックスに反発心を持っていますが、積極的に動いてはいませんでした。しかし、ディムやジョージーにビンで殴られたアレックスを見捨てて逃げています。ピートはマイケル・ターンが演じています。
乞食の老人は、アレックスから暴行を受けた人物の1人です。杖で無理やり押さえつけられながら暴行を受けており、アレックス達を憎んでいます。
その後、出所したアレックスと再会すると、他の乞食仲間とともに復讐します。乞食の老人はポール・ファレルが演じました。
ビリーボーイはアレックス率いるグループと対立する不良グループのリーダーです。若い女性をレイプしようとしていたところでアレックス達と鉢合わせます。
邪魔されたことに腹を立て、乱闘になりました。ビリーボーイはリチャード・コンノートが演じています。
ミセス・アレクサンダーはミスター・アレクサンダーの妻で、アレックス達の襲撃時にレイプされてしまいます。仲間が苦しんでいる、助けて欲しいなどと騙され、家のドアを開けてしまったことでアレックス達に襲われました。その後、肺炎を患い亡くなっています。
キャットレディは郊外のヘルス・ファームで暮らしている女性です。たくさんの猫を飼っている理由からキャットレディというあだ名を付けられましたが、本名はウェザースという女性です。
キャットレディは、自宅にある金品を狙って侵入してきたアレックス達から襲撃をされました。その後、彼女は仲間とのリーダー争いにむしゃくしゃしていたアレックスに自宅にあったオブジェをぶつけられたことで命を落としてしまいます。
アレックスは、キャットレディの殺人容疑で逮捕されます。キャットレディはミリアム・カーリンが演じました。
逮捕後のアレックスを担当する監察官がデルトイトです。留置場で逮捕されたアレックスを見るなり、バカにするかのように笑いながら唾を飛ばします。デルトイトは、オーブリー・モリスが演じています。
ジョーは、アレックスが逮捕され刑務所に収容された後、自宅に下宿人として暮らし始めた人物です。アレックスの両親は我が子のように接しているほか、ジョーもまた自分の両親同然だと言いアレックスに対して冷たい態度を取ります。
出所後アレックスが自宅に戻ると、ジョーに挑発されています。
作中には、暗号や専門用語のような言葉が度々登場します。アレックス達が使っているのは「ナッドサット語」と呼ばれる言語で、若者を中心に認知されていました。
多くのナッドサット語はロシア語が由来になっており、意味も似通っています。ここでは、作中に登場した用語の意味をいくつか解説していきます。
アピ・ポリ・ロジーは、謝罪する場面に使用します。直訳すると「ごめんなさい」という意味で、「○○してごめんなさい」を「○○してアピ・ポリ・ロジー」と言い換える形で使用します。
ボッグは「神」を表す言葉です。ロシア語の「神(bog)」という言葉が由来になっています。
「大きい・偉い・すごい」などと表現する時に使用します。「あなたはボルシーだね」といったように相手を褒めたり称えたりする場面で使用されます。
ブリトバは「カミソリ」を意味します。悪事ばかりしていたアレックス達は作中でも度々使用しています。
チャイは「お茶」を表しており、こちらもロシア語由来です。インドで親しまれているお茶でもチャイやチャイティーと呼ばれることがありますが、中国語からきている言葉だと言われています。
ミリセントは「警察官」のことです。作中では、警察官がよく登場しますが、その場面でもミリセントという言葉が使用されています。
オレンジは「人」を表しており、この言葉に関してはマレー語が由来になっています。作中で使用されているシーンはありませんが、原作ではオレンジという言葉を使った場面が登場します。
これは考察ですが、時計じかけのオレンジというタイトルには、「時計じかけの人」という意味が込められており、時が経過するごとにアレックスが追い詰められていくことを表しているのかもしれません。
アレックスをはじめ、時計じかけのオレンジには様々な怖いセリフが登場します。ここでは、その中でも印象強いセリフについて解説していきます。
アレックスが楽しそうに会話している所で登場するセリフです。ここで言うミルクはドラッグ入りのミルクを指し、それを飲むことで無差別に暴行を加えられるといった意味となっています。
会話の雰囲気から軽く聞き流している人も多いセリフですが、非常に残虐的で背筋が凍ってしまうような内容になっています。また、時計じかけのオレンジの作中で、いかに日常的でドラッグが出回っているかが感じ取れるセリフです。
アレックスがルドヴィゴ療法の被験者になることに承諾した時に、やめさせようとした牧師が言ったセリフです。ルドヴィゴ療法は、体を拘束して吐き気を促す薬を飲み、瞬きもさせずに残虐映像を見るというものでした。
そうとは知らずに被験者になると決めたアレックスでしたが、牧師はルドヴィゴ療法をすれば人間でなくなってしまうだろうと危惧していたのです。「善は選択することで善となる。人間が選択できなくなった時、その人間は“人間ではなくなる”」とうセリフは、牧師がアレックスを説得しようとして発言したものです。
牧師は、ルドヴィゴ療法で強制的に真人間にするのではなく、真人間になるために正しい選択をさせるよう促すことが何より重要だと考えていました。
自分や妻を襲ったのがアレックスだと気付いたミスター・アレクサンダーは、彼を監禁し、ひたすらベートーベン交響曲第9番を聞かせ続けました。アレックスはその状況に耐えきれず自殺を図りますが、その後意識を取り戻した際に言ったセリフです。
また、アレックスが自殺未遂を図った事実は、政府がいかに非人道的な実験をさせていたのかが証明されたようなものでした。
作中のラストシーンでアレックスが発言したセリフです。アレックスは、自殺未遂をきっかけにルドヴィゴ療法を受ける前の状態に戻りました。
実際にベートーベン交響曲第9番を聞いても、吐き気や嫌悪感を抱かなくなっていたのです。そのことに気が付いたアレックスは、「俺は治った。もう大丈夫だ…」と言い、怪しげな笑みを浮かべました。
アレックスの最後の笑みは、何を意味するのか、彼の今後はどうなるのかを想像させてくれるような形で作品は幕を閉じています。
ここまで、時計じかけのオレンジについて解説してきました。危険な本だと言われていた原作を基に映画化された時計じかけのオレンジは、独自の世界観を見事に再現しました。
後に、様々な作品を手掛けてきたスタンリー・キューブリックの代表作として多くの人から賞賛されることになります。この作品には、人間の誰もが持っている欲・悪・自由を追い求める心理が入れ込まれています。
思わず目を背きたくなるような展開がいくつも登場しますが、一歩間違えれば決して他人事ではない部分も含まれているはずです。私たちが何気なく生活している影では、ドラッグに手を出す人や、犯罪をしてしまう人もいるのが実態です。
時計じかけのオレンジは、そんな人間が持つ悪の部分を細かく表現し、どう向き合っていくべきなのかを考えさせられる作品となっています。まだこの作品を観たことがない方は、登場人物が言っている用語やセリフなどの意味を考えながら観てみてください。
つい過激な内容に注目してしまいがちですが、この作品を通して観る人に伝えようとしていることは何なのかを考えてみると、ストーリーに深く入り込みやすくなります。興味のある人は、U-NEXTでチェックしてみてください。
複数回観ても、新たな発見ができる作品なので、既に観たことがある人にもおすすめです。