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【ネタバレ】怖くも悲しいサイコスリラー・ブラックスワンのストーリー解説

エンタミート編集部

更新日:2021-7-2

<プロモーション>

バレエが舞台の映画『ブラックスワン』は、クラシックバレエで有名な『白鳥の湖』を演目に繰り広げられるサイコスリラーです。バレエ『白鳥の湖』という演目は、同じバレリーナが正反対の性格をした白鳥・オデットと黒鳥・オディールを演じるところが見どころとなっています。

 

ナタリー・ポートマンが演じる主人公のニナはこの舞台の主役に選ばれるのですが、どのようにして一人二役を踊りきるのか、そしてニナの心情の動きなどが『ブラックスワン』の肝となっています。

 

今回は、映画『ブラックスワン』をネタバレありでストーリー解説していきます。一度見ただけではよく分からなかった方もぜひ今回の記事を読んで、ストーリーを理解していきましょう。

 

『ブラックスワン』のあらすじ

 

映画『ブラックスワン』は、2010年に公開されたバレリーナを描いたサイコスリラー作品です。ナタリー・ポートマンが真面目な主人公ニナを演じ、アカデミー主演女優賞を受賞しています。

 

ニナは元バレリーナで妊娠を機に夢を諦めた母親からの熱心な支えにより、若手バレリーナとして活躍していました。所属するバレエ団で次世代プリマのお披露目公演で行う「白鳥の湖」も、ニナは主役候補に挙がったのです。

 

しかし、ニナが白鳥の湖を演じるのには懸念もありました。ニナは臆病で真面目な性格から白鳥を演じるのには適していましたが、欲を全面的に押し出しながら誘惑する黒鳥には向いていなかったのです。それでもニナは「自分なら黒鳥を演じられる」と演出家のトマに直談判し、主役の座を掴むことができました。

 

その後ニナは練習を進めていきますが、自分とはまるで違う黒鳥を演じるのに苦戦します。演出家のトマにも性的な魅力が足りていないと指摘されてしまいます。さらに、ライバルであるリリーの存在や元プリマの存在、過干渉すぎる母親に囲まれ、徐々にプレッシャーに苛まれていくのです。

 

展開の矛盾や謎からラストが予測できない、迫力のある作品となっています。どこからが現実で、どこまでがニナの妄想なのかに注目して映画を見ると、より一層楽しめるでしょう。

 

ネタバレ注意!映画『ブラックスワン』のストーリーを詳しく解説

 

 

『ブラックスワン』は天才数学者が精神崩壊していく様を描いた『π』や、麻薬に溺れてしまう人々を描いた『レクイエム・フォー・ドリーム』などで知られるダーレン・アロノフスキー監督が手掛けています。アロノフスキー監督はこれまでも人間の弱い精神部分を見事に描いた作品を多く作り上げてきました。『ブラックスワン』もまた、ニナという人間の弱い精神面を深く掘り下げて描かれた作品です。

 

ここからはさらに詳しく、映画『ブラックスワン』のストーリーを順番に解説していきます。ネタバレを含んだ解説になるため、ネタバレOKな人や映画の考察がしたいという人は解説を読んでみてください。

 

プリマ候補に選ばれるニナ

 

 

ニナは、ニューヨークにある一流バレエカンパニーに所属する真面目でバレエ一筋の若いバレリーナです。ある日、演出家を務めるトマは次のプリマを決めるために『白鳥の湖』のオーディションを開催することにしました。新人の中で主役の候補に挙がったのが、ニナ・リリー・ヴェロニカの3人でした。

 

ニナは色仕掛けをして主役を掴もうとトマの元へと向かい、「主役に抜擢して」と直談判して主役を勝ち取ります。しかし、『白鳥の湖』では『純真無垢な白鳥』と『魅惑的な黒鳥』をそれぞれ演じ分けなければいけません。いざ黒鳥を演じようとしても、真面目なニナには色気が足りませんでした。

 

トマから「性的な魅力を感じない」と指摘されたニナは、やがて精神的に追い詰められて幻覚や妄想に襲われるようになります。

 

プリマの座を奪われることへの不安

 

 

黒鳥を演じるのに色気が足りないと精神的に追い詰められたニナは、折角主役に選ばれたのにプリマの座を他の人に奪われるのではないかと不安に陥ります。舞台の公演前日には、リリーがニナの代役に抜擢され、その不安は更に加速してしまいます。トマにリリーを代役にするのはやめてほしいと懇願してもリリーを代役から外してもらうことができませんでした。

 

そのプレッシャーから、公演の前日にトマとリリーがレッスン場で絡み合う姿をニナは目撃します。しかし、それはプリマの座をリリーに奪われるのではないかという不安が生み出したニナの幻想でした。プリマの座を奪われるのではないかというニナの不安は妄想と幻想を加速させていきます。

 

過干渉な母への抵抗

 

 

過干渉な母親エリカと共依存のような関係にあるニナは、オディールを思うように演じられない不安やプレッシャーから次第に母親に抵抗するようになります。家にいると干渉をしてくるエリカに、うんざりするとことから始まるのでした。

 

ある日リリーが自宅に訪ねてくると、これまで友人と外出を禁止されていたニナはリリーと家を飛び出します。リリーと食事をしたり薬物に手を出したり、さらには男性と接近してみたりするなど、これまでの反動から思い切った行動をします。

 

エリカからの電話を無視して家に帰るとエリカが怒って待っていました。しかし、起こるエリカの姿を見てニナはあざ笑うかのように自室へと引きこもるのでした。

 

不安定なまま舞台初日へ

 

 

舞台当日、ニナの不安やプレッシャーはピークを迎えます。不安な気持ちを抑えるために、憧れていたバレリーナ・ベスの病室へと向かい、ニナは不安な気持ちをベスと共有しようとしました。

 

しかし、病室で待ち構えていたのは夢を失って絶望を感じているベスでした。彼女は爪やすりで自分自身を刺してしまいます。

 

自宅に帰ってもニナの不安な気持ちは収まらず、エリカが描いた絵にすら笑われているような妄想に憑りつかれ、その絵を破り捨てるのでした。心配して声をかけたエリカをニナは拒絶し部屋で着替えようとすると、新たな幻覚に襲われます。今度は背中から黒い羽根が生えている幻覚を見るのでした。

 

そのまま気を失ってしまったニナは、「リリーが主役を演じることになった」と聞いて急いで劇場へと向かい、妄想と幻覚に襲われたままステージに立ちます。

 

どこまでが妄想?ブラックスワンの狂気を解説

 

 

ブラックスワンでは、どこからどこまでがニナの妄想なのかが1度映画を観ただけでは中々分かりません。どこからどこまでがニナの妄想なのか、その狂気を解説していきます。

 

ニナの自傷行為

 

ニナは主人公に選ばれてからというもの、プレッシャーを感じるたび自分の背中を引っ掻いたり指の逆剥けを剥がしたりして自傷行為を繰り返していました。この自傷行為はニナの母親であるエリカも知っていたため、妄想ではなく実際に自傷をしていたと考えられます。

 

映画の終盤では、リリーと言い争いになった時に鏡の破片でリリーを刺します。しかし、実際にはリリーを刺して殺したのはニナの幻覚で、実際には自分のお腹を刺していました。クライマックスだけは妄想で、他の自傷行為は現実であったと解釈することができます。

 

ニナは真面目で穢れのないイメージです。そのイメージが自傷行為によってより一層彼女の異常性を浮き彫りにしています。

 

リリーとのお泊り

 

 

舞台が開幕する間近に、リリーはニナの自宅へと訪れました。ニナはリリーと一緒に食事へ出かけ、ドラッグを体験してクラブで踊りました。ここまでの出来事は全て現実です。

 

その後にリリーとのお泊りシーンがありましたが、リリーとのセックスはニナの妄想です。なぜなら、次の日リリーに「ドラッグは渡したけど家には泊まっていない」「セックスを妄想したの?」と言われているシーンがあります。また、リリーはクラブで踊った後トマと一緒にいたため、その後の出来事はニナの妄想と判断することができます。

 

ニナはタクシーでリリーに恥部を触られたことや男性が苦手でも性欲はあったことから、リリーとのセックスを妄想してしまったと考えられます。なお、ニナが男性を苦手なのは母親の存在が大きな影響を与えています。

 

エリカは妊娠したことでバレリーナの夢を諦めることになったと、ニナに言い聞かせていたのです。こうした背景もあり、異性に対して興味はありつつも苦手意識が芽生えていったのです。

 

ベスが自分自身を爪やすりで刺す奇行

 

ニナが憧れていた元プリマのベスは、事故により引退をしました。ニナはリリーへの嫉妬から気持ちを落ち着かせるために、ベスの盗んだ私物を持ってベスの病室へと向かいます。そこで盗んだ私物をベスへ返すと、爪やすりで自分自身を刺す奇行に出たのです。

 

しかし、このベスの奇行もニナの幻想です。ニナはベスの奇行が恐くなって病室から逃げ出しましたが、そこで看護師とすれ違っても何も騒ぎになりませんでした。もし、本当に刺されていたとしたら看護師が騒いでもおかしくありません。

 

看護師が騒ぐことなくそのまま次のシーンへとカットが移るため、ベスが自分を爪やすりで刺す奇行はニナの幻想と解釈することができます。

 

交わるトマとリリー

 

 

舞台本番前日、ニナはプレッシャーに追い詰められた状況でリリーとトマが交わる姿を見ました。トマが黒鳥のように黒い羽根を生やし、リリーの顔が自分の顔へと変わっていくという、現実ではありえない光景を目にしたのです。そのため、このシーンもまたニナの妄想ということになります。

 

リリーには女性的な魅力があるため嫉妬する一方で、ニナはリリーに対し憧れを抱いていたのではないかと考えられます。また、トマは女遊びが激しかったことも知っていて、異性と関係を持つことにニナが興味を持ったことでこのような妄想を生み出したと考えるのが自然です。

 

リリーの殺害

 

舞台本番当日の幕間、ニナの部屋に行くとリリーがいました。その際、ニナの代わりに黒鳥を演じることをリリーに提案されてもみ合いになります。リリーに抵抗しようと思ったニナは、ガラスの破片でリリーを刺し殺してしまいました。

 

リリーの死体を隠して黒鳥を演じたニナは、舞台から戻ると証拠隠滅を図ります。すると、リリーが黒鳥の演技を褒めにニナの楽屋を訪れたのです。実は、ニナはリリーを殺していなかったのです。リリーを殺してしまったのはニナの妄想で、実際には自分の腹部を刺していました。

 

ニナが妄想・幻覚に襲われる理由

 

 

ニナは自ら白鳥の湖の主役を掴み取りますが、その後から強い妄想・幻覚に襲われてしまうようになります。主役が決まった後から妄想や幻覚に襲われるようになったのでしょう?ニナの妄想・幻覚に大きな影響を与えた3つの理由をそれぞれ解説していきます。

 

主役のプレッシャー

 

 

ニナが妄想や幻覚に襲われるようになった理由の1つは、主役のプレッシャーが原因です。どのような主役のプレッシャーが原因となってしまったのか解説していきます。

 

「白鳥の湖」で求められる演技

 

クラシックバレエの中で最も有名な『白鳥の湖』には『純真無垢で臆病な白鳥=オデット』と『己の欲に忠実で魅惑的な黒鳥=オディール』が登場します。オデットは王子を純粋に愛するキャラクターですが、オディールはオデットに似た姿で王子を惑わす欲深くてずるいキャラクターです。

 

そのため、見た目はそっくりでも性格が正反対の2人を主役がそれぞれ演じ分ける技術が求められます。正反対の性格の役を演じなければならないため、主役は臆病な純粋さと欲深いずるさを持ち合わせていなければ、それぞれのキャラクターを表現することはできません。

 

主役に抜擢されたニナは、穢れを知らない純粋なオデットと色気によって王子を誘惑するオディールを1つの舞台で演じ分けなければなりませんでした。

 

トマが求める“両方を踊れる人”

 

 

白鳥の湖の演出家であるトマは、『白鳥=オデット』と『黒鳥=オディール』のそれぞれを演じ分ける技術と精神を持ち合わせた人物を主役に選ぶことを考えていました。他の演目であれば1つの役を演じれば良いだけですが、白鳥の湖では1人2役をしなければいけないからです。トマは純粋さと臆病さのあるオデットと、真面目なだけでは演じられない欲深さや色気を持ち合わせたオディールの両方を踊れる人を求めました。

 

臆病で真面目で清らかなニナはオデットと似たような存在であり、オデットの役だけを見るならニナが主役に抜擢されるのはおかしいことではありません。しかし、オデットと対極の存在であるオディールは色気で王子を誘惑する真逆の存在で、色気やずるさ・人間の欲深さがないと演じることは難しい役です。

 

新しいニナの一面を見て主役に抜擢したトマでしたが、オディールを踊るには「性的な魅力を感じない」と翌日の練習でニナに指摘をしたのでした。こうした言葉もニナにかかるプレッシャーを強めてしまいました。

 

毒親とも言える過干渉な母親の存在

 

ニナが妄想や幻覚に襲われるようになった理由の2つ目が、毒親とも言える過干渉な母親の存在です。母親の存在がどのように起因していたのかを解説していきます。

 

母親もバレリーナだった

 

ニナの母親『エリカ』は元々、プリマを夢見るバレリーナでした。しかし、そんな中エリカの妊娠が発覚し、バレエを辞めなければいけない事態になりました。プリマになりたい気持ちとは裏腹に、エリカはニナを出産して引退します。

 

エリカは夢を叶えられなかった悔いから、今度は娘であるニナに自分の夢を託すことにしました。自分が叶えられなかったプリマになることをニナに託し、自分の人生に重ねることで、満足しようとしたのです。ニナはエリカの期待の通りに真面目にバレエだけに取り組む娘へと成長しました。ニナが白鳥の湖の主人公に抜擢されたことで、舞台で成功すれば次期プリマも夢じゃないとエリカは思い、更に過保護さに拍車かかっていくのでした。

 

過保護さがニナの成長を妨げていた

 

エリカはニナを自分の思い通りのバレリーナに成長させるため、小さい時からバレエ一筋の人生を歩ませました。他のことに興味を持たないよう、ニナを監視するかのように過保護に育てます。それは、ニナが成長してからも変わりません。

 

自分が妊娠したことによりバレエを諦めなければいけなくなったことを理由にしてニナが異性と接近することを遠ざけます。また、子どもの頃と変わらない幼さを感じるピンクの部屋からもエリカがニナをつなぎ留めたい気持ちが見てとれます。

 

エリカの過保護さはそれだけではありません。友人と出かけることを禁止し、外出する際は常に連絡をとらなければいけませんでした。ニナはそんな母親を疎ましく思いながらも依存している姿が描かれています。

 

自分のコンプレックスの表れ

 

 

ニナが妄想や幻覚に襲われるようになった3つ目の理由は、自分のコンプレックスの表われです。ニナはこれまで男遊びをしたり羽目をはずしたりせずに真面目にバレエ一筋の人生を送ってきました。それはまるでオデットさながらでした。

 

そのため、臆病で純粋な人生を歩んできたニナには、官能的な魅力があるオディールを演じることは精神的にも技術的にも難しいことで、自分の性格がコンプレックスとなってしまったのです。ニナが演じるオディールには『性的魅力を感じない』とトマに言われてしまったニナは、自分のコンプレックスからも妄想や幻覚に襲われるようになってしまうのでした。

 

結末の「完璧だった」に隠された意味を考察

 

 

ブラックスワンの最後のセリフ「完璧だった」には、隠された意味があります。最後にオデットが自殺をするシーンを演じきった後、ニナは舞台から降りて朦朧とした意識の中で「完璧よ」と満ち足りた表情で呟き目をつむりました。ニナは自分のバレリーナとしての人生にも幕を閉じてしまったのです。

 

ニナが呟いた「完璧」という言葉には、白鳥オデットのように純粋で臆病だったニナが、黒鳥オディールのように官能的で魅力のある女性へと変化し、最後には人生を終えることでまたオデットへと戻って完全に役と一体化できたことだと考察できます。ニナの人生自体が、白鳥の湖のシナリオとリンクしていったのです。

 

呪いをかけられた白鳥オデットは、最後に自殺することによって呪いから解放されます。ニナもまた、最後に主演をやり切って母親が期待する『バレリーナとして成功すること』への呪いから解放されたのでしょう。

 

ブラックスワンのネタバレまとめ

 

映画『ブラックスワン』は、心理学的な要素とバレエ要素がうまく組み合わさってできたサイコスリラーです。プレッシャーで追い込まれて幻覚を見るようになったニナが、白鳥から黒鳥へと変化していく様が描かれています。その結末は、見る人によってどう捉えるか委ねられています。

 

ニナの自傷行為はクライマックスシーン以外現実で、ベスが自分を爪やすりで刺す奇行やリリーの殺害、リリーとトマが交わるシーンは幻想だと考察することができます。1度見ただけではどこからどこまでがニナの妄想なのか考察しにくいので、映画を見直してみると良いでしょう。

 

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※本ページの情報は2021年7月時点のものです。最新の配信状況は各動画配信サービスサイトにてご確認ください。

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