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不気味で狂気な世界感!映画『シャイニング』をネタバレありで解説

なかがわ

更新日:2021-6-23

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現在まで映画界には数多くのホラー作品が誕生しており、「名作」と呼ばれるタイトルも存在します。特にモダンホラーの巨匠と呼ばれるスティーヴン・キング原作の映画作品は、どれを取っても得体の知れない不気味さや狂気を感じられるものばかりです。

 

今回はその中でも特に傑作と名高い『シャイニング』について、ネタバレありで解説していきます。原作とは異なる部分や監督のこだわり、続編の『ドクター・スリープ』についても触れていくので、シャイニングをもっと知りたい方はぜひチェックしてみてください。

 

原作とは違う!映画『シャイニング』のあらすじ

 

 

映画『シャイニング』はスティーヴン・キング原作の同名小説を映画化したもので、監督には『2001年宇宙の旅』や『時計じかけのオレンジ』などを手掛けたスタンリー・キューブリックが担当しています。実はスティーヴン・キングが描いた原作小説と映画では、内容で異なる点がいくつか見られるのです。

 

そこでまずは映画のあらすじをご紹介しつつ、原作とは異なる部分についてご紹介していきます。

 

シャイニングとはどんな物語?

 

ロッキー山脈にあるオーバールックホテルは11月から5月までの期間に雪で閉ざされてしまうことから営業を止め、冬季の間だけ管理人一家に管理を任せていました。元々教師を務めており作家業に専念したいと考えていたジャック・トランスは、この管理人の仕事に応募します。

 

しかし、このホテルはいわくつきで支配人のアルマンから「以前管理人が家族を斧で殺し、自殺した」と面接時に聞かされます。それでもジャックは特に気にも留めず、妻のウェンディと息子のダニーを引き連れホテルに住み込むことになったのです。

 

ダニーは「シャイニング」と呼ばれる不思議な力を持った少年で、オーバールックホテルに到着するとそこから様々な現象を目撃することになります。同じ力を持ったホテルの料理長であるハロランは、別れる前にダニーへ「何かがこのホテルに存在する」「237号室には近付くな」と伝えました。

 

それからジャックとウェンディ、そしてダニーは外界と隔離されたホテルの中で生活する日々が始まります。しかし、やがて家族以外に存在しないはずの“何か”がいることを察し、精神を蝕んでいくことになるのです。

 

原作と異なる部分

 

 

原作と映画版で異なる部分は非常に多いです。最も大きな違いと言えば亡霊の存在とエンディングです。原作のシャイニングではジャックが精神を病んでしまう主な原因は亡霊による影響を受けたせいとなっています。元々ジャックは癇癪を起こしやすいという性格でしたが、ホテルに訪れたせいで家族に害を及ぼす存在になってしまいます。

 

しかし、映画版のジャックは亡霊による影響を受けつつも、アルコール依存症や仕事・家族関係がうまくいかないことで大きなストレスとなり、徐々に病んでいきます。家族を傷つけるのもある程度自分の意志で傷つけてしまっているのです。

 

また、ネタバレになりますがエンディングは映画版だとジャックはダニーを追った結果、巨大迷路に迷い込みそのまま凍死します。そしてそのままホテルに取り込まれてしまいました。

 

原作だとジャックがダニーに襲い掛かったとき、正気を取り戻してダニーに逃げるよう伝えます。その後ジャックはボイラー室へ向かい、爆発させてホテルと運命を共にするのです。

 

映画版ではホテルがあり続けている状態ですが、原作だと爆発で焼失している点に違いが見られます。

 

ネタバレあり!『シャイニング』を徹底解説

 

 

ここからはさらにシャイニングという作品をネタバレありで深堀していきましょう。特に映画を観た人が気になる部分をピックアップして解説していきます。

 

物語の重要なシーンに登場する「鏡」

 

 

シャイニングには鏡にまつわるシーンがたくさん登場します。あまりストーリーと関係ないように思えるかもしれませんが、実際にはシャイニングという作品の中で鏡が意図しているものがあるのです。物語の重要なシーンにも登場する鏡について、まずはご紹介していきます。

 

鏡が登場する気になる場面

 

鏡が登場するシーンの中で特に印象的な場面がいくつかあります。最初に鏡が登場する気になる場面は、洗面所のシーンです。洗面所でダニーは鏡に向き合い、トニーという人物と会話をします。

 

ここで登場するトニーという人物は、後でダニーの未来の姿だったことが判明しました。つまり、ダニーは鏡を通して未来の自分と交信をしていたのです。この不思議な力はすべてダニーが持つ「シャイニング」という能力と関係しています。

 

次に登場するのが、ジャックが誰もいないホテルのバーを訪れたときにロイドというバーテンダーが現れるシーンです。ロイドはジャックに酒を振る舞い、その酒を飲むことでジャックの狂気は増していきます。バーカウンターの奥に設置されている鏡にはロイドが映っておらず、ジャックだけがロイドを認識していたことが分かります。

 

さらにジャックが237号室へ入ったとき、バスルームから美女が現れてジャックを誘惑するシーンがあります。しかし、ジャックが鏡越しに美女を見ると、そこには腐乱しかけている老婆が映りこんでいたのです。

 

他にも以前管理人を務めていたグレーディーが登場し、ジャックと会話をするシーンもトイレでたくさんの鏡があったり、ダニーが寝室のドアに「REDRUM」と書いていてウェンディが鏡越しに見てみると殺人を意味する「MURDER」と読めるシーンがあったりするなど、重要な場面で何度も鏡が登場しているのです。

 

作品内で鏡が意図するものとは?

 

シャイニングで鏡が意図しているものは、おそらく“こちらの世界”と“あちらの世界”、2つの世界が存在している点だと考えられます。ホテルを通して現実世界から亡霊が取り巻く世界へ徐々に引き込まれてしまう様を描くための手段として、鏡を利用したと推測できます。

 

「シャイニング」という能力の正体

 

 

タイトルにも使用されている「シャイニング」は、特殊な能力として作品内に登場します。具体的にシャイニングとはどのような力なのか、ご紹介していきましょう。

 

ダニーとハロランが持つ超能力

 

ダニーとハロランが持つ超能力的存在の「シャイニング」は、口を動かさなくてもテレパシーのように会話することができたり、未来や過去を見ることができたりする能力です。

 

例えばハロランはホテルを出て自宅へ帰るのですが、シャイニングを通じてダニーからのSOSを受け取るとホテルへ急いで戻ります。このことから、シャイニングの能力者同士はテレパシーでつながれることが分かるでしょう。

 

ただし、映画版ではほとんどシャイニングという能力について詳しく語られていません。原作だとダニーはシャイニングの能力が高く、自分以外の存在にもいち早く気づくことになります。ホテルもそんなシャイニングの力を求めてダニーを襲うようになりました。

 

血の洪水などはシャイニングの力で見えていた

 

ホテルでは様々な怪奇現象が起こります。例えばエレベーターから突然血の津波が押し寄せてきたり、双子の姉妹が登場すると彼女たちが殺され、廊下が血まみれになっている映像が見えたりしました。これらはすべてダニーに見えていたもので、能力を持たないウェンディには見えていませんでした。

 

しかし、徐々に現実ではない世界との境目が曖昧になり、影響を受け続けた結果、最終的にウェンディにも様々な幻影が見えるようになってしまいます。

 

なぜ登場?双子や犬男について

 

 

先ほども少しご紹介しましたが、シャイニングにはジャック一家やハロラン以外にも、双子や犬男といった強烈な存在感を放つキャラクターたちが登場します。双子や犬男はどんな意味を持って作品に登場することとなったのでしょうか?シャイニングの人気キャラでもある双子と犬男についても解説していきましょう。

 

双子の正体は前任者・グレーディーの娘

 

ダニーがホテルの廊下を三輪車で走り回っていると、突然目の前に双子の少女が登場します。双子はダニーに「遊びましょう、いつまでも」と話しかけてきました。

 

しかし、ダニーが持つシャイニングの力によって、双子が斧で惨殺され血まみれになっている光景が見えました。そんな恐ろしい光景を見てしまったダニーは目を覆い隠していると、双子はどこかへ消えてしまうのです。

 

突然ダニーの前に現れた双子の少女は、以前管理人を務めていたグレーディーの娘です。2人はグレーディーに斧で殺されてしまいました。シャイニングには過去を見る力もあるため、双子が死んでしまった時のシーンをダニーに見せて「このホテルは危険な場所だ」と知らせていたのではないかと考えられます。

 

ちなみに双子が殺されたきっかけとなったのは、双子のどちらかがホテルに火をつけようとしたからだとグレーディーは語っています。元々双子もホテルのことが嫌いだったようです。グレーディーもまたホテルに囚われていた人物だったと言えるでしょう。

 

犬男の登場シーンは子役への配慮だった?!

 

ウェンディが狂気に満ちたジャックから逃げ、ダニーを探している時に一室の扉が開いていることに気が付き、そこを見てみると犬の着ぐるみを着た男とタキシードを着た男がいるところを発見します。映画ではこれ以上2人が登場することはありませんが、原作だとその正体が分かります。

 

タキシードを着た男はホテルのオーナーだったホーレス・ダーウェントという人物で、犬の着ぐるみを着ていた男はホーレスの腰巾着だったロジャーという人物です。映画ではこの2人が男性同士で性的な行為を及んでいるかのように見えます。

 

しかし、本来原作で犬男を目撃するのはウェンディではなくダニーでした。しかも原作だとこのシーンにホーレスが登場することはありません。では、なぜ映画だとウェンディが目撃し、ホーレスも登場したのでしょうか?

 

この理由にはダニー役の子役にトラウマを作らせないためだと考えられます。犬男はとても不気味で、子どもが見てしまったら怖がることも十分あり得るためです。

 

監督のキューブリックは子役にトラウマを作らせないために、犬男を目撃するのは大人のウェンディに切り替えたのでしょう。また、ホーレスは原作でもバイセクシャルの設定だったことから、不気味さを増すためにあのようなシーンを作り出したのだと推測できます。その結果、ダニー役の子役は撮影中ホラー映画ではなくホームドラマの撮影をしていたのだと思っていたそうです。

 

舞踏会の写真が意味するもの

 

 

映画のラストで1枚の写真が登場します。その写真には1921年という文字と舞踏会の様子、そして笑顔で真ん中に鎮座しているジャックの姿が写し出されていたのです。

 

この舞踏会の写真が意味するものとは一体何だったのでしょうか?

 

ジャックはオーナーの管理人になる因果だった?

 

キューブリックはこのラストシーンについて、「舞踏会の写真は、ジャックの生まれ変わりを示唆する」と述べています。つまり、ジャックは元々オーバールックホテルの管理人を務めていた人物で、輪廻転生を繰り返しながら何度もホテルの管理人になっていることが分かります。

 

ここで思い出されるのはトイレでのジャックとグレーディーの会話です。グレーディーはこの時「あなたこそこのホテルの管理人です。ずっと昔から」と話していました。生まれ変わってもジャックはホテルの管理人になる運命だったことを示唆しています。

 

以前ホテルで家族を惨殺した管理人のグレーディーも、元々は過去のジャックが転生した人物であったと推測できます。

 

「固定」と「永遠」を結びつける写真

 

ストーリー全体を通して、現実と別の世界を映し出していたのは「鏡」でした。しかし、最後は鏡ではなく写真を使っています。

 

ここで写真が使われたのは、ジャックの魂がホテルに固定し続けることを意味するためだったと考えられます。鏡は動的な存在を映し出すものですが、写真は物体を静的に、その一瞬だけを切り取るものです。そのため、鏡は現実と別の世界をつなげる入口的な役割をもたらし、逆に写真は世界から固定して動けなくするためのものだと言えるでしょう。

 

特にジャックは最後にダニーを追うシーンで、巨大迷路の中でさまよい続け最終的に凍死してしまいます。ホテルに囚われ、ずっと抜け出すことができないジャックの運命を暗喩しているとも考えられるでしょう。

 

スタンリー・キューブリック監督のこだわり

 

 

20世紀を代表する映画監督の一人でもあるスタンリー・キューブリックは、シャイニングを撮影している際にも彼だからこそ表現できたこだわりを取り入れています。どのようなこだわりを持って撮影された作品なのかもご紹介していきましょう。

 

シンメトリーが生み出す不気味さ

 

 

まずシャイニングの映画を語る上で欠かせないのが、「シンメトリー(左右対称)」です。舞台となったオーバールックホテルにはシンメトリーのデザインが数多く盛り込まれています。

 

例えばホテルのカーペットに描かれた幾何学模様や237号室のデザイン、ジャックが書斎として利用する大広間、そして双子の存在など、すべてシンメトリーで描かれていました。シンメトリーは一見均整が取れた美しいデザインであるものの、完璧だからこその不気味さを感じられます。

 

また、ハロランの自宅にもシンメトリーで家具が配置されていました。この違和感から、見た人が「ここから予期せぬことが起きるのではないか?」と感じられるようになっています。

 

たった2秒のシーンで190以上のリテイク

 

ジャックがバスルームに逃げ込んだウェンディを追い、斧で扉を破壊するシーンは映画の中でたった2秒間しかありません。しかし、キューブリックはわずか2秒のシーンに190以上のリテイクを重ねています。撮影は2週間にも及び、プレッシャーでウェンディ役の女優も追い詰められていきますが、その結果いつもと違う演技ができたとも述べています。

 

他のシーンでもキューブリックは納得できない部分を何度も撮り直しています。最終的にハロラン役の俳優は当時69歳であまりにもリテイクが連続したことから身体へのダメージが重なり、撮影終了後にはリハビリを行うために病院へ通うこととなりました。

 

当時最先端だった「ステディカム」を導入

 

シャイニングには当時最先端の技術だったステディカムが導入されました。ステディカムとは台車やクレーンを使わなくてもスムーズに撮影するための機材です。現在は多くの撮影現場で活用されています。

 

シャイニングの中では、ダニーがホテル内を三輪車で走り回るシーンや巨大迷路を移動するシーンで用いられました。最先端のステディカムを導入することにより、これまでの映画とは違う不気味な浮遊感を生み出しています。

 

2つのシャイニングを踏襲する続編『ドクター・スリープ』

 

 

原作の小説と映画では設定や結末など、様々な違いが見られました。しかし、この2つのシャイニングを踏襲する続編『ドクター・スリープ』が2019年に公開されたのです。

 

ドクター・スリープの簡単なあらすじ

 

 

40年前、オーバールックホテルでの事件から生き残ったダニーは、そのまま心に傷を抱えた状態で孤独な大人になっていました。自身が持つシャイニングの力を抑えるために酒を溺れてアルコール中毒も患っています。そんな彼の周りで児童が失踪する事件が起こり始めます。

 

失踪事件が起こり始めてからある日のこと、ダニーの前にシャイニングの力を使って失踪事件を目撃したという少女・アブラが現れます。ダニーとアブラは事件の謎を追うために、再度惨劇が起きたオーバールックホテルへ向かうのです。

 

237号室や双子も登場!

 

ドクター・スリープでは映画版ではあまり描かれてこなかった「シャイニング」の力について詳しく描かれています。また、舞台が再びオーバールックホテルとなることから、シャイニングで登場した237号室が登場したり、双子の少女が現れたりします。

 

シャイニングを見たことがある人なら、見覚えのあるシーンがたくさん登場するため、ファン必見の作品とも言えるでしょう。

 

シャイニングのネタバレ解説まとめ

 

 

今回はネタバレありでシャイニングの解説をご紹介してきました。モダンホラーの傑作と称されるシャイニングは原作と異なる部分は多いものの、映像作品として美しくも恐怖に満ち溢れた作品になっています。今回解説したポイントも踏まえつつ、原作と比較しながらもう一度作品を見返してみるのもおすすめです。

 

また、シャイニングの正統続編にあたるドクター・スリープもファン必見の内容となっています。現在、シャイニングとドクター・スリープはU-NEXTで配信されています。ホラー作品が好きな方はぜひ動画配信サービスを利用して、名作ホラーを堪能してみましょう。

 

 

※本ページの情報は2021年6月時点のものです。最新の配信状況は各動画配信サービスサイトにてご確認ください。

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執筆

なかがわ

映画・漫画・音楽など、エンターテイメント性を感じる物が好きな人間。好きなジャンルはホラーとSF。一番印象に残っている作品は「千年女優」です。既存の情報+1を目指して記事を書いています。

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