ジェーン・ドウの解剖はアンドレ・ウーブレダル監督が手掛けたホラー映画です。アンドレ・ウーブレダル監督の2作目である「トロール・ハンター」が大ヒットし、その後も注目されていました。
今回ご紹介する「ジェーン・ドウの解剖」は、遺体の死因を突き止めるための『解剖』シーンが多くあります。終始不気味な雰囲気で物語が進んでいきますが、音で怖がらせるシーンもいくつかあります。
ホラー映画に慣れている方ですら「怖すぎて眠れなかった」という感想を残している本物の恐怖映画です。グロテスクな描写が苦手な人や、ホラーや恐怖演出が苦手な方は注意が必要かもしれません。
また、ジェーン・ドウの解剖公開当初は、ラストシーンのセリフ「二度としないよ」が話題になりました。今回はそのシーンも詳しく考察していくので、ぜひ最後までご覧ください。
『ジェーン・ドウの解剖』はどんな話?
話の内容を簡単に説明すると、遺体安置所を経営するトミーと息子のオースティンが「ジェーン・ドウ」の死因を調べていくストーリーです。ジェーン・ドウには身元不明女性という意味があります。
トミーとオースティンが検死依頼を受けたジェーン・ドウは、惨殺事件があった家の地下に全裸で眠っていたのです。外傷がないため、トミーとオースティンは解剖にとりかかることになります。
しかし、解剖が進むにつれて怪奇現象が次々と起こり、トミーとオースティンを混乱へ導くのです。ここでは、その怪奇現象の意味やジェーン・ドウの正体、ラストシーンのセリフである「二度としないよ」の真相をご紹介していきます。
【ネタバレあり】ジェーン・ドウの解剖で気になる部分を考察!
ジェーン・ドウの解剖には、多くの考察ポイントが存在します。気になる部分を詳しく考察していきます。
ジェーン・ドウの正体を探ってみた
まずは、ストーリーのメインとなるジェーン・ドウの正体を探っていきます。死体に隠された様々な要素を読み解いていくと、ジェーン・ドウの正体が分かってくるはずです。
死体の損壊が意味するもの
ジェーン・ドウには目立った外傷がないものの、以下のような損壊が見られました。
・両手足が折れている
・舌が切り取られている
・臼歯が抜かれている
・臓器のほとんどが損傷している
さらに重要となるのは、切り開いた皮膚の内側に意味深な模様が刻まれていたことです。抜かれていた彼女の臼歯は、皮膚の内側に刻まれている模様と同じものが描かれた布にくるまれ、胃の中から出てきました。
後述しますが、その謎の模様は「レビ記20章27節」を意味するものでした。それらを踏まえると、損壊が意味するのは「拷問」だと考えられます。
また、解剖を進めていくにつれて様々な怪奇現象が起こることに疑問を持った父子は、脳の組織を調べます。そこで分かったのは「ジェーン・ドウの脳細胞はまだ生きている」ということでした。
数々の怪奇現象は、解剖に苦痛を感じていたジェーン・ドウが警告として起こしていたことを知ります。ジェーン・ドウは、何と「生きる死体」だったのです。
なぜ安置していた死体まで動き出したのか?
解剖を続ける父子に襲い掛かる死体は、幻覚だったと考えられます。先ほどもご説明した通り、ジェーン・ドウが警告のために幻覚を見せていたのでしょう。
トミーが斧を振りかざした相手が、死体ではなくオースティンの恋人であるエマだったというシーンがあります。それらも実はエマではなく、ジェーン・ドウによる幻惑だったと言えます。
なぜなら、ラストシーンでは、映画の冒頭でエマの車が止められていた場所に警察の車が止まっていたからです。このことからもエマはオースティンの家にきていなかったことが分かるでしょう。
魔法陣の「レビ記20章27節」と「1693年」の真相
先ほど少しだけ触れた、胃の中から出てきた布についても詳しく解説していきます。
胃の中から出てきた布には、怪しげな文字が書かれていました。解読すると「レビ記20章27節」と「1693年」を意味することが分かってきます。レビ記とは、旧約聖書の1つです。
レビ記20章27節には、簡潔に説明すると「占いやオカルト、超能力などを行った場合、必ず殺されなければならない。」と記載されています。
「1693年」が意味するのは、「セイラムの魔女裁判」だと考えられます。セイラムの魔女裁判はいわゆる魔女狩りで、1692~1693年の半ばまで続きました。
これら2つを照らし合わせると、ジェーン・ドウが魔女裁判で拷問を受けてきた女性だということが分かるでしょう。
「本物の魔女」であったのか「無実の女性」であったのかは明らかになっていませんが、どちらかであることは間違いないと考えられます。
猫はなぜ死んだのか?
作中では、トミーの最愛の妻が大切に飼っていた猫「スタンリー」が死んでしまいます。ここからは、なぜスタンリーが死んでしまったのかを考察していきます。
当時魔女狩りの対象となっていたのは、女性だけではありません。「闇」のような印象を抱かせる黒猫さえも魔女狩りの対象になっていたのです。
また、魔女と猫が描かれた絵も多かったことから、たくさんの猫が犠牲になってきました。
猫は呪いを恐れて逃げ出した可能性も
猫と魔女には深い関係性があることから、スタンリーは何かを察し、通風孔から逃げ出そうとしていた可能性もあります。しかし、ジェーン・ドウの力によって重傷を負うことになってしまったのです。
スタンリーに重傷を負わせた理由としては、外に出て助けを呼んでしまう可能性を考えたのでは?ということが挙げられます。しかし、楽にしてあげたいとはいえ、最終的にトミーが手を下すことになった点も不気味なポイントです。
不気味なラジオから流れてきた内容
作中には、ラジオが勝手に流れ出すシーンがあります。実は、そのラジオの内容も物語を理解していく上で重要になるのです。ここからは、ラジオの内容やラジオから流れてきた曲について考察していきます。
ヘブライ書4章は「神の安息所」について記載
ラストシーンでラジオから流れてきた言葉「ヘブライ書4章」には、神の安息所について記載されています。ヘブライ書4章の意味を簡単に説明すると、「神を信じる者は、安息を得られる」という意味になります。
ジェーン・ドウについては、魔女裁判で拷問を受けてきた女性だと考察してきました。しかし、そんなジェーン・ドウは長い間土の中で過ごし、神を信じることで少しずつ人間への恨みを浄化していったのです。
そして、あわよくば「神の安息所」へ導かれることを願っていたのです。土から掘り起こされた挙句、解剖を受け辛い思いをしたジェーン・ドウは「早く元に戻して」と伝えるためにラジオを使って警告していたと言えます。
ラジオから流れてきた曲の正体
ラジオから流れていた曲、バーク保安官がラストシーンで歌っていた曲は、McGuire Sistersの「Open Up Your Heart」という楽曲です。
生前、歌詞中にある「悪魔」は彼女たちを意味していたため、彼女はあえてこの曲を利用したのかもしれません。恨みを思い出す曲を利用すれば、より強い力を発揮できるとも考えられます。
この曲が流れると「恐ろしいことが起きる」と思い込ませ、恐怖心を操ることでさらなる幻聴や幻覚を見せていたのでしょう。
ラストの「二度としないよ」に隠された意味とは?
ラストシーンでジェーン・ドウの遺体を運ぶ警官が放つ「二度としないよ」というセリフを考察していきます。
浮かび上がるジェーン・ドウを利用した陰謀説
ラストシーンから考えられるのは、以下の2つです。特に1つ目の説は、比較的多くの人が支持している説となっています。
・ジェーン・ドウの力を試すためもしくは殺人計画のために土から掘り起こした
保安官や警官が黒幕である説です。一連の事件は計画的に行われた可能性も少なくありません。
トミーとオースティンが恨みを買ったとは考えにくいため、次に運ばれる予定のバージニア・コモンウェルス大学の中に本物のターゲットがいるのかもしれません。
・ジェーン・ドウを取り返しに来た
長い間土の中に埋まっていたものの、何かの拍子で掘り起こされてしまったジェーン・ドウを警官が取り返しにきた説もあります。
「二度としないよ」と言った警官自身もジェーン・ドウと同じような体を持っているということも考えられるでしょう。生前から親しい間柄であった2人が数百年経った今も協力して何かを成し遂げようとしているのかもしれません。
もちろんその後は大学に運ばず、行方をくらますと考えられます。
実はただのセリフだった可能性も
このシーンをよく観察すると、彼の耳にはインカムのようなものが付いていることがわかります。ジェーン・ドウに話しかけているのではなく、妻や恋人と電話していたのではないか?という説もあるのです。
遺体は州外の大学へ運ぶことになっているため、妻や恋人が警官の長距離移動を心配したのかもしれません。では、なぜジェーン・ドウの方に視線を送っていたのでしょうか。それは、「ジェーン・ドウによる事件がなければ」という怒りや恨みの表れだと考えられます。
しかし、トミーやオースティンの恐怖心を操った「Open Up Your Heart」が流れていることから、彼もジェーン・ドウの標的になってしまう可能性が高いでしょう。
『ジェーン・ドウの解剖』で続編の話も出ている?!
次回作が期待できるようなラストであったジェーン・ドウの解剖ですが、今のところ続編の制作は予定されていないようです。アンドレ・ウーブレダル監督はその他の話題作も手掛けているため、続編を制作するのは難しいのではないでしょうか。
しかし、アンドレ・ウーブレダル監督は続編について「続編を制作するなら彼女が蘇るストーリーになる」と言及しています。機会や時期が合えば、続編が期待できるかもしれません。
ホラー好きの方から「怖い」と絶賛される映画となっているため、数年後にまた続編の話が出てくるのではないでしょうか。気になる方は、随時情報をチェックしてみてください。
ジェーン・ドウの解剖のまとめ
検死のシーンもリアルですが、視覚だけでなく「音」でもしっかりと恐怖を煽ってくる映画です。アメリカのホラー小説家であるスティーブン・キングすら「1人で観てはいけない」と注意喚起しています。
ジェーン・ドウの解剖ならではのグロテスクシーンや恐怖シーンは、それほどリアリティ溢れる映像になっているのです。しかし、ジェーン・ドウの解剖はただ怖いだけでなく、しっかりと伏線が用意されている映画です。
愛猫スタンリーの死やラジオから流れる内容など、細かい部分にもしっかりと意味があるため、見ごたえ抜群なのです。ホラー要素だけでなく、ストーリー性も楽しみたい方にはとてもおすすめの映画となっています。
ホラー映画が好きでまだジェーン・ドウの解剖を観ていない方や、ホラーが苦手でも気になってしまうという方は、U-NEXTやNetflixなどの動画配信サービスで配信されているのでぜひご覧ください。