史上最強の鬱映画ダンサーインザダークとは?
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タイトル:Dancer in the Dark(邦題:ダンサーインザダーク)
本国公開:2000年5月17日
日本公開:2000年12月23日
製作会社:ゼントロパ・エンターテインメンツ
配給:ニュー・ライン・シネマ(日本配給: 松竹・アスミック・エース)
受賞歴:第53回カンヌ国際映画祭パルム・ドール、第53回カンヌ国際映画祭女優賞、第24回日本アカデミー賞最優秀外国作品賞、第16回インディペンデント・スピリット賞外国映画賞、第43回ブルーリボン賞外国映画賞、第13回ヨーロッパ映画賞作品賞
ダンサーインザダークは、2000年公開のデンマーク映画。
2000年に開催された第53回カンヌ国際映画祭 では、 最高賞であるパルム・ドールを受賞しています。
その他ヨーロッパ映画賞や日本アカデミー賞など様々な面で高く評価されている作品です。
たくさんの賞を受賞している中、口コミやレビューでは「トラウマになった」 や「二度と見たくない」 など鬱映画としての側面を持ち合わせる珍しい映画になっています。
ダンサーインザダークの簡単なあらすじ(ネタバレなし)
ダンサーインザダークあらすじ
アメリカで暮らすセルマはチェコからの移民である。
息子ジーンと借家のトレーラーハウスで生活するセルマはとても貧しいが、隣人や仕事仲間たちに支えられつつましく生活していた。
視力が悪く、常に眼鏡を身に着けているセルマは大のミュージカル好き。
通っている小さな劇団の講演会では主役に抜擢され、ミュージカルの舞台で歌って踊るという夢を叶えるために練習に励んでいる。
しかし、セルマには誰にも言っていないある秘密があった…。
ダンサーインザダークでは、セルマという母親が主人公の物語。
貧困な彼女の身に起きる悲劇がかなりショッキングなストーリー展開を生んでいきます。
お化けが出てくるホラー映画とは違った意味で恐ろしい物語が特徴です。
ダンサーインザダークのキャスト・スタッフ
ダンサーインザダークキャスト・スタッフ
【監督・脚本】ラース・フォン・トリアー
【キャスト】
セルマ:ビョーク
ジーン:ヴラディカ・コスティック
ビル:デヴィッド・モース
リンダ:カーラ・シーモア
キャシー:カトリーヌ・ドヌーブ
ジェフ:ピーター・ストーメア
ブレンダ:シオバン・ファロン
ダンサーインザダークの監督・脚本は 過激な表現で物議を醸す作品を作り続けるデンマークの映画監督、ラース・フォン・トリアー。
鬱映画の代表格とも言えるトリアー監督は、様々な精神疾患を抱えており「映画作り以外の全ての事象が怖い」とインタビューで語っていたこともあります。
散発的なうつ病にトリアー監督自身悩まされており、評論家の分析では彼のつくる映画は自身の「精神治療」的な役割を果たしていると話す人もいます。
そんな監督が作り出したダンサーインザダークでは、 独創的な曲を作り出す世界的アーティスト・ビョークが主人公セルマを演じます。
ビョークは映画主演2作品目にして、第53回カンヌ国際映画祭女優賞を受賞しており盲目という難しい名目のセルマを見事に演じ切っています。
歌姫というイメージからは遠くかけ離れている盲目の女性ですが、本当に目が見えていないのではないかと思わせる目の焦点があっていない演技と、どこか不穏さを感じさせる雰囲気はまるでセルマが本当に存在する人間なのではないかと錯覚させるほどです。
後述するビョークによって変更されたラストのエピソードなどからも、並々ならぬ覚悟で演じたという思いが伝わってきます。
胸糞注意!人によっては二度と見たくない問題作「ダンサーインザダーク」
何度も言いますが、ダンサーインザダークは非常に暗く重たい作品です。
見る人によっては鑑賞後落ち込んでしまうようなショッキングな描写や展開が多いため、万人にオススメできる映画とは言えません。
ダンサーインザダークを鑑賞した人の口コミ(ネタバレなし)とダンサーインザダークが見れる動画配信サービスをご紹介していきます。
見ないほうがいい?ダンサーインザダークを見た人の口コミ感想(ネタバレなし)や評判は?
Twitterで「ダンサーインザダーク」と検索すると、あまりの内容に体調が優れなくなった方や気分が悪くなった方などの口コミが見られます。
https://twitter.com/shiraae526/status/1393923771010936832?s=20
鑑賞タイミングが大事なようですね。
十分に元気があるときに、しっかり身構えて視聴することをオススメします!
ダンサーインザダークが視聴可能な動画配信サービス
ダンサーインザダークが見れる動画配信サービスは以下6つ。
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動画配信サービスを詳しく知りたい方は下記の記事を参考にしてください!
ダンサーインザダークのネタバレあらすじ
それでは、ダンサーインザダークのネタバレあらすじをご紹介していきます。
ここからはネタバレを含む内容になりますので、未見の方はご注意ください。
【起】視力の悪いセルマの生活
セルマは街の小さな劇団で講演に出るため、歌とダンスを練習をしていた。
小さいころからアメリカのミュージカル映画が好きな彼女は、チェコからアメリカに移り住んだ移民である。
セルマは視力が悪いというアドバンテージがありながらも、劇団員に支えられ次の講演会では主役を演じることになっていた。
彼女は昼はプレス工場、夜は内職の兼業をしながらも貧しく、息子のジーンとその日暮らしを強いられている。
住む場所が確保できない彼女たちは、隣人のビルが持っているトレーラーハウスを借家にして生活していた。
ビルは妻のリンダと一軒家で暮らしている警察官。
親の遺産を相続したビルはリンダとぜいたくな暮らしをしているが、セルマをないがしろにはせずに、仕事終わりの夜には自宅にセルマたちを招いたり、朝早く仕事に外出したセルマの代わりに息子のジーンを学校に送迎してくれたりする親身な存在である。
ビル夫妻以外にもセルマの周りには親切な人々がいる。
工場で共に働くキャシーは、セルマと同様ミュージカルが好きで稽古に出たり、休日にミュージカル映画を見に行ったりする友人である。
セルマのことが気になっているジェフは、仕事終わりにセルマを送迎するために車を出して待ってくれているが、素直になれないセルマは毎回誘いを断ってしまっている。
チェコに住む父にお金を送金しなければならないセルマの代わりに、ビル夫妻とキャシー、ジェフは息子のジーンに欲しがっていた自転車をプレゼントするなどしてセルマの生活を支えていた。
貧しいながらも、セルマは温かい人たちに救われて仲睦まじく暮らしているのであった。
【承】セルマの秘密と告白
ある日、トレーラーハウスで内職しているセルマのもとにビルが訪ねる。
思いつめた表情のビルは遺産が尽きてしまい、このままだと家を差し押さえられてしまうことを告げる。
巨額の遺産を譲り受けたビルであったが、妻のリンダは浪費家でありとっくに遺産は使い切ってしまっていたのだ。
一文無しであることを知ったリンダはきっと自分のもとを去ってしまうと考えるビル。
それを恐れてなかなか本人に言い出せないと悩みを吐露する。
不安なビルを慰めるためにセルマも自分の秘密を打ち明ける。
実はセルマは徐々に視力が下がり、最後には失明してしまう先天性の病気であった。
すでに、ほとんど見えていない自分はもうじき失明してしまうのだというセルマ。
そして、この病気は息子ジーンにも遺伝すると話す。
セルマがチェコからアメリカに移り住んだ理由は、ジーンが失明しないように高度な手術を受けさせるためだったのだ。
精神的な動揺が目の症状の悪化に繋がるというセルマは、目のことをジーンには伝えていない。
手術には高額な手術費が必要であり、セルマはその手術費を稼ぐために昼夜問わずに働いていた。
チェコの父に送金していたというのも嘘で、全てはジーンのためにお金を貯金しているのであった。
秘密を打ち明けたセルマとビルは、お互い内密にするという約束を交わす。
【転】ビルの裏切りが生んだ悲劇
もう少しで手術費が貯まるセルマは、工場での夜勤と内職を増やし始める。
完全に失明してしまう前に、ジーンへの手術費を稼ごうと考えていたのだ。
しかし、セルマの視力はもうほとんど見えない状態になってしまっていた。
おぼつかない手つきで働くセルマは、 工場で流れるプレス機の音を音楽に見立ててミュージカルの空想を思い描き始める。
空想に気を取られたセルマは担当していたプレス機を誤って操作し、プレス機を壊してしまう。
これがきっかけで、セルマは仕事のクビを宣告される。
視力もなく働き口を失ってしまったセルマは、何とか現在のお金で手術を受けさせてもらえるよう全財産を持って病院へ交渉しに行こうとする。
しかし、いつも手術費を保管していた缶入れの中はもぬけの殻。
お金がないことに気づいたセルマはビルのもとへ向かう。
手術の話を聞いたビルは目が見えないセルマを騙して、手術費を貯めている缶入れのありかを知り盗んでしまっていた。
「今月のローン分だけ」
「ちゃんと返すから貸してくれないか」
とセルマを言いくるめようとするビルであったが、セルマはこれを拒む。
焦ったビルは銃を突きつけ、セルマにあらぬ罪を擦り付けようとするが誤作動で拳銃の弾が足を貫通してしまう。
動けなくなったビルは平静に戻り、自分が非情なことをしてしまったと懺悔するがセルマの大金が入ったポーチを渡すことだけはできなかった。
自分が罪を犯し引き戻せないこと、もう妻リンダと過ごせないことを悟ったビルは「ポーチを取り返すなら俺を殺してからにしてくれ」 とセルマに懇願する。
泣きながら、拳銃を弾くセルマであったが目が見えないため致命傷を与えられず全ての銃弾を使いきってしまった。
血だらけになりながらもポーチを離さないビル。
セルマはポーチをしまっていたアタッシュケースでビルの頭を何度も何度も叩きつける。
ビルは顔の原型がわからない姿となって死んだ。
ビルを殺してしまったセルマのもとに何も知らないジェフが到着する。
事件が起こる前にセルマに会っていたジェフは、病院へ送迎を頼まれていたのであった。
病院に着いたセルマは何とか全財産で手術が受けられるよう交渉することに成功するが、その後ジェフと向かった劇団レッスン場で警察に身柄を確保される。
セルマの頭の中ではビルを殺してその場を離れるときも、逮捕される直前も、受け入れがたい現実から逃げるように空想のミュージカルが流れ続けていた。
【結】最後の107歩
セルマは法廷で裁判を受けていた。
「自分のお金が盗られ、ビルに殺せと頼まれたから」 と真実を主張するセルマであったが、肝心のお金は病院ですべて支払ってしまっていて物的証拠がない。
目の手術のことはジーンにどうしても伝わってほしくないため、病院のことは証言しないままでいた。
セルマはビルの秘密自体にも固く口を閉ざしているため、仕方のなかった事件の真相には届かない。
ビルの妻のリンダはビルが殺される前に「銀行にお金をおろしに行ってくる」と言っていた嘘を信じて主張していたために、セルマは親身になってくれていた裕福な隣人を金目当てに殺した犯人として厳しい立場に置かれていた。
その後も、 法廷で嚙み合わない話を続けるセルマは虚言癖のある凶悪犯罪者に仕立て上げられ死罪・絞首刑の判決を言い渡されるのであった。
事件に不審な点があると感じたジェフは送り届けた病院へ向かい、ジーンの目の病気とセルマの真実を知る。
情報を開示すれば必ず減刑されるとセルマを励ますジェフとキャシーであったが、新しく弁護士を雇うにはジーンの手術費を使わなければならなかった。
自分より息子ジーンが全てと言い切るセルマは再審を受けず、死刑執行を受け入れる。
音の聴こえない牢獄は、セルマにとって地獄のような場所であった。
女性刑務官のブレンダに連れられてセルマは絞首台へ移動していく。
足がすくんで動けないセルマは、ブレンダに足踏みの音を出してもらい最後の空想に浸る。
踊りながら歌う空想を思い描きながらセルマは絞首台までの107歩を進んでいった。
絞首台で取り乱し泣きわめくセルマを見て階下の立ち合い室にいた友人のキャシーは戦慄する。
キャシーはセルマにジーンの手術が成功したことを伝え外で待っているジーンの眼鏡を渡した。
セルマは落ち着きを取り戻し、一人で絞首台に立ち上がり歌い始める。
「最後から2番目の歌」を歌うセルマは、もう空想で踊ることもない。
力強く歌っているセルマの足場が外れ、絞首刑は実行された。
首を吊ったセルマを映しながら、画面には
「they say it’s the last song they don’t know us, you see It’s only the last song If we let it be」
(これは最後の歌じゃない 分かるでしょう? 私たちがそうさせない限り最後の歌にはならないの)
と表示される。
カメラは天に向かって幕引きしていくのであった。
ダンサーインザダーク気になる5つのネタバレ考察
ダンサーインザダークのネタバレ考察を5つ解説していきます。
わからなかった部分をクリアにしていきましょう!
ダンサーインザダークは実話?原作はあるの?
現実的な悲劇が起こるダンサーインザダークですが、 本作は監督のラース・フォン・トリアーが脚本も務めているオリジナル映画です。
トリアー監督自身が自ら手がけた原作本も発売されているので、実話であるといった事実はありません。
とはいえ、ここまでリアリティのある話だと実話に感じてしまいますよね。
現実でこのような悲劇が起こらないことを祈るばかりです…。
ホラー映画より怖い!特徴的な演出の数々
ダンサーインザダークは、独特な演出表現が作品を唯一無二のものにしています。
特徴的なものをいくつか取り上げて解説していきましょう。
独特な撮影方法ドグマ95
ドグマ95とは、本作監督ラース・フォン・トリアー含む4人の監督が立ち上げたデンマークにおける映画運動の一種です。
「純潔の誓い」と呼ばれる10個のルールを守ってつくられた映画方式のことを指します。
10個のルールの中には、「スタジオセットでの撮影を禁止すること」 や「必ず手持ちカメラで撮影すること」 、「映像と関係のないところで作られた音(効果音)をのせてはいけないこと」 など様々な決まりごとがあり、ルールに従った作品だけがドグマ95と名乗ることが可能です。
ルール内容を見ていくと 予算を使ってクオリティのあるものをつくるのではなく、ありのままの素材を用いてどれだけ映画というフィクションにリアリティを追求できるかという試みのようです。
ダンサーインザダークはミュージカルシーンでBGMが流れるなど、完璧なドグマ95作品ではありませんが、ミュージカルシーンを除けば手持ちカメラで撮影されていることやBGMを使わないつくりなどドグマ95の精神を受け継いでいる作品といえるでしょう。
恐ろしいストーリーであるのにも関わらず実話なの?と錯覚してしまうようなダンサーインザダークは、 ドキュメンタリーを思わせる手持ちカメラや過剰な演出が入らないことが起因していると考えられます。
異質なミュージカルシーン
ダンサーインザダークの最も特徴的な部分はミュージカルシーンがある点ではないでしょうか。
本来のミュージカル映画は作中でなんの説明もなく歌って踊るシーンが挟まれます。
一種のジャンルとして確立しているから、みんなが楽しめるものであって現実ではミュージカルは成り立たないものです。
いきなり電車で隣に座っている人が歌って踊り始めたら引きますよね。笑
作中でミュージカルに興味がないジェフも「僕はしないよ 急に踊りだすなんてこと」 とセルマに言及しているシーンがあります。
ダンサーインザダークでのミュージカルシーンは基本的にセルマの妄想の中で繰り広げられていくものです。
ミュージカルシーンに入る直前にはセルマがその場で聴いている物音をもとにしてミュージカルシーンへ移行します。
ミュージカルシーンに切り替わるとそれまでの手持ちカメラの映像とは異なり、細かいカット割りと手振れのない映像に変わっていきます。
ドキュメンタリーチックな現実描写と、映像美的なミュージカル描写を完全に分けることで独善的なセルマの妄想がより異質に感じられるように演出されているのです。
セルマの身に起こる映画的伏線の数々
とにかく主人公のセルマが悲惨な目にあってしまうダンサーインザダーク。
初見はそのインパクトが大きすぎる映画ですが、この映画はかなり綿密にシナリオがつくられています。
例えば、 空想ミュージカルシーンへ入る導入の生活音は前半のシーンでさりげなくセルマが聞いている音だったりします。
プレス工場で働いているときの音はもちろん、通勤する際に電車が線路を走る音、レコードの物切れ音、自転車の車輪が回る音などなど…。
セルマが何気な聞いている音がミュージカルシーンに繋がっていくことを前半で示唆しているのはサブリミナル的で面白いです。
また、 前半部分ではセリフ1つ1つが後々セルマを追い込んでいく要因にもなっています。
浪費家のリンダにセルマはお金をいっぱい持っていることを言うと喜ぶからと遺産金の話をし、これがビルを殺害した動機として捉えられてしまいます。
ビルとミュージカルの話をするセルマは「最後の歌は聴きたくない。最後から2番目の曲が終わったら映画館を出る。そうすれば映画は永遠に続く」と言っていましたが、これはラストシーンでセルマが絞首台で歌う「 最後から2番目の歌」という歌を示唆しています。
以上のように、ストーリー自体はかなり丁寧に描写されていることが多いと感じました。
セルマへの追い込みが容赦なさすぎますよ、作り手側…。
盲目なセルマは知的障害者だったのか?
目が見えないキャラクターとして明言されていたセルマでしたが、それ以外にもかなり常識に逸した考え方を持ち合わせていると感じました。
ダンサーインザダークをネットで検索すると、知的障害などのワードが予測変換でも現れてきます。
個人的にセルマの目が見えないという点は、物事の分別がつかない「盲目」な存在というメタファーでもあったのかなと感じました。
セルマは息子ジーンに対する無償の愛と、自分が大好きなミュージカル以外になると途端に無知になってしまったり、判断力が鈍くなってしまう傾向がありました。
そしてセルマはジーンとミュージカルに対しては異常なほどこだわりが強く、それ故に今作のような結末を迎えたのではないかと思います。
セルマの周りには、彼女を支える多くの人たちがいました。
親切なキャシーやジェフはビルを殺してしまった後にも、セルマを救おうと尽力しましたがセルマは拒んでしまいます。
自分に手を差し伸べてくれる友人たちを振りほどいてまでも、身勝手に自分のこだわりを貫き通すのはセルマ自身の生き方なのかもしれません。
純粋でありながらも偏屈であるセルマの描かれ方は、何か一つにこだわりを持って生きている人間として描写されているように感じます。
衝撃的なラスト!最後の字幕の意味とは?
物語のラスト、セルマが首を吊った後に字幕で
「they say it’s the last song they don’t know us, you see It’s only the last song If we let it be(これは最後の歌じゃない 分かるでしょう? 私たちがそうさせない限り最後の歌にはならないの)」
と流れますがこの意味を考えてみましょう。
セルマが最後に歌っていた「最後から2番目の歌」はミュージカル映画はずっと続くという意味で歌われていました。
これはセルマがこれからも生きていくという意味と重なります。
辛いことがあったとしても、まだまだ力強く生きていくという意思を表現していたセルマの願いは叶わず死んでしまいます。
どんなに貧困だったとしても、どんなに社会的立場が弱かったとしても人は生きようとする意思を持っている限り生き続けていい。
人の死を奪う権利はないのだと死刑反対のメッセージであると共に、人の生き死にがお金によって決まってしまうなんてことはあってはならないという意味だったのではないでしょうか。
セルマが貯金していた大金は、ジーンの目の手術かセルマの再審議のどちらかしか選ぶことができませんでした。
そして、キャシーやジェフはセルマに死んでほしくはありませんでした。
その意思も虚しく何もできなかったのはお金持ちが得をする資本主義の批判でもあるのかもしれません。
息子の手術が失敗する!?さらにバットエンドな本当の結末
実は、この映画のラストはセルマ演じたビョークによって書き換えられたラストでした。
監督兼脚本のラース・フォン・トリアーはもともと、「ジーンの手術が失敗したと聞き、絶望状態のセルマがそのまま絞首刑される」 にする予定だったそうです。
いくら何でも救いがなさすぎる…と感じたビョークは展開変更を打診し今の形になったんだとか。
もし、変更しなければ今以上にトラウマな作品として名を馳せていたんじゃないかと思うほど凄まじいラストになっていたのではないでしょうか。
想像するだけで、絶望です…。
また、そういった当初の流れもあってか今作では事件を起こしてから全く息子のジーンが登場しなくなります。
キャシーやジェフの二人からジーンの近況がセルマに伝えられますが、果たしてこれは本当に事実をセルマに伝えているのか疑問が残ります。
セルマはジーンに、無償の愛を持って接していました。
これは物語を見ていればセルマがいかにジーンを大事にしているかわかります。
しかし、
息子であるジーンは登場自体少なく心情を読み取ることができません。
ジーンに感情が見れるシーンは、冒頭で学校に行きたくないというシーン、セルマの台本を読んでと頼まれしぶしぶ代わりに読むシーン、自転車を持っていないのがクラスで自分だけだというシーンだけです。
12歳のジーンは思春期にも入っているようで、貧乏な暮らしをしている自分にコンプレックスを持っているようにも考えられます。
もしかすると、貧乏である母親が殺人犯になってしまったショックはかなり大きく心を壊してしまっているかもしれません。
もしかすると、
これから生きていく自信が持てずに母親セルマを恨んでいるかもしれません。
あまり考えていて楽しいものではありませんが、こんなに鬱々しい展開を作り出してしまう監督さんであるならば、そういった話を考えていてもおかしくはないのではないかと思ってしまします。
芸能人も賛否両論!ダンサーインザダークの感想・口コミ
見るものにいい意味でも悪い意味でも衝撃を与える作品、ダンサーインザダーク。
私が初めて見終わって茫然自失となった後に頭に思い浮かんだのは、「みんなこの映画どう思ってんだ!?」 でした。
そこで、賛否両論のレビューいくつかピックアップして取り上げてみました。
芸能人の方々も本作について言及しています。
やっぱり相当鬱なの?と気になる未見の方も、こんな感想持つ人もいるのか!と気になる鑑賞済みの方も参考にしてみてください!
【涙が止まらない】絶賛の感想と口コミ
本当に救われない物語。
でも、深々と心には刻まれた。
確実に普通ではない主人公が悪い!
と常識人ぶる必要はないのかなと思ったのが映画全体の感想。
その人が幸せかどうかっていうのは映画の中の役になりきらないとわかりえないし、結局は見た人が自分は幸せだったと思うかどうかの主観でしか見れないものだと思う。
物語は道徳的にどうなんだよ…と思わせるくらい悪趣味なものだけど、これを見た人がそう感じたりすることで人間の変わらない幸せや小さな善意を浮き彫りにさせているのかなぁと感じた。
鬱映画で紹介されていたので気になって鑑賞。
バッドエンドなミュージカル映画ってそんなのあるの?
って感じだったけど、これはまさしくバッドエンドミュージカルだった。
ミュージカルに悪いことなんて起きないものっていう作中での言及がこれでもかってくらい逆説的に描かれて本当に心えぐられた。
手ブレカメラの現実感と、妄想ミュージカルのギャップがよくできててめちゃくちゃ辛くなった。
辛すぎて見終わった後泣いてしまったけど、見てよかったなと思える映画だった。
こんなに感情にダイレクトに響く作品はなかなかない。
バットエンドではあったのかもしれないけど、個人的にはとてもスッキリした終わり方だと思ったなぁ。
アクション映画なんてもんじゃない、手に汗握る展開。
こんなにヒリヒリしながら映画を見たのは初めてかもしれない。
今年1泣いたかもしれない。
ボロボロ泣いてしまった。
落ち込む映画って他のレビューで読んだけど、全く別の感情が溢れ出た。
愛を描き切るのにここまでしてしまうトリアー監督が凄まじすぎる。
というより、この映画を作り出したスタッフ・キャストが本当に狂気じみてる、素晴らしい。
きっと、めちゃくちゃ大変な撮影だったんだと見てわかる。
ビョークなんてほぼ病んでるでしょコレは。
残酷で虚しすぎる展開のオンパレードだけど、愛に溢れている傑作だ。
本当に見るのには勇気がいるし、体力をごっそり持っていかれる作品だけど大好きな映画になった。
歌声は魂を揺さぶる、ビョークありがとう。
マツコ・デラックス
バラエティ番組で人気のタレント、マツコ・デラックスは本作をラジオ番組で紹介していました。
様々な人生経験を積んできたマツコさんは、この映画は見るタイミングによって落ち込んだり元気になったりする多角的な映画として評しています。
30歳頃の貧しく暮らしていたマツコさんが初めてこの映画を見たときは、 セルマと自分が重なって映ってしまったことから素直に作品を受け止められなかったと話しています。
しかし、ある瞬間から人生はもっとわがままに身勝手に生きていいというメッセージをこの映画から感じることができるようにもなったんだとか。
本作の登場人物は、 みんながみんな自分がしたいことを身勝手に成し遂げようとします。
息子へ目の手術を受けさせたいセルマ、それを助けたいと手を差し伸べるキャシーやジェフ、妻のリンダと過ごしていたいからセルマのお金を盗んでしまったビル。
作中で身勝手に生きている姿が、人それぞれの考え方や幸せの違いなんじゃないかと語っているのかもしれません。
松本人志
ダウンタウンの松本人志さんは、「松本人志のシネマ坊主」という著書の1巻においてダンサーインザダークを評しています。
この著書、10点満点で映画を評価しているのですがダンサーインザダークは満点の10点。
しかし、ダンサーインザダークを見て泣いたって人はこの映画のことをよくわかっていない、基本的に狂人の映画なんです と独自の見解を綴っています。
映画監督の側面を持つ松本人志さんならでは見え方があるようですね。
【イライラ】批判的な感想と口コミ
全ての登場人物に感情移入できなくてイライラ。
特に主人公が嫌いな人の傾向全て網羅していて本当に不快だった。
ここまで感情を逆なでする作品はないような気もする。
赤ちゃんが欲しかったけど遺伝するのは知ってたならちゃんと働けよ。
妄想に逃げるな。
親切な友人が差し伸べた手を拒むのに自分の殻に閉じこもってばっかり。
わがままな幸せ妄想家は、自分の幸せだけを願ってればいい。
僕は絶対にそいつを幸せ者だとは尊重しない。
胸糞悪すぎる。
警官のビルがクソすぎるけど、人の好意を受け取らなかったり、誤解を解こうとしないセルマにめちゃくちゃ腹が立つ。
ミュージカルシーンは美しい描写だったけど、現実から逃げ出すというのが無理だった。
頭の中で逃げるんじゃなくて、現実でも逃げてよ。
どんな考え方をしていたら、この物語が思いつくのか。
ましてや映画にしようと思うのだろうか。
胸糞映画だと聞いていたくらいだったけど、冒頭のセルマ登場シーンで既にやばいと感じた。
このタイプの主人公に「鬱」というワードが掛け合わされると良くないことしかおきない。
純粋な生き方であると思うが、不器用な生き方が招いた不遇な生き方に見えるのは間違いないと思う。
絶望映画が好きな人にとっては、最高の映画なんじゃないだろうか。
私は途中で消そうと思ったし、もう二度とこの作品を見ないと思う。
しんど…。
優しい人に囲まれながら、暮らしていただけなのになんでこうなっちゃうの?
救いようがない。
映画を見て悔しいと思うことってあるのね。
やるせなさと辛さで落ち込むわ…
ご都合展開ってよくあるけど、それはカタルシスであったりハッピーエンドに向けた装置の1つだと思う。
この映画はただただ主人公を不幸に陥れるためにご都合展開を使っているように感じた。
用意された悲劇のために都合をつけている展開は、カタルシスなどないしただただ監督の悪趣味なんじゃないか。
グロいとか気持ち悪いシーンだなと感じた映画はたくさんあったけど、映画自体を気持ち悪いと思ったのは初めてかもしれない。
小藪千豊
吉本新喜劇の座長である小藪千豊さんはラジオ番組でダンサーインザダークを一番嫌いな映画として批判していました。
セルマのお金を盗んだビルに対して許せない感情を持ったといっています。
かわいそうなセルマに感情移入することを忘れて、劇場を出た後にもビルへの怒りにイライラしたと語っていました。
小藪さんの一番嫌いという意見は、決してこの映画を馬鹿にしているわけではなくそれほどまでに感情を奮い立たせる作品であることを証明しているようにも感じます。
【筆者感想】気持ち悪さの正体は人間と社会の理不尽さ
最後に筆者がこの映画を見た感想を書いていきたいと思います。
初めてこの映画を見たときに、すごく理解のできない映画だと感じました。
どちらかといえば批判的な感想を持ちましたが、理解できないという感覚が珍しく何度か見返す内に気づいたことがあります。それは、人間の思惑と社会の構造の理不尽さです。
前述しているように、ダンサーインザダークはかなり綿密なシナリオでつくられています。
ということは自分が感じた嫌悪感も意図して作られているということ。
筆者自身がこの映画で感じた嫌悪感は批判的な感想にもあるように救われないセルマが、ミュージカルの空想に浸ってしまう点です。
救われないセルマは自分が犯してしまった罪を脳内だけで許し、助け舟を出してくれる友人たちを振り切って死刑へと追い込まれてしまいます。
それだけミュージカルが好きなのであれば、それだけ息子を救いたいのであれば、もっとやれることがあったのではないかという感情を抱きました。
しかし、 逆に言えばセルマはミュージカルと息子さえ良ければあとはなんでも良かったのかもしれません。
たったのそれだけ?と思うかもしれませんが、人の価値観は1つではありません。
セルマにとってはそれは命よりも大事なことだったのではないでしょうか。
手術が成功したと知ったセルマは、堂々と歌い自らの命を燃やして死んでいきました。
ジーンが救われたことと大好きな歌を歌えたことは、セルマにとって自分の人生が幸せだったことの証明なのかもしれません。
もしそうであれば鑑賞する側によってはセルマはなんて身勝手なんだと思う人がいる一方で、死んだセルマは幸せなのですから個人の思いは主観的で理不尽なものであると感じます。
また、セルマを追いやった社会構造にも理不尽さを感じました。
裁判ではチェコの移民であるセルマが、アメリカの警察官を殺したと言われていましたがこういった差別意識がセルマの意見を聞かない理由になっていたとも考えられます。
絞首刑を逃れるための再審では、生きたいのであれば高額な雇用料を払わなければならないというのも、人命よりもお金が大事なのではないかという問題提起をしているように感じます。
人間を尊重するために人間が作り出したルールが社会であるはずです。
それなのに、立場の低い人々を責め立てるように描写されるのは何故なのでしょう。
最後の字幕「they say it’s the last song they don’t know us, you see It’s only the last song If we let it be(これは最後の歌じゃない 分かるでしょう? 私たちがそうさせない限り最後の歌にはならないの)」がセルマの悲劇を繰り返さないようにと物語っているように感じます。
このように、人間ひとりひとりの一筋縄ではいかない思惑と1つに縛られてしまっている社会のルールがありのままに描写されるダンサーインザダークはただの胸糞映画ではないように感じます。
見ている人にダイレクトに何かを植え付けて考えさせられる映画だと筆者は思いました。
ダンサーインザダークネタバレ記事まとめ
ダンサーインザダークネタバレ記事についてまとめます。
ダンサーインザダーク概要
・2000年公開のデンマーク映画。カンヌ国際映画祭においてパルムドールを受賞するなど様々な所を受賞している。
・監督はラース・フォン・トリアー。主演は世界的アーティスト、ビョーク。
・重くショッキングな内容のミュージカル映画。
ダンサーインザダークネタバレ内容
・遺伝する病気で失明するセルマが、息子を救おうとする物語。
・セルマは息子を救うため、犯罪者となり最後は絞首刑で死んでしまう。
・現実から逃避するために空想のミュージカルシーンが描かれるのが特徴
ダンサーインザダーク考察ポイント
・盲目なセルマの目的と願い
・最後に表示される字幕の意味
・最後のシナリオが主演のビョークによって変更されたにもかかわらず、たくさんの賞を受賞している点
鬱映画の代表作品ダンサーインザダーク。
見るには心の準備が必要ですが、見る人に様々な感情を与えてくれる作品です。
ぜひ、すぐに太陽の陽を浴びて元気になれるような一日に見てみてください!笑
ダンサーインザダークをU-NEXTで視聴する