『ファンタスティックプラネット』は、ルネ・ラムー監督が手掛けたフランスとチェコスロバキアの合作アニメ映画です。
原作は、ステファン・ウルによって生み出されたSF小説「オム族がいっぱい」になります。
切り絵アニメーションの手法を活用した独特な世界観が、一部のファンの間で絶大な人気を誇っているカルトアニメとして知られています。
そのため、どのような作品なのか気になっている人もいるでしょう。当記事では、ネタバレありで徹底考察していきます。
更新日:2024-5-7
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『ファンタスティックプラネット』は、ルネ・ラムー監督が手掛けたフランスとチェコスロバキアの合作アニメ映画です。
原作は、ステファン・ウルによって生み出されたSF小説「オム族がいっぱい」になります。
切り絵アニメーションの手法を活用した独特な世界観が、一部のファンの間で絶大な人気を誇っているカルトアニメとして知られています。
そのため、どのような作品なのか気になっている人もいるでしょう。当記事では、ネタバレありで徹底考察していきます。
まずは『ファンタスティックプラネット』のあらすじをご紹介していきます。
銀河にあるイガムという惑星は、赤い目を持ち青い体をしたドラーグ人と呼ばれる巨人族が統治していました。
人間のようなサイズのオム族(以降は人間と表記)は、下等民族という扱いを受けています。
ある時、人間の女性が赤ちゃんを抱きながら巨人族・ドラーグ人のチンピラに追われ、いたぶられた末に赤ちゃんを残して亡くなってしまいます。
そこにドラーグ人の少女・ティバがやってきて、赤ちゃんを家に連れて帰りました。
赤ちゃんは「テール」と名付けられ、拘束用の首輪をはめられペットとして育てられることになります。
イガムにおける1週間は、人間にとっての1年と同じ長さでした。
そのため、テールはみるみるうちに成長し、あっという間に自我を持つ少年へと育ったのです。
ティバとテールはいたずらを仕掛けてじゃれるほど仲が良く、ティバはテールに対して愛情をさらに注ぐようになります。
月日が過ぎ、ティバは教育を受ける年齢になります。レシーバーと呼ばれる道具を使い、巨人族・ドラーグ人の歴史を学ぶのです。
その傍らでテールも一緒に学び、一生記憶に残るといわれる知識を吸収していきました。
テールの好奇心はどんどん膨らんでいき、ティバがいない隙を見計らってレシーバーを自分の首輪につなぎ知性を磨いていきます。
ティバの父親であるシンは、それを良く思わずに邪魔をすることもありました。
ティバが思春期に差し掛かるとペットであるテールと遊ばなくなり、テールも成人並みの知能を持つようになりました。
そして、テールはタイミングを見計らい捕まっていた家から逃げ出します。
初めて体感する外の世界で危機にさらされますが、人間の娘によって助けられました。
その娘に導かれながら、テールは人間の秘密の住処である「廃園の大木」へと足を踏み入れることになります。
そこでは大勢の人間が暮らしており、巨人族・ドラーグ人から盗んだ物資で生計を立てていました。
人間は最初の頃こそテールを馬鹿にしていましたが、知性の高さを目の当たりにし、評価を改めることになります。
その結果、廃園の大木においてもらえることになりました。
その夜、寝付くことができなかったテールは外に出ていきます。
すると、そこには人間の男女が不気味な建物をよじ登り、不思議な光り物を口にしていたのです。
建物から出てきた女性らは、裸になって男性を魅了し始めます。
つがいとなった男女が契りを交わすという不思議な光景を、テールは冷めた目で見つめていました。
また、何人かの人間はテールが持ってきたレシーバーを使って、自分自身も知識を吸収しようとします。
しかし、ボスによる妨害があり、部族間で仲間割れが起こってしまいました。
テールは、仲間割れが起こった原因として戦いに駆り出されます。
最初のうちはやられっぱなしでしたが相手を打ち負かすことに成功したため、ボスはテールのことを認めます。
そして、テールは一族に迎えられることになりました。
テールは少しずつ人間らしくなっていき、他の人はレシーバーを使って学習に励むようになっていきました。
テールはここに導いてくれた娘と惹かれあい、恋仲となります。
そんな中、巨人族・ドラーグ人は「人間狩り」と称した人類絶滅大作戦を計画します。
危険を感じた人間達は、大木に立てこもるための対策を講じることにしました。
テールは外の様子を確認するために住処を抜け出しましたが、気の緩みからか木の穴族と呼ばれる盗賊に囚われてしまいます。
木の穴族の族長を務めている女性に「ドラーグ人が人類を絶滅させようとしている」と説明しますが、聞き入れてもらえません。
説得も虚しく、その日テールは投獄されることになりました。
翌日、巨人族・ドラーグ人による人間狩りが始まります。毒ガスのようなものが撒かれ、人間は次々に息絶えていきます。
テールの縄を女族長が解いて一緒に逃げ出すと、ドラーグ人を人間の元に導いているのはガスマスクを付けた“愛玩具(人間)”だという衝撃の光景を目にするのです。
人間の命が脅かされている中で、テールの恋人やボスはまだ生きていました。
しかし、人間たちが隠れ家として使っている場所をドラーグ人が見つけ、ためらうことなく踏み殺していきます。
人間狩りをする巨人族・ドラーグ人に対して勇敢に立ち向かった人間の中には、死亡した者もいます。また、ボスも命を落としてしまいました。
女族長は、人間たちをロケットの墓場へと案内します。そこはドラーグ人が足を踏み入れないような場所となっていて、隠れるのに適した場所でした。
そのような状況下で巨人族・ドラーグ人が行っていた会議では「人間の知能が高いこと」「順応性があること」「繁殖していること」などに懸念を示します。
そして、今以上に人間狩りが重要になることを訴えますが、ティバの父親・シン知事だけはこれまで人間にしてきた残酷な仕打ちを顧みていたのです。
そして3つの季節が巡ります。
人間の感覚でいえば、15年もの月日が経過していました。人間は、ロケットの墓場に地下都市を作ることに成功し、そこに多くの人々が住み着きました。
しかし、最終的な目標は「野生の惑星」という星に移住する事です。
それを実現するために成人したテールが指揮し、レシーバーを使って磨いた知識を活用しながら、宇宙船を人間用に改良しようとしていました。
地上では巨人族・ドラーグ人の手によって放たれたドローンのような探索機が、人類の住処を探していました。
地下都市に侵入したドローンは、宇宙船を発見します。人々は建物に身を潜めていましたが、攻撃されることはなく地上へと戻っていきます。
その頃、テールたちの命を救った女族長は老衰で宇宙船に同乗するのが難しい状態になっていました。
そして「他の惑星で平和な世界を構築するように」と告げ、息を引き取ります。
その直後、ドローンが地下都市に攻め入って人間を捕獲していきます。
時を同じくして、宇宙船はイガムから飛び立ちました。
イガムの衛星であり月によく似た「野生の惑星」に、宇宙船は着陸します。宇宙船から降りて目にしたのは、頭がない巨像でした。
そこで人々は、巨人族・ドラーグ人の秘密を知ることになります。
巨人族・ドラーグ人は1日の大半を瞑想に費やしており、この惑星に意識を飛ばしながら異星人と交流していたのです。
そして異星人と夫婦になることにより、生命エネルギーを獲得し、ドラーグ人は種を保存していました。
男女の形をした巨像が、宇宙人の意識体を首に乗せて踊り始めます。
不気味な巨人族の生命維持活動を目撃し、宇宙船は衛星を離れていきます。巨人族・ドラーグ人は、瞑想している時が弱点だと気付いたためです。
弱みを知った人類は、宇宙船からビームで巨像を破壊していきます。その結果、ドラーグ人は絶滅寸前となり人間狩りは収束することになりました。
戦争が終結した後、巨人族・ドラーグ人と人類の間で和平交渉が取られることになります。
ドラーグ人は人間が持つ知恵を逆輸入し、自分たちの生活向上に役立てました。
そして人類は、イガムと惑星の近くに人工衛星を創ります。
その人工衛星は“テール(地球)”と名付けられたのです。
独創的な世界観と個性的な設定がふんだんに盛り込まれているこの作品。続いては、物語を彩るキャラクターたちを見ていきましょう。
この作品の主人公。
巨人族・ドラーグ人の悪ガキに母親を殺されますが、ティバにより愛情を持って育てられました。
ドラーグ人が使う学習装置を使って、ティバと共に勉強する中で高い知能を持つようになります。
原作では、隣の家で生まれた子どもとして登場。そしてティバはその家から譲ってもらい、テルと名付けられました。
巨人族・ドラーグ人の少女。
テールの名付け親であり、育ての親でもあります。ドラーグ人の生命維持活動である瞑想をするようになってからは、あまり構わなくなります。
友人とオム族(あらすじでは人間と表記)バトルを楽しんだり、人間のようなアイラインを引いたりする少女です。
ティバの父親であり、惑星イガムのテレーズ県知事。
人間に対しての考え方は穏健派ですが、扱いは丁寧ではありません。
娘と外を歩いている時に人間の赤ちゃんを見つけ、飼いたいというので許すことにしました。
原作では、人間族の抹殺計画を立案・実行した人物として描かれています。
つまり、敵側の総大将のような存在になっています。そのため、映画とは印象が違うと感じる人も多いでしょう。
惑星イガム・ゴアム県の知事。
人間に対する考え方は強硬派です。季節ごとに人間狩りを行っています。
独特の描写だけではなく設定に関しても、作品を観てみると気になる点があるはずです。
その中でも特に気になっている人が多いポイントをピックアップし、考察していきましょう。
巨人族・ドラーグ人にとって、瞑想は生命維持活動です。そのため、1日の大半を瞑想に費やしています。
どことなく恐怖を感じる奇妙な描写ですが、芸術性を感じられる場面です。
色々な姿のドラーグ人が登場するのも魅力の1つ。ぜひ、あなたの目でチェックしてみてください。
『ファンタスティックプラネット』は、宮崎駿作品のモデルになった事でも知られています。
宮崎駿監督がこの作品を観て「日本のアニメには美術が不在だ」と痛感。
「風の谷のナウシカ」では、美術やクリーチャーデザインに多大な影響を及ぼしました。
『ファンタスティックプラネット』を観ると、巨神兵や王蟲などの原型らしきキャラクターが登場しています。
「風の谷のナウシカ」が好きな人や宮崎駿監督の作品が好きな方は、彼の作品がどのような影響を受けたのか垣間見られるでしょう。
また「進撃の巨人」も『ファンタスティックプラネット』がモデルなのでは?と、話題になることがあります。
似た世界観を感じられますが、作者・諌山創さんが「マブラヴ」というゲームを参考にしていると語っています。
そのため「進撃の巨人」のモデルは『ファンタスティックプラネット』説は、真実ではありません。
続いては『ファンタスティックプラネット』と似ている、「進撃の巨人」や「約束のネバーランド」を比較してみましょう。
モデルにしているなどの情報はないですが『ファンタスティックプラネット』のような、独特な世界観や設定が魅力的なアニメになっています。
「進撃の巨人」は、巨人と人間が対峙する作品になっています。その点が『ファンタスティックプラネット』とよく似た部分です。
異なるのは「進撃の巨人」に登場する巨人の多くは、知性がありません。
『ファンタスティックプラネット』では、巨人が知性を備えたうえで人間をまるで虫けらのように駆除する恐ろしさがあります。
そして、知性があるからこその結末になっています。
反対に「進撃の巨人」の場合は、知性がない巨人ならではの表情や理解し合えないと言う絶望感がより恐怖心を煽るのです。
また「進撃の巨人」では、巨人を駆逐するための立体機動装置という道具を使用しています。
『ファンタスティックプラネット』では立体機動装置こそ使っていませんが、人間が巨人族・ドラーグ人を倒す際にロケットを作って形勢逆転をしています。
「約束のネバーランド」も『ファンタスティックプラネット』と似た部分があります。
では、どのような点が似ていると言えるのでしょうか?
「約束のネバーランド」に巨人は登場しませんが、知性がある鬼が出てきます。
鬼が人間を食べる設定は異なりますが、知性があるという点は『ファンタスティックプラネット』の巨人族・ドラーグ人とよく似ています。
「約束のネバーランド」に登場する鬼は、人間を美味しく食べるために家畜のように扱っています。
それも相違点ではありますが、飼い慣らすという意味では似ている部分と言えるでしょう。
また「約束のネバーランド」では、肉を食べることに疑問を抱いていないように感じられます。
一方『ファンタスティックプラネット』では、ドラーグ人が会議をして知性があるような人間を駆除して良いのか議論しているシーンが描かれています。
人間と対峙しているという点や飼いならすと言う点は共通項ですが、巨人族・ドラーグ人と鬼では人との向き合い方が大きく異なるのも面白い部分です。
『ファンタスティックプラネット』は怖い雰囲気を持つ作品なので、トラウマになるのでは?と心配になってしまう人もいるでしょう。
実際に観た人の感想をご紹介するので、どのような作品か気になっている方は視聴する際の指標にしてみてください。
定期的に観たくなる、
— ⁿᵉᶜᵒ𓌅 (@neco40877472) July 9, 2019
『ファンタスティック・プラネット』
全編に溢れる狂ったビジュアルの中でも、
この瞑想シーンは群を抜いてる。
悪い夢のようで美しくもあるんだよな。#FANTASTICPLANET #シュール #SF pic.twitter.com/AsxVsELKjf
瞑想により他の惑星に住む異星人と交流して種の交換をするシーンは、特に印象に残りやすい場面です。
この作品ならではの魅力が凝縮されている描写でもあります。
ファンタスティック・プラネット(1973)
— 和泉萌香 (@moekaizumi) February 19, 2017
シュールで毒っ気たっぷりのフランスのアニメ。巨神兵やガリバー旅行記、進撃の巨人を連想させるシーン多数。不気味で忘れられないこと間違いなしな絵本のような世界を楽しめる。"人がゴミのような"映画。#1日1本オススメ映画 pic.twitter.com/KUwJKqOUAR
ストーリーも描かれ方も独特なので、どこか不気味だと感じてしまうのも確かです。
しかしその不気味さにハマり、中毒になってしまったという人もいるほど。
描写などに抵抗がないなら、観ておいて損はない作品だと言えるでしょう。
フランス、チェコスロバキア合作『ファンタスティック・プラネット』すごく気になる…。40年以上前の映画なんだね。怖いもの見たさって奴ですが観ておきたい。絵がトラウマレベル。笑 pic.twitter.com/pVwQvKkhCZ
— あんにゅ/コアラモード. (@a_n_n_u) October 3, 2017
『ファンタスティックプラネット』を観た人の中には、ホラー映画よりも怖いと感じる方もいます。
内容もそうですが、作画も怖さを引き立てる要素になっていると考えられます。
『ファンタスティックプラネット』は、カンヌ国際映画祭において初めてアニメ映画が審査員特別賞を受賞した作品です。
印象深いキャラクターや唯一無二な作風が詰まった、魅力たっぷりのアニメになっています。
しかし、観てトラウマのようになってしまうのでは?と心配になる人もいるでしょう。
確かに独特な世界観は恐怖を感じられるような形で描かれていますが、観てみると意外とハマるという人も少なくありません。
『ファンタスティック・プラネット』動画配信サービスDMM TVでも配信されています。
どのような作品なのか気になっている人や独特な世界観の作品が好きな方は、ぜひDMM TVでチェックしてみてください。