2005年公開の映画「チャーリーとチョコレート工場」は、ティム・バートン監督と人気俳優ジョニー・デップが「シザーハンズ」や「スリーピー・ホロウ」などに続き、再びタッグを組んだことで話題を集めました。
ポップな音楽やどこか奇妙な世界観はいったい何を伝えたいのか、考察も交えながら解説していきます。
更新日:2021-9-15
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2005年公開の映画「チャーリーとチョコレート工場」は、ティム・バートン監督と人気俳優ジョニー・デップが「シザーハンズ」や「スリーピー・ホロウ」などに続き、再びタッグを組んだことで話題を集めました。
ポップな音楽やどこか奇妙な世界観はいったい何を伝えたいのか、考察も交えながら解説していきます。
チャーリーは、今にも壊れそうなほどボロボロのお家に優しい家族と一緒に暮らしている少年です。
彼の住んでいる街には世界中に人気のチョコを生み出した天才ショコラティエ、ウィリー・ウォンカとそのチョコレート工場がありました。
チョコレート工場は謎に包まれていて、誰も中がどうなっているのか知りませんでしたが、ある日ウォンカは「チョコレートに入っている金のチケットを当てた子ども5人を工場に招待する」と発表したのです。
世界中で金のチケットを巡った争奪戦が繰り広げられますが、貧乏なチャーリーは当てることができないまま、次々と当選者が出てきてしまいます。
このままチョコレートを購入できずに終わるかと諦めていたとき、偶然購入できたチョコレートにはなんと金のチケットが入っていて…そこからチョコレート工場を舞台にウォンカとの奇妙なやり取りを描いたミュージカルファンタジーな映画です。
「チャーリーとチョコレート工場」に登場する主要な人物について紹介していきます。
チョコレート工場の近くに住んでいる心優しい少年です。
両親と両祖父母と共に暮らしていますが、家庭は貧しく、1年に1回ある誕生日にウォンカのチョコレートを食べるのを楽しみにしています。
天才チョコレート職人であるウォンカは、世界中で愛されているウォンカ・チョコをはじめ様々なお菓子を生み出したチョコレート工場の支配人です。
シルクハットとおかっぱヘアがトレードマークなコミカルなキャラクターですが、性格はやや冷淡です。
チャーリーの祖父であるジョーおじいちゃんは、昔ウォンカのチョコレート工場で働いており、もう一度行きたいと思っていました。
そのため、チャーリーが金のチケットを当てたときは大喜びし、チョコレート工場へ行くチャーリーに付き添うことになりました。
チケットを最初に引き当てたドイツの男の子です。
何よりもチョコレートが大好きで、毎日食べているからなのか子供たちのなかで一番体が大きいです。
とても食いしん坊で食い意地が張っています。
あらゆる競技でトロフィーを獲得しているため、勝者は常に自分だと思っているとても競争心の強い女の子です。
ガムを長期間噛み続けるという記録に挑戦中であるため、常にくちゃくちゃとガムを噛んでいます。
様々な情報をリサーチし、金のチケット入りチョコを引き当てた天才な男の子です。ゲーム狂で生意気なため、度々ウォンカをイラつかせます。
とにかくわがままなイギリスのお金持ちのお嬢様です。
優しいパパに甘やかされてきたので、自分が欲しいと言えばなんだって手に入ると思っています。
ウォンカのチョコレート工場で働いている小人の従業員達です。
皆同じ顔をしており、歌やダンスが得意で子供たちが大変な目に合っていると歌い始めます。
ここからは、ネタバレも含めて「チャーリーとチョコレート工場」のストーリーについて詳しく解説していきます。
ウォンカは斬新なアイディアで、世界中で愛される人気のお菓子を生み出してきた天才チョコレート職人です。しかし、ある時彼を妬む同業他社にレシピを盗まれたことから、チョコレート工場を封鎖しました。
けれども不思議なことに人の出入りはないはずなのに、工場は動いておりチョコレートは世界中に出荷されていました。そんなチョコレート工場の近所にはチャーリーという貧しい家庭ながらも家族と幸せに暮らしている男の子が住んでいました。チャーリーは年に1度、自分の誕生日にプレゼントしてもらうウォンカのチョコレートを食べるのを楽しみにしており、チョコレート工場に憧れを抱いていました。
ウォンカが世界中に出荷しているチョコレートのうち、5個だけに金のチケットが入っていると発表し、手に入れた子供をチョコレート工場に招待すると発表したのです。次々と金のチケットを引き当てた子供たちが出てくる中、誕生日プレゼントにチョコレートを貰ったチャーリーですが、残念ながらチケットを引き当てることはできません。ジョーおじいちゃんがこっそりくれたお金で買ったチョコレートでも当てることができず落ち込んでいたある日、チャーリーは偶然お金を拾います。
そしてそのお金でチョコレートを購入し中を開けてみると、なんとそこには5枚目の金のチケットが入っていたのです。一度はお金のためにチケットを売ろうかとも考えましたが、家族に後押しされて憧れの工場へジョーおじいちゃんと共に向かいました。
指定された場所には5人の子供たちとその保護者が集まりました。そして門は開き中へ進むと、ウィリー・ウォンカが現れます。彼の案内で工場内へ入ると、そこにはチョコレートの滝やお菓子でできた草花など、夢のような光景が広がっており、さらに不思議な小人ウンパルンパたちが働いていました。
そんな中、チョコレートが大好きなオーガスタスはチョコレートの川を舐めようとして落ちてしまいます。すると、天井から現れた機械に吸い上げられたオーガスタスはそのままコーティング工場まで連れて行かれてしまいました。
そして次に案内された新商品を開発する研究所では、斬新な新商品の研究がされており、ウォンカが止めるのも聞かずに勝手にガムを食べ始めたバイオレットは、なんと体が膨らみブルーベリーのように丸くなります。ガムはまだ試作段階だったのです。体が丸くなったバイオレットはボールのように転がされながらジュース室へ連れて行かれてしまいます。
その後も、ナッツの選別室ではそこで働いているリスが欲しいと言ったベルーガがダストシュートに、テレビを通してチョコレートを転送する発明をしていたテレビ室ではマイクが転送機をいじりテレビの中に入ってしまい、体が小さくなってしまいます。そんなこんなで子供たちはどんどんいなくなってしまい、残ったのはチャーリーとジョーおじいちゃんだけになってしまったのです。
チャーリーが残ったことに喜んだウォンカは、特別賞にチョコレート工場をプレゼントすると言い出しました。実は今回の工場見学は、自分が死んだ後の工場やウンパルンパを心配したウォンカの後継者探しだったのです。
最初は喜んだチャーリーですが、後継者になるには家族と離れなければいけないと知り断ります。まさか断られるとは思っていなかったウォンカは驚き、寂しそうに去っていきました。
その後のウォンカは新商品の売上も上がらず気分も思わしくありません。その状況を何とか打開しようとしたウォンカは、靴磨きをして働くチャーリーのもとを訪ねます。
そしてどうしたら良いと思うか問われたチャーリーは「家族が必要」だと答えるのです。
ウォンカの父親はお菓子が大嫌いな歯科医です。そんな父親に反発するかのように家出したため、ずっと音信不通だったのです。チャーリーと一緒に久しぶりに父の元を訪ねたウォンカに、父親はすぐに気付きます。
そして家の壁にウォンカについて書かれた記事が沢山張られていました。父親はずっと会えなくても息子のことを応援していたのです。その後家族と離れないことを条件にチャーリーは工場の後継者となり、ウォンカもともに幸せそうに食卓を囲んでいます。
映画「チャーリーとチョコレート工場」の見所について、詳しく紹介していきます。
チョコレートの川やお菓子で出来た草花など、ファンタジーで可愛らしい要素がたっぷり詰まっているように見える今作ですが、ところどころにちょっと引くような気持ち悪い描写が見られます。特にインパクトがあったのが、工場で子供たちを出迎えるための人形劇です。
最初は楽しそうな雰囲気なのに、なぜか最後には燃えて崩れ落ちるのです。そして引いている子供たちと至極楽しそうなウォンカが相対的すぎて、よりいっそう不気味で奇妙な世界観を感じさせてくれます。
今作では、CGをほとんど使わずに実物を使って撮影されています。工場内にあるチョコレートの滝や広い庭に生えている草や不思議な形をした植物も、全てパティシエによって作られた本物のお菓子なのです。ちなみに、チョコレートの滝はジョニー・デップのアレルギーの関係で、違う食材で作られているそうです。
工場内で子供たちが一人ずつ脱落する度に、ウンパルンパがどこからともなく現れ、それぞれの子供たちを皮肉った奇妙な歌とダンスを披露します。歌詞にはそれぞれの子供の名前が入っていることから不審に思うチャーリーたちですが、ウォンカ曰く即興で作っているとのことです。ウンパルンパは大勢いますが、誰も皆同じ顔をしており、一糸乱れぬ歌とダンスを見せてくれます。
天才チョコレート職人にして工場の支配人であるウィリー・ウォンカはどんな人物なのか、詳しく見ていきます。
一風変わった見た目から変人のように見えるウォンカですが、実際には成功した工場のオーナーであり、次々と斬新なアイディアで新しい商品を開発する天才実業家です。その才能から天才ショコラティエやチョコの魔術師とも呼ばれています。
ウォンカはライバルにチョコレートのレシピを盗まれたことで、工場を封鎖してしまうほど、人との関わりを極端に避けています。ウォンカがどのくらい人付き合いが苦手なのかは、劇中での空回りしている行動や、滑っている言動などからも感じ取れます。幼少期に親の愛情を感じることのできなかった子供は、人を信じることも自分に自身を持つことも苦手という研究結果もあるように、ウォンカの問題点は父親との関係性が大きく関わっていると考えられます。
ウォンカは両親という言葉を言うことができません。これは、歯科医師の子供としてお菓子などを禁止された厳しい家庭環境で育ち、親の愛情を素直に受け取ることのできず、父親に対してトラウマを抱えていることが関係していると考えられます。また、母親の影も全く登場しないことから、父親だけでなく母親からの愛情も感じず育ったため、ウォンカには家族という概念が欠如してしまったのではないでしょうか。
一人ではしゃいでいるかと思えば、子供たちに対して冷酷な態度を取るといったとても気分屋のような性格は、まるで幼い子供のようです。だからこそ、自分の言うことを聞かない子、生意気な子など気にいらない相手にはストレートに嫌いという気持ちをぶつけます。
ここでは、劇中で気になった部分を考察していきたいと思います。
ピンク羊が登場するシーンでは、ウォンカは「ノーコメント」といいそれ以上話すことを拒否しました。他の部屋では嬉々として説明していたのに、ピンク羊に関してはなぜノーコメントなのか、それはこれ以上工場で働く動物に危害を加えられたり、昔のようにレシピを盗まれたりするのを防ぐためなのではないかと考えられます。羊の毛はおそらく綿あめで刈り取って商品にしているため、それを知られることで羊を誘拐されるなどの面倒事を避けたいというウォンカの心の現れではないでしょうか。
劇中でチャーリーは拾ったお金でチョコレートを購入しています。それも金のチケットの所有者が出てきたとニュースで出たあとです。その5枚目は後で偽物だったと判明したわけですが、その事実を知らなかったにも関わらずチャーリーはチョコレートを購入しました。
その理由はなぜなのか、それはチャーリーが金のチケットのためではなく、ただ純粋にチョコレートが食べたかったからではないかと考えられます。誕生日のときも、ジョーおじいちゃんのへそくりで買うときも、金のチケットばかりに意識がいってしまい、せっかくのチョコレートを食べる喜びが薄れてしまいました。だからこそ、ただ純粋に大好きなチョコレートを味わうために、拾ったお金で買いに行ったのではないでしょうか。
ウォンカは自分で子供たちを集めたにも関わらず、次々に追い出していきます。なぜなら名目は工場見学でしたが、実際には工場の後継者を探していたため、相応しくないと思った子供たちはもう必要ないからです。ウォンカにとって大切なのはチョコレートが大好きでウンパルンパや工場を守ってくれる人材です。
だからこそ、相応しくない子供たちは早々に退場させていったのではないでしょうか。
最も、ウォンカが特に何かを仕向けたわけではなく、勝手に子供たちが自滅していっただけとも言えます。
ウォンカの父親は、お菓子は全て悪であると考えるほど頑固な歯科医師で、ウォンカにもお菓子を禁止していました。父親にしてみれば可愛い息子を思っての行動でしたが、ウォンカとは反りが合わず、結果家出し音信普通になりました。そんな経験からウォンカにとって家族とはトラウマの一つでした。
さらに、工場を持つほど成功したウォンカですが、彼を妬んだ他社のスパイによって秘密のレシピが盗まれてしまいます。この経験はウォンカの人間不信をさらに悪化させ、誰も信じられなくなってしまったのです。幼少期に家族の愛を感じられなかったからこそ、大人になってもウォンカのトラウマとして残り、人格形成にも大きく影響を与えてしまったと考えられます。
脱落し退場していった子供たちは、最後どうなったのか考察してみました。
チョコレートの川に落ちて退場したオーガスタスは、止められても言うことを聞かず、更には川におちてチョコレート塗れになっても全く気にしていませんでした。
母親も今まで彼が欲しがるままにお菓子を与えており、太ろうが全く気にも留めていませんでしたが、工場での出来事をきっかけにしっかり窘めるようになります。
これは食に貪欲すぎて命の危険に晒されたことから、このままではいつか食欲が旺盛すぎるが故に死んでしまうかもしれないと危機感を感じたからではないでしょうか。
競争心が強く野心家のバイオレットは、体が膨れブルーベリーのように丸く紫色になります。
その後はジュース室で絞られ何とか元の体型に戻ったものの、体は軟体動物のように柔らかくなります。
バイオレットはそんな状況も楽しんでいるようですが、その様子を見て母親のプライドも砕かれたのではないかと考えられます。
また、体はしばらく紫色が残るかもしれませんが、食べ物による影響ですのでそのうち自然に色が抜けて元に戻るのではないでしょうか。
お金持ちのお嬢様であるベルーカは、これまでどんなわがままも叶えられてきました。
しかし、今回はベルーカのわがままによってダストシュートに落ちゴミ塗れになったことで、プライドもかなりズタズタになったと考えられます。
さらに命の危険に晒されたことから、父親もこのままではいけないと感じたのではないでしょうか。
今後は娘のわがままを何でも受け入れるのではなく、正しく成長するために力を注いでいくのかもしれません。
生意気で自信家のマイクですが、今回の出来事によって自分勝手な行動や言動は控えなくてはならないと理解したのではないでしょうか。そして、そんな息子を止められなかった父親も、今後はしっかり向き合っていくのではないかと感じます。マイクの体はペラペラになってしまいましたが、バイオレット同様時間の経過と共に少しずつ元に戻っていくのではと推察します。
今作で囁かれている都市伝説のような内容について、検証していきます。
チャーリーのお父さんは歯磨き粉工場で働いていたはずなのに、なぜこんな噂がと思われるかもしれません。実は歯磨き粉工場が登場した際に歯磨き粉のパッケージ「smilex」と書かれていました。
実はこの「smilex」は、ティム・バートン監督が監督を務めた映画「バッドマン」で薬物兵器として登場していたのです。そのため、チャーリーのお父さんは本当は毒薬を作る工場で働いていたのではと言われています。
チョコレートが全世界で発売されるシーンでは、東京の子供たちが買いに行く場面が映ります。しかし実際には、この子供たちは全員日系人や中国人で、日本人は全く出ていないということです。
工場内にあるナッツの選別工程では、リスがクルミを叩いて選別を行っています。たくさんのリスが並び作業しているシーンでは、一糸乱れぬ動きにCGなのではと思ってしまいますが、撮影は本物のリスによって行われました。19週間かけて40匹のリスを調教したとのことです。
独特の世界観や一癖も二癖もある人物が登場するこの映画でティム・バートン監督の伝えたかったこと、それは成功するには自分に正直に生きることとトラウマを克服するには寄り添ってくれる人が必要ということではないかと考えられます。ウォンカは父親に反対されても、チョコが大好きな気持ちを押し通したからこそ、チョコレート工場の成功があります。
そして、チョコレートが大好きだからこそ、クリエイティブな発想でまたとないチョコレートを開発できたのです。しかし、どんなに自分に正直に生きて成功を納めたとしても、ウォンカ一人ではトラウマの克服は難しいものでした。けれどもウォンカのトラウマに寄り添ってくれるチャーリーがいたからこそ、父親と会うことができ、結果として和解することができたのです。
また、チャーリーは自分にとって何よりも大切な家族を優先したからこそ、家族と工場のどちらも手に入れることができました。この自分にとって大切な人や物への気持ちを貫くことは、ただ自分の気持ちを押し通すわがままとは違うとても大切なことであるということを伝えたかったのではないでしょうか。
ポップなファンタジー的世界観の中にも、どこかシリアスやダークな部分が散りばめられた「チャーリーとチョコレート工場」についてご紹介しました。ウンパルンパの愉快な歌とダンスや、とても華やかな映像美、そしてティム・バートン監督とジョニー・デップならではの独特の世界観の中で繰り広げられるストーリーは大人から子供まで楽しめます。
何回見てもまた新たな発見が見つかる映画なので、まだ見ていないと言う方はもちろん、もう見たよと言う方もぜひもう一度見てみてはいかがでしょうか。