1991年にアメリカで公開された映画「羊たちの沈黙」は、連続殺人事件を追うFBI訓練生と元精神科医で猟奇殺人犯との奇妙なやり取りを描いています。映像的な怖さはもちろん、心理的な怖さも感じるこの映画は、サイコサスペンスが好きな方におすすめしたい映画の一つです。
この記事ではそんな「羊たちの沈黙」について、あらすじとキャラクター紹介、さらに続編情報を詳しく解説していきます。
更新日:2021-7-12
<プロモーション>
1991年にアメリカで公開された映画「羊たちの沈黙」は、連続殺人事件を追うFBI訓練生と元精神科医で猟奇殺人犯との奇妙なやり取りを描いています。映像的な怖さはもちろん、心理的な怖さも感じるこの映画は、サイコサスペンスが好きな方におすすめしたい映画の一つです。
この記事ではそんな「羊たちの沈黙」について、あらすじとキャラクター紹介、さらに続編情報を詳しく解説していきます。
アメリカのカンザスシティをはじめとした各地で、若い女性が殺され、皮膚を剝がされ川に捨てられるという猟奇的な連続殺人事件が発生し、その犯人は「バッファロー・ビル」と呼ばれていました。事件解明のためFBIの女性訓練生のクラリスも上官クロフォード主任捜査官から任務を課されます。
羊たちの沈黙は、そんな任務の全うするFBI訓練生クラリスと元精神科医の囚人ハンニバル・レクターことレクター博士との奇妙なやり取りを描いたサイコスリラー映画です。連続殺人犯の情報を得るため、レクター博士の元を訪れるクラリスは、果たして連続殺人犯を捕まえることはできるのでしょうか。
ここでは、物語のカギを握る登場人物について紹介していきます。
クラリスは強い正義感と賢明な頭脳を併せ持つFBI訓練生です。幼い頃に母を亡くしたクラリスは、警察官の父と二人暮らしをしていました。
しかし、彼女が10歳の時、父が強盗に射殺される事件が起こってしまいます。父を亡くし孤児となったクラリスは、モンタナ州で牧場を営んでいる母の従兄弟夫婦に引き取られます。
引き取られてから2ヶ月ほどたったある日の夜のこと、クラリスは牧場主である母の従兄弟が子羊を屠殺する現場を目撃してしまうのです。その光景に衝撃を受けたクラリスは、なんとか子羊を助けたいと1頭だけ抱いて逃げますが、結局保安官に見つかってしまいます。
そして、子羊は殺され、怒った牧場主によりクラリスはボストンにある施設に入れられることになります。この時に聞いた子羊たちの叫びが、彼女のトラウマとしてその後も大きな影響を与え続けるのです。
ハンニバル・レクターことレクター博士は、元精神科医の猟奇殺人犯です。殺した人間を食べるという異常な行動から「人食いハンニバル」と呼ばれています。
その原点は幼い頃戦争に巻き込まれた際、レクター達の隠れ家に逃げてきた対ドイツ協力者たちが飢えを満たすため衰弱した妹ミーシャを殺害し、食料にしたことにあります。この体験が彼の異常な人格を決定づけ、その後にも大きな影響を与えます。
彼に対し敬意をもって接した相手など、認めた人には紳士的に接しますが、そうでない相手には自殺するほど言葉で追い詰める悍ましい一面を持っています。クラリスに対して恋愛感情ではないものの、特別な思い入れを持っている様子が時折垣間見えます。
行動科学科の主任捜査官で、クラリスはバージニア大学在学時に彼のゼミに参加していたことがあります。行動科学科は事件や犯人に対し、様々な視点から科学的にプロファイリングすべく立ち上げられた部署で、クラリスもいずれ行動科学科への配属を望んでいます。
事件を解決すべく、クロフォードはクラリスに対し、レクターとの面談調査という任務を課します。FBIは連続殺人犯たちの心理分析を進め、犯人像を絞り込もうとしていましたが、多くの殺人犯は協力的にも関わらず、レクターだけは頑なに協力を拒みます。そこで、まだ経験も浅い女性の実習生ならレクターの警戒心を和らげることができるかもしれないと教え子の中でも優秀なクラリスを抜擢することにしたのです。
アメリカ各地で起きている若い女性を殺害し、皮膚を剥ぐという猟奇的な殺人事件の犯人とされる人物です。被害者の喉にスズメ蛾の繭を入れるという惨忍な一面も併せ持ちます。このスズメ蛾は胴体にドクロのような模様がありますが、アジアにしか生息していないため、わざわざ輸入し繭にしてから被害者の喉に入れているものと思われます。
「羊たちの沈黙」は第64回アカデミー賞で、作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞・脚色賞の主要5部門全てを受賞するという快挙を成し遂げています。主要5部門を独占したのは史上3作目で、ホラー映画でアカデミー作品賞を受賞したのは「羊たちの沈黙」だけです。
主演男優賞はレクター博士を演じたアンソニー・ホプキンス、主演女優賞はクラリスを演じたジョディ・フォスターが受賞しています。また、第57回ニューヨーク映画批評家協会賞では、作品賞・監督賞・主演男優賞・主演女優賞を受賞、第41回ベルリン国際映画祭では監督賞である銀熊賞を受賞しています。
この他にもゴールデングローブ賞やブルーリボン賞など、映画に関連した数多くの賞を受賞しています。
ハンニバルシリーズとは、トマス・ハリスの作品でハンニバル・レクターが登場する映画の総称です。ハンニバルシリーズの4作品についてご紹介します。
ハンニバルシリーズ最初の1作目が1991年に公開された「羊たちの沈黙です。このハンニバルシリーズでは、レクター博士ことハンニバル・レクターという人間を描いており、時系列としてはハンニバル・ライジング→レッド・ドラゴン→羊たちの沈黙→ハンニバルになります。しかし、最初に見るのならこの「羊たちの沈黙」からがおすすめです。
映画「ハンニバル」は、「羊たちの沈黙」から10年後を描いた作品です。監督はリドリー・スコット、クラリスはジュリアン・ムーアへ変更されていますが、レクター博士は変わらずアンソニー・ホプキンスが演じています。
バッファロー・ビルの事件から10年後、アメリカのメリーランド州の都市ボルチモアに住む大富豪メイスン・ヴァージャーは、脱獄し逃走中のハンニバル・レクターの行方を探しています。その目的はレクターへの復讐で敵討ちです。
一方、FBI捜査官となったクラリスは、バージニア州リッチモンドで麻薬捜査の差異に多数の被害者を出してしまったことから遺族に訴えられていました。メイスンは己の権力を使い、クラリスをハンニバル捜査に復帰させるため圧力をかけようとします。
そんな中、潜伏していたレクターはメイスンの罠にはまり、拉致されます。また、メイスンの裏工作に気付いたクラリスも一人でメイスンの元へ向かいますが…といった内容です。
レッド・ドラゴンはレクターがまだ犯罪精神医学の権威として活躍していた1980年を舞台にした映画です。アメリカのメリーランド州にある独立都市ボルチモアでFBI捜査官ウィル・グレアムはレクターの協力を仰ぎながら連続殺人犯を追っていました。
しかし、犯人を追い詰めたものの重症を負ったウィルは1983年にFBIを退職し、フロリダ州にあるマラソンで静かに暮らすことになりました。そんなある日のことです。ウィルの元にかつてFBIで上官だったジャック・クロフォードが訪ねてきます。
ジャックに今起きている連続一家殺人事件の話を聞かされたウィルは、期間限定で捜査に協力することにします。一方、荒れた屋敷に一人で住んでいるビデオ加工技師であるフランシス・ダラハイドは悩まされている深いトラウマから脱却するため凶悪犯罪を重ねており…というあらすじです。
ハンニバル・ライジングはレクター博士の幼少期から殺人犯に至るまでの時代が描かれている映画です。リトアニアの名門貴族レクター家に生まれたハンニバルは1944年戦争に巻き込まれ両親を失い孤児となった幼いハンニバルと妹のミーシャは隠れ家でひっそりと生活していました。
そこへ逃げてきた対ドイツ協力者たちは、ハンニバルたちを拘束し食料を奪います。やがて食料も底を尽くと、衰弱していた妹のミーシャを殺し食べてしまうのです。目の前で最愛の妹を殺されたハンニバルは、ショックから記憶を失ってしまいます。
そして1952年、東側共産圏から逃れたハンニバルはムラサキ夫人に出会います。その後パリに移り、医学生となったハンニバルは、ミーシャを殺した奴らを少しずつ思い出し、復讐を決意します。相手に命を狙われながらも目的を達成していくハンニバルですが…というあらすじです。
公開からおよそ30年経ってもいまだに根強い人気のある「羊たちの沈黙」の続編が、なんとドラマとして放送されることが決定しました。
続編「クラリス」では、羊たちの沈黙の半年後の世界を舞台に、レクター博士とクラリスが新たな事件と向き合っていくストーリーです。公開された予告編では、羊たちの沈黙に出てきた場所やプードルの「プレシャス」なども登場します。アメリカでは2021年2月から放送と配信が開始されていますが、日本での配信は残念ながら未定です。
羊たちの沈黙では、終盤に隙をついて脱獄したレクター博士が、無事に事件を解決したクラリスにお祝いの電話をします。その際にレクターは「古い友人を夕食に…」と言葉を残し電話を切り、映画は終わります。
エンドロールにはレクターからの報復に怯え逃亡したチルトンが映りますが、実際にどうなったのかははっきりと描かれていません。その後に制作された続編の映画でもラストシーンについて詳細が語られることはなく、チルトンは南米で行方不明として扱われています。
ここからは、羊たちの沈黙について、ネタバレも含めて詳しく解説していきます。
アメリカ各地で若い女性を殺害し、皮が剥がれた遺体が川に捨てられるという猟奇的な殺人事件が連続して発生しました。犯人は「バッファロー・ビル」と呼ばれ、捜査を続けていましたが、犯人逮捕の手がかりは一切なく、行き詰っていました。
そんな中、FBI訓練生のクラリス・スターリングは行動科学科のクロフォード主任捜査官に任務を課されます。その任務というのが、これまでに9人の患者を殺して食べた元天才精神科医であるハンニバル・レクターに今回の事件について協力を依頼するというものでした。
クロフォードは、レクターに助言を求めていたものの、彼は捜査への協力を拒んでいたのです。そこで、かつて優秀な教え子だったクラリスにレクターから助言を聞き出すように任務を課したのです。
クラリスはレクターの担当であるチルトン院長から、レクターには十分警戒するように注意を受けた後、監禁病棟にいるレクターに面会に行きます。レクターはクラリスがFBI訓練生であることをすぐに見抜きますが、礼儀正しい彼女を気に入り、犯人につながるヒントを与えます。
レクターのヒントを基に捜査を続けますが、悲しいことにまた新たな犠牲者が発見されてしまいます。時を同じくして、次は上院議員の娘が誘拐されます。
再度レクターの元を訪れたクラリスは、レクターの協力によって被害者である娘が救出できたら、母親の上院議員の力で警備が緩い病院に移すという嘘の取引を持ち掛けます。
レクターはクラリスの過去のトラウマな個人情報を教えることを条件にし、クラリスも承諾しました。早速子供時代の一番嫌な思い出を尋ねたレクターに対し、正直に父親が亡くなったことだとクラリスは告げます。
そのお返しにレクターは、犯人は変化を求めていると情報提供します。続いて父親が亡くなった後のことを聞かれたクラリスは、母の従兄弟夫婦の経営している牧場に2ヶ月だけ滞在していたことを話しますが、なぜか尋ねるレクターに対し更なる情報提供が先だと答えます。
そして、レクターは犯人は自分を性的異常者であると思い込んでいる人物だと告げるのです。
クラリスたちの会話を盗み聞きしていたチルトン院長は、手柄を横取りすべく上院議員に掛け合い、捜査協力をすれば本当に刑務所を移動できると、クラリスの嘘をばらし取引を持ち掛けます。取引に応じたレクターは、犯人の名前は上院議員に直接伝えると言い、チルトン院長は会わせる場所までレクターを移送する手筈を整えます。
そして、厳重に拘束されたレクターは上院議員に犯人の名前を告げますが、それは全くの嘘だったのです。レクターが滞在している仮設の檻を訪れたクラリスは犯人の情報提供を受けます。そのお返しに牧場に2ヶ月しかいなかった理由を答えたクラリスに対し、レクターは今でも子羊の悲鳴は聞こえるかと問うのです。
ミグズは監禁病棟でレクターの隣の房に収監されていました。初めてレクターの元を訪れたクラリスに対し、ミグズは精液をかけるのです。
ミグズの非礼を詫びたレクターは、クラリスに対し事件のヒントを与えます。そして、その後一日中レクターに詰られたミグズは自殺してしまうのです。
レクターは礼儀正しい人に対しては紳士的な対応をする一方で、そうでない相手に対しては非常に冷酷な一面を持っています。事件を解決し捜査官に就任したクラリスに対して祝福の電話をかけていますが、「これから古い友人を食事に…」といった言葉を残して電話を切ります。
そのレクターの視線の先には報復を恐れて南米に逃亡したチルトンの姿がありました。そして2人は街並みの中に消え、映画は幕を閉じるのです。チルトンのその後については、続編のハンニバルでも語られていません。
あくまで行方不明扱いのチルトンですが、実際にはレクターが殺害し、その死体を食べたのではないかと考えらます。監禁病棟でレクターに対し数々の非礼を行ったチルトンに対する報復を行ったのではないでしょうか。横暴な態度を取らず、礼儀正しく接していればこのような結末にならなかったはずです。これはチルトンのこれまでの行いによって招かれた運命かもしれません。
羊たちの沈黙のあらすじから主要キャラやハンニバルシリーズについて詳しく紹介してきました。1991年に公開されてから、約30年の時を経て新たにドラマとして続編が公開されます。
日本では配信が未定なことは残念ですが、いずれ配信されるのを楽しみに待っていましょう。また、羊たちの沈黙を見て、レクター博士に興味を持った方はぜひU-NEXTなどの動画配信サービスを活用してハンニバルシリーズを観てみてはいかがでしょうか。