【考察】映画『ジョーカー』を評価できない理由。あらすじ/ネタバレ/解説まとめ

あいづ

更新日:

ー世界興行収入10億ドル(1000億円)を突破、R指定映画として史上最高の記録を更新ー

ーベネチア国際映画祭にて、金獅子賞を受賞ー

ーアカデミー賞にて、主演男優賞/作曲賞を受賞ー


など、数々の快挙を達成した映画『ジョーカー』。


今回はそんな『ジョーカー』について、以下の順に解説していきます。


・簡単なあらすじ

・謎の多いシーンの考察

・世間からの評価

・オマージュを受けた作品紹介


すでに本作を視聴していて、謎のシーンへの理解を深めたい方、賛否両論ある評価を知りたい方は、ぜひ読んでみてください!

目次

ネタバレ解説:映画『ジョーカー』のあらすじと概要



ゴッサム・シティで認知症の母を介護する傍らコメディアンを目指し、ピエロの派遣業で働いてる主人公アーサー・フレック(ホアキン・フェニックス)。笑いのある人生は素晴らしいと信じ、ドン底から抜け出そうともがく彼はなぜ、狂気溢れる『悪のカリスマ』ジョーカーに変貌したのか…?

2019年10月4日に日米同時公開。日本ではR15+作品と設定されています。


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映画『ジョーカー』の主演と監督紹介


主演(ジョーカー役):ホアキン・フェニックス


8歳の時にテレビドラマでデビュー。ハリウッドきっての個性派・実力派俳優であり、アカデミー賞、ゴールデングローブ賞、カンヌ国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭をはじめ多くの主演男優賞を受賞しています。本作ために3ヶ月間で23キロ減量。監督はもっと計画的にとアドバイスしたそうですが、一日りんご1個だけを食べ続けていたそう。


監督(脚本):トッド・フィリップス


映画監督・脚本家・映画プロデューサー。『ハングオーバー!』シリーズ一躍人気を集めた監督です。昔からダークコメディの要素を意識して映画の脚本/撮影していたようで、今回は全く違うジャンルへの挑戦と思われがちですが、『ジョーカー』も今まで制作してきた作品の延長線にあるようです。


そもそも『ジョーカー』とは。DCコミックスの人気ヴィラン(悪役)


映画『ジョーカー』について知る前に、まずはキャラクター「ジョーカー」について知っておきましょう。


ジョーカー(The Joker)とは、DCコミックスの出版するアメリカンコミック『バットマン』に登場する架空のヴィラン(悪役)です。"Batman #1"(1940年)に初登場しました。


主なジョーカーの見た目は、「ロングテール」「紫のスーツ」「手袋」「真っ白な皮膚」「緑の髪の毛」「裂けて常に笑みを湛えた口」。


ジョーカーは当初、犯罪の首謀者として描かれ、歪んだユーモアを持つサイコパスとして登場しましたが、その時代ごとの作品によって『イタズラをするマヌケなジョーカー』や『暗いジョーカー』など様々な性格を持ったジョーカー生み出されてきました。


そんなジョーカーは意外なことに、他のDCキャラクターのような特殊能力や高い身体能力(空を飛べる、瞬時に移動できるなど...)は持っていません。


ですが、ジョーカーはその代わりに「とても高い知能を持っている」ということが大きな特徴です。


『バットマン』や『ダークナイト』のジョーカーが特にそれに当てはまりますね。


では、本作のジョーカーはどんなキャラクターなのでしょうか?


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【見どころ】従来とは一風変わった「ジョーカー」が楽しめる


本作のジョーカーを見ていきましょう。



今作のジョーカーは、”ジョーカー”としてではなく、アーサー・フラックという中年男性として登場します。


アーサーは、「どんな時も笑顔で人々を楽しませなさい」という母の言葉と、人気コメディアンのマレー・フランクリンへの憧れから、コメディアンになるためゴッサムシティで大道芸人として働いています。


そんなアーサーは、病気の母親を支えたり、子どもを笑わそうとしたり、過去のジョーカーと違って他者に対し思いやりがあります。


一方、彼は緊張や興奮を感じると笑いが止まらなくなる情動調節障害を持っていて、他人とトラブルになることも。そのため、自身の障害を説明するカードをいつもポケットにしまっています。


ちなみに、従来のジョーカーの服装が紫のスーツなのに対し、アーサーは赤のスーツを着用しているのが特徴。


また、彼の白い顔はジョーカーの主な設定である「化学薬品のプールで溺れて皮膚が白濁色となった」のではなく、ダークナイトの「自分でメイクをしている」設定が継承されています。


そんなアーサー・フラックが、どのような過程を辿って”ジョーカー”になっていくのかが今作の見どころの1つとなっていると思います。


映画『ジョーカー』のストーリーを4つに分けて解説


ジョーカーは一度見ただけでは理解することが難しい複雑かつ巧妙な映画だと思います。

まずはストーリーを「起」「承」「転」「結」4つに分けてじっくり理解していきましょう。


ここでは主人公のアーサー・フレックをジョーカーとは呼ばず、すべてアーサーで通しますが、ご自身でアーサーがどのポイントでジョーカーになったのか考えながら読んでみると面白いかもしれません。


【起】ゴッサムシティの貧富とアーサーが持つ希望


貧しく、荒れたゴッサムシティで大道芸人として働き、病気の母親ペニーを支えるアーサー。


街の治安の悪さから不良少年らに襲われたり、緊張や興奮を感じると笑いが止まらなくなる情動調節障害が理由で誤解を受けたりと、幸せとはいえない日々を過ごしていました。


そんな貧しい生活を逃れるため、母親ペニーは、昔使用人として仕えていたトーマス・ウェインに救済を頼む手紙を出すも、一向に返事がないことを気にかけていました。


貧しい生活の中でのアーサーの唯一の楽しみは、毎週放送されるマレー・フランクリンのコメディショー。


コメディアンを目指しているアーサーはベテランコメディアンのマレーの大ファンでした。


そんなアーサーの細々とした人生にある日、思わぬ転機が訪れます。それは同じアパートに住む、隣人ソフィーに出会ったことです。よく他人から気味悪がられるアーサーでしたが、彼女はアーサーを面白いと言って笑顔を向けてくれるのでした。


【承】ウェイン社の社員殺しによって自信を得るアーサー


ある日、アーサーの同僚ランドルは、アーサーが不良少年らに襲われたと知って、保身のためにと半ば強制的に銃をくれました。


後日、アーサーが大道芸人の仕事として小児病棟で子ども達と踊っている時、服の中にしまっていた銃を落としてしまいます。


アーサーはボスに事情を説明するも聞き入れてもらえず、仕事をクビになってしまいました。


大好きだった仕事を失い、落胆しているアーサーはその帰路の途中、電車で女性をナンパしているウェイン社の男性社員3人を見かけました。嫌がる女性を見て気持ちが高ぶり笑いを抑えられなくなったアーサー。男性社員たちは面白がって突っかかってきます。


揉み合いの結果、興奮したアーサーは3人を射殺。最初は罪悪感に苛まれたアーサーでしたが、だんだんと高揚感と解放感を感じ、踊るのでした。


アーサーが家に帰ると、ニュースではウェイン社の男性社員射殺を批判する声と、それに賛同する貧困層からの支持がありました。そんな声がアーサーに自信を与えます。その後、コメディアンとして初の舞台に立ったり、隣人ソフィーを仲を深めたりと、アーサーは充実した生活を送ります。


【転】自分が最初から何も持っていなかったことを知ったアーサー


家に帰り、いつものように母親ペニーからトーマスへ手紙を出すように言われたアーサーは、内緒で手紙の内容を見てしまいます。


そこには自分が母親ペニーとトーマス・ウェインの子供であると書かれていました。


それの事実確認に勤しむアーサーでしたが、ある時、母親ペニーが倒れてしまいます。同時期に、アーサーのウェイン社員射殺に影響を受けた市民がデモをしていました。アーサーはそのデモに紛れ、父親であるだろうトーマスに会いにいきます。


トーマスに会ったアーサーでしたが、「お前は養子だ」と告げられ、母親ペニーが昔いたというアーカム州立病院で自分の医療記録を調べると、自分は養子で、母親の彼氏から虐待されていた事実を知りました。


その事実を知ったアーサーは嘘をついていた母親を殺し、母親の供養のため(また、銃を渡したことを黙認してもらうため)家に訪れた同僚ランドルも殺してします。


そして、心を通じ合っていたと思っていた隣人ソフィーさえも、全て自分の妄想であったと知り、アーサーは自分には何もなかったんだということに気づきます。


その後、アーサーは”ジョーカー”としてマレーのコメディーショーへ出演します。


【結末】ジョーカーとして舞台に立ったアーサー


マレーのスタジオに着き、マレーにあいさつした後、アーサーは自分のことをジョーカーと紹介してくれと頼み、”ジョーカー”としてついにテレビに出演します。ですが、アーサーが用意したジョークをマレーは遮り、笑いものにしました。


アーサーはその扱いに腹を立て、ジョークを披露するのをやめて、ウェイン社の社員殺害の自供をし、マレーを射殺します。


アーサーは逮捕され、パトカーの中から燃え盛るゴッサムシティを見つめ無邪気に笑います。


すると、突然救急車がアーサーの乗っているパトカーへ突っ込んできます。救急車を降りた男はジョーカーをパトカーから救出します。


それと同時に、別の場所ではピエロの仮面をかぶった暴漢に、トーマスと妻は射殺がされます。


再び描写はアーサーに切り替わります。


アーサーは車のボンネット上に立ちあがると、デモを起こす市民から英雄のように喝采を受け、アーサーはパトカーの上で踊り、笑います。


(ラストシーン)

シーンはとび、アーカム州立病院へ。アーサーは手錠をかけられて小さな部屋でカウンセリングを受けていました。


突然笑い出したアーサーに対してカウンセラーが「何がそんなに面白いの?」と、質問します。


アーサーが「ジョークを考えてたんだ」と言った瞬間、トーマスウェインの子ども(他作品では将来のバットマン)が射殺された両親の前で立ち尽くしている映像が写し出されます。


カウンセラーが「ジョークを聞きましょうか?」というと、「君に理解できないさ」と言って、シーンが切り替わります。


アーサーは病室の廊下を血でぬれた靴で歩き、廊下の奥にたどり着くと軽やかにダンスをし、精神病棟の監視員と思われる人に追いかけられ、逃げていくところで映画が終わります。


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映画『ジョーカー』の考察7つ


ではストーリーを思い出したところで、本作で話題となったシーンを振り返ってみましょう。


アーサーが冷蔵庫に入ったのはなぜ?


アーサーがトーマス・ウェインが自分の父親かもしれないという希望を持って、トーマスに会いに行ったが、自分は養子だということを告げられます。

その後、シーンは切り替わりアーサーの家となります。アーサーは無言で冷蔵庫の中身を出し、冷蔵庫の中に入るのでした。


このシーンを見て、ネットでは


「アーサーは死んだ?」

「あの冷蔵庫は子宮を意味している」

「あの後のストーリーはアーサーが冷蔵庫の中で考えた妄想」


など、いろんな仮説が立てられていました。


まず、みなさんに知ってもらいたいのが、あの冷蔵庫のシーンはアーサー役のホワキン・フェニックスのアドリブだということ。

彼は、「もし自分が精神的に不安定で、重度の睡眠障害に陥っていたとしたらどうするだろう?」と考え、冷蔵庫に入ったと言っています。


私はそれを知って、自分の境遇や社会の理不尽さから精神的に沈んで、眠れない。だから、アーサーは冷たく狭い冷蔵庫の中で、全てを遮断して休みたかったのだろうと考えました。


ちなみに、冷蔵庫に入っている時と、次のシーンでマレーからのスカウト電話を受け取っている時の窓の空き具合も同じなので、冷蔵庫に入った後、少しベッドで眠って、次の日を迎えたのではないかと思います。


アーサーは母親ペニーとトーマス・ウェインの子供だったのか?


アーサーがトーマス・ウェインの子どもかどうかは100%、断定できません。


何故なら、財力と権威を持ったトーマスなら使用人との関係の証拠隠滅や、母親ペニーの精神鑑定の書き換えなど易々とできてしまいそうだからです。


なので、今回は”アーサーはトーマスの子どもではないという”視点で考えてみました。


アーサーがトーマス・ウェインの子どもでないと考えられる理由は二つ。


1.母の手紙と、写真に残されたメッセージの筆跡が類似する

アーサーが読んで激怒した母親が書いたトーマス宛の手紙と、アーサーがマレーのショーに出る前に化粧台で見つけて握りつぶした写真の裏のメッセージ「Love  your smile TW」を見比べてみると筆跡がとても似ています。もしかしたらペニーの妄想が膨らんで、自分であのメッセージを書いたものかもしれません。


2.トーマスが自分のサインつきのメッセージを残すとは思えない

たとえ、若かりし頃のトーマスとペニーと本当に深いかかわりがあったとしても、使用人として働いている者に自分のサイン付きのメッセージを残すでしょうか。アーサーがトーマスにあった時「ペニーには妄想癖があって、逮捕され州立病院に入れられた」と言っています。なので、それを知っている上で、あの写真付きのメッセージを彼女に送るとも思えません。


ただ、個人的にアーサー(ジョーカー)とブルース・ウェイン(バットマン)が兄弟だったら面白いだろうな、とは思います(笑)


殺されたトーマス・ウェイン夫婦の子供はバットマン?


トーマス・ウェインの息子トーマス・ブルース(他作品では後のバッドマン)が今回も登場しましたが、トーマス・ウェインの子供は”ブルース”という名を持っていますが、バットマンではないと私は考えます。


何故なら、今回の『ジョーカー』も他のバットマンシリーズ同様、他の作品と繋がる”要素”は持ちつつも、全く違う世界線、いわばパラレルワールドであるからです。


また、アーサーの年齢を30-40歳と考えると、ブルース(おそらく6.7歳)が大人になってバットマンになるころにはアーサーは50歳-70歳。


今までのバットマン作品では、ジョーカーとブルースの年齢差がそこまで大きくなかったので、本作での二人の年齢を考えると少し違和感があります。


アーサーの彼女?隣人ソフィーは幻覚だった?殺された?


子持ちの隣人ソフィーがアーサーの幻覚だったというのは映画の中で明かされていますが、気になるのはソフィーに何が起こったのかという部分でしょう。


私が考えるにアーサーはソフィーには何もしていないと思います。


その理由として考えられるのが、


アーサーは子供が好き(バスで一緒になった子供を笑わせようとしていた、仕事で小児病棟で働いていた、ウェイン邸で使用人の首を絞めたが、幼いブルースが見ているのに気づいてやめたという理由から)

アーサーが同僚ランドルを殺した時、いつも味方でいてくれたゲイリーは殺さなかった

アーサーは毎回、人を殺した後、障害からの笑いではなく、心からの笑みを浮かべるから


上記の理由から、アーサーに一度も危害を加えず、さらに子供がいるソフィーにアーサーが手を出すことはなかったと思います。

ソフィーの部屋を去ったあと、自身の部屋で泣いて悲しんでいましたし。


また、アーサーが泣いている時に、パトカーのサイレンが聞こえることについてですが、ゴッサムシティの治安の悪さを考えるとサイレンなんて四六時中聞こえそうなので、ここでは関係ないと考えました。


アーサーと隣人ソフィーがやっていたジェスチャーは何?


作中でアーサーとソフィーがやっていた、頭を銃で撃ち抜くジェスチャーは映画『タクシー・ドライバー』のオマージュです。記事の最後で、この映画について紹介しています。


トッド・フィリップス監督は、インタビューで本作には『タクシー・ドライバー』の要素を持たせていると言っていたので間違いないでしょう。


ハンドサインの意味は所説ありますが、ここでは「殺してほしいくらい最低な気分」という意味を持っていると考えられます。


一回目のジェスチャーはソフィーから「このアパート最悪だよね」と言った時、二回目はアーサーがソフィーの家に勝手に上がりこんだ時に見れました。


職を失い、自分には母親も父親もいないと分かり、絶望を感じている中ソフィーの家を訪れ、このジェスチャーをしたのは、『殺してほしいくらい自分の人生は最悪だ』という意味を含んでいたのではないかと思います。



序盤とラストシーンで出てきたアーサーのカウンセラーは同一人物?


いいえ。市営のカウンセラーと、ラストシーンでアーカム州立病院にいたカウンセラー全くの別人です。


ちなみに、アーカム州立病院といえば、他のジョーカー作品でよく登場するハーレークインが務めていた精神病棟と同じで、そこではハーレークインがジョーカーのカウンセラーでした。


ですが、今回のカウンセラーはハーレークインとは年齢も性格も人種も違う別の女性です。


ラストの血の足跡について。アーサーはカウンセラーを殺したの?



あの量の出血から見て、アーサーはカウンセラーを殺した、または殺そうとしたということは間違いないと思います。


ただ、今まで自分に危害を加えなかった人を殺さなかったアーサーが、突然カウンセラーを殺す理由が見えなかったのでこのラストシーンについて、3つの仮説を以下にまとめました。


物語がどんな時系列で進んでいたのか、そしてアーサーはいつからジョーカーとなったのか、そもそもアーサーはジョーカーなのか?を考えながら読んでみてください。


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映画「ジョーカー」のラストシーンについての3つの仮説と考察


アーサーが手錠をかけられて、カウンセラーと共に小さい部屋にいるシーン。

このシーン、謎が多く、映画の軸とも言われている需要な部分を私なりに考察してみました。


【仮説1:時系列がラストだけ違う】過去にもアーサーは精神病院に収容されていた


映画開始7分ごろアーサーとカウンセラーが話しているシーンで、アーサーが施設で閉じ込められて、壁に頭を打ち付けている映像が映されます。


壁のデザインを見る限り、そこはラストシーンで映されるアーカム州立病院だと思われます。


カウンセラーは「なんであなたはあそこに閉じ込められていたと思うの?」とアーサーに質問していました。


そこから、あのアーサーが手錠をかけられて、カウンセラーと共に小さい部屋にいるラストシーンは、過去に起こった出来事だということが分かります。


あのラストシーンから物語が始まったとすると、州立病院に収容されている間にアーサーが「ジョーカーとなって、街に混乱を起こし、トーマスウェイン殺しをする」計画を立て、街に戻った後、それを実行に移したという仮説が立てられます。


ですが

・人殺しに慣れていなかったアーサーがはじめにカウンセラーを殺す?

・ラストシーンのステップやダンスは、映画終盤でアーサーが得たものでは?

・そもそも州立病院のカウンセラー殺して普通の生活に戻れる?


という疑問が残りました。


ということで、次に時系列通りだったという仮説を立てました。


【仮説2:時系列通り】物語の最後に逮捕され精神病院に収容された


ここでは時系列通りという考え方をしてみましょう。


アーサーはマレーのテレビに出て、ゴッサムシティを混乱に招いた後、精神病院に入れられました。


親しかった人々を失い、もう失うことがなくなったアーサーは、少し目障りだったカウンセラーをも殺してしまいます。


仮設2は自然な流れですが、また疑問が残りました。それは、

・施設に収容される前に緑色だったアーサーの髪がラストシーンではきれいな黒色に戻っていたのはなんで?

・なんでアーサーが知るはずのないブルース・ウェインが射殺された両親の前で立ちすくんでいる映像が流れたの?


という部分です。


時系列通りでも、そうでなくても若干辻褄が合いません。

(髪色については”時間がたって色落ちした”なんて全く洒落ていない事実で終わらせたくないという私の意地がありますが...。)


ということで、以下、全部アーサーの妄想説の仮説です。


【仮説3:全てアーサーの妄想説】収容中にちぐはぐで自由な物語ができた


結局ここの仮説が私には一番しっくりきました。


なんでかというと、アーサーが見るはずのない光景を見ることができたり、いるはずのない場所に存在していたりするから。


例えば、


・アーサーが幼少期の頃、母親ペニーが精神鑑定されている場面に大人になったアーサーが立ち会っている

・街の片隅でブルース・ウェインが両親の死体の前で立ちつくしている描写が州立病院にいるアーサーに見えている

・部屋でデモのニュースを見ていたアーサーが、急にデモの群衆に揉まれている


など...。


まるで人が頭の中で妄想している時と同じ感じ。とても曖昧で自由なストーリーです。


そして、あの「11時11分」を指している時計の理由にも繋がります。


これは、アーサーが州立病院で、「11時11分」にストーリーを考えていたから、その妄想ではどの時計を見ても「11時11分」となるのでは?と考えました。


映画7分目に映されるアーサーが施設で閉じ込められて壁に頭を打ち付けている映像も、妄想のストーリーを考えている時の映像を一部映し出しただけではないかと思います。


よって、この映画で、唯一アーサーの妄想でないと考えられる部分は以下の通り。


・(ラスト)カウンセラーと話し、殺して、踊り、逃げるシーン

・(開始7分目)カウンセラーを殺したことが理由で、反省部屋に収容されているシーン


なので、このストーリーは収容中にアーサー(ジョーカー)が作った


『ある中年男性が、ジョーカーになるまでの悲劇(喜劇)のストーリー(笑)』


っていう超大作ジョークなんだと私は考察します。


でも!!!


「妄想オチ」なんかで片付けられないほどに、この映画には私たちの感受性を揺さぶる何かがあります。

では、その理由を、映画『ジョーカー』への世間の評価と感想を調べつつ考えてみました。


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真っ二つに分かれた映画『ジョーカー』の評価/感想


「アーサーがジョーカーとなるまでの過程に感動した」

「見終わった後の解放感がいい」

「ホアキン・フェニックスの演技が素晴らしい」


といった声が多かったです。


本作ではアーサーがジョーカーになる過程をとても丁寧に書いていました。


アーサーの周りにある光と影や、ゴッサムシティに対しアーサーが小さく映るようなカメラアングルなど、ストーリー以外でも私たちが思わず作品に引き込まれてしまう要素がたくさんありましたね。


そして、ホアキン・フェニックスの演技力。


ホアキンははじめ、監督トッド・フィリップスからオファーを受けていたにもかかわらず、アーサーの「笑い」を完璧に演じきれるのか不安で、オーディションを志願していたようです。


23キロの減量もそうですが、ホアキンがどれほど本作に真剣に取り組んでいたかが分かります。


映画『ジョーカー』への批判的な感想まとめ


「今までのジョーカー像から外れる」

「辛い生い立ちがあれば何をしてもいいって考えが嫌い」

「気持ち悪い、ただの殺人鬼の話」


というような声がありました。


確かに、『ジョーカー』は他のDCシリーズとは一線を画す作品であると思います。なので、今までの漫画の中のヴィラン(悪役)だったキャラクターが急に人間味を帯びてしまったことに、違和感がある、という意見には納得です。


続いて、映画の社会風刺について言及する意見についてですが、この映画を裁こうとすると、なかなか一言ではまとめきれない部分がでてくるので、次の感想へ続きます。


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感想:私が映画『ジョーカー』を評価できなかった理由


私はアーサーのジョーク(=本作)を絶賛することも否定することもできませんでした。


その理由は、アーサーのこの言葉にあります↓


『コメディは主観だ。この社会の善悪を主観で決めているように、あなたも(僕の)コメディを面白いか、そうでないか決めればいい。』


マレーはアーサーのジョークが面白くてテレビに呼んだのではなく、「アーサーを笑いものにすることで視聴者を盛り上げよう」と考えていました。それに対し、アーサーは「自分を不当に扱った者を殺す」というジョークを披露しました。


すなわち、誰かにとっての悲劇が誰かにとっては人生を盛り上げる喜劇になるし、ある人にとって笑える喜劇は他者にとって最悪の悲劇になりうるってことです。


でも社会的には、アーサーが面白いと思った「自分を不当に扱った者を殺すこと」は「悪」とみなされてしまします。


では、


「虐待の黙認」「自分の保身のために同僚のクビを見て見ぬふりする」「気味が悪い(とあなたが感じる)人がいたら笑って晒し者にして、時には殴る」「医療や福祉制度のコストカット」


...は、「皆が酷い人間ではない(これはマレーの言葉)」「それでも殺しは良くないことだ」で済まされるのか?あなたの”主観”はどうなってんの?と、映画を観ていてアーサーに問いかけられているように感じました。


そして私は、その問いかけにはっきりと答えられませんでした。


何故なら、私の”主観”はアーサーをジャッジするものでなくて、私をジャッジする物差しとなって自分に返ってくると思うからです。


みなさんはどうでしょうか?アーサーの行動や、この映画を裁けますか?


この映画にある完全に分断できない「悪」と「善」の要素が、我々が『ジョーカー』に惹きつけられる理由の一つではないのかな、と考察します。


映画『ジョーカー』に影響を与えたとされる映画3選 


『ジョーカー』の監督トッド・フィリップスは『ジョーカー』を制作する上で多くの映画を参考にしています。

今回はその中から、3作品を『ジョーカー』との共通点も解説しながら、皆さんに紹介します。


『モダン・タイムス』(1936年)


チャーリー・チャップリンが監督・製作・脚本・作曲を担当した喜劇映画。本作のアーサーのピエロの恰好や街頭や小児医院で踊っている姿はこの映画が由来するといっていいでしょう。また、この映画『モダン・タイムス』も資本主義社会や機械文明を題材に取った作品で、労働者の個人の尊厳が失われ、機械の一部分のようになっている世の中を笑いで表現している社会背景を持った作品です。本作の主人公アーサーと重なる部分も多くあります。

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『キング・オブ・コメディ』(1982年)


コメディアンとして有名になりたいと考えている34歳のルパート・パプキンは、有名コメディアンのジェリー・ラングフォードに憧れていた。ある時、ジェリーに自分の代わりに番組に出て欲しいと言われ念願夢が叶うのだが、実はこれはすべてルパートの妄想だった...。〉まさにアーサーですね。しかも主演は『ジョーカー』で人気コメディアン、マレー役を務めたロバート・デ・ニーロなんです。ストーリー以外にもアーサーの動きやカメラアングルなど類似する部分が多くあります。

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『タクシードライバー』(1976年) 


この作品は、1970年代のアメリカにおける社会問題をあるタクシードライバーの視点で描いています。帰還兵の孤独、メディアの一面性と欺瞞、政治社会への不満によって翻弄された一人の男のストーリーです。先ほど説明した頭に銃を当てるジェスチャーが有名ですが、中年男性が社会に不満を抱き、行動を起こすというストーリーはアーサーと共通する部分があります。ちなみに主演はまたまたロバート・デ・ニーロです。

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映画『ジョーカー』のネタバレまとめ 


以上、映画『ジョーカー』のネタバレ解説でした。


この作品はストーリーこそ賛否両論ありますが、ホアキン・フェニックスの演技や、トッド・フィリップス監督のカメラワークなど、見ていて「美しい」と感じる要素がたくさんあります。


ストーリー含め、見れば見るほど深みを増す作品なので、是非何度も視聴してほしいです。

今回の記事を見て、また『ジョーカー』を視聴したいと思った人は31日間の無料トライアルができるU-NEXTをおすすめします。


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※本ページの情報は202106月時点のものです。最新の配信状況は各動画配信サービスサイトにてご確認ください。

執筆
あいづ

好きな映画監督はタランティーノ。英語・フランス語・スペイン語を映画やドラマから勉強するのが好きです。最近チャイと和菓子にハマってます。

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