東のエデンってどんな作品?
多くのアニメファンから高い支持を得ている「東のエデン」とは、一体どのような作品なのでしょうか? テレビシリーズは、2009年の4月から6月まで放映され、全11話構成となっています。アニメファンを夢中にさせた「東のエデン」は、その人気の高さから劇場版が2作公開されています。
「東のエデン」に原作小説はなく、「攻殻機動隊STAND ALONE COMPLEX」を手掛けたことで有名な神山健治監督の完全オリジナルストーリーとなっています。この作品は、フジテレビ他各局で放送されている、深夜アニメ放送枠「ノイタミナ」史上初となるオリジナルストーリーであることが、アニメファンの間で話題となりました。
神山監督は国内だけではなく、海外からも高い注目を集めており、初となるオリジナルストーリーで制作された「東のエデン」はこれまでに、「アニメーション神戸賞作品賞」や「東京国際アニメフェア2010」などの、名誉ある賞を多数受賞しています。
原作がないにも関わらず、TVシリーズ、劇場版共に高い評価を得て大ヒットしました。「東のエデン」はミステリー要素やアクション要素が満載なので、大人でも楽しめる作品になっています。
主要の登場人物とキャストをご紹介!
物語のあらすじや結末を解説する前に、作中に登場するキャラクターやキャストをご紹介します。物語が展開していく中で、深く関係している主要キャラになっているので、ぜひ注目してみてください。
滝沢朗(CV:木村良平)
本作の主人公として登場する滝沢朗は、記憶喪失の青年です。明るくてポジティブな性格が魅力的な彼は、誰とでもすぐに仲良くなることができ、作中では引きこもりの板津と仲良くする姿が描かれています。
「滝沢朗」という名前は、複数用意されていたパスポートに記されていたものであり、本名かどうかは分かりません。端正なルックスや性格の良さなどから人気が集まり、多くの女性ファンの心を掴みました。
自然と人を惹きつける魅力を持つ彼は、この作品において欠かせない人物です。滝沢朗の声優を演じたのは、「輪るピングドラム」や「僕は友達が少ない」、「魔法科高校の劣等生」などの人気作品に出演している木村良平さんです。本作で初となる主演を務めたことで、世間での知名度が上がりました。
森美咲(CV:早見沙織)
本作のヒロインである森美咲は、就職を直前に控えた大学4年生です。事故で両親を亡くしており、現在は実家のパン屋を継いだ姉夫婦と暮らしています。
比較的おとなしい性格の彼女ですが、作中では大胆な行動に出る姿も描かれています。主人公の滝沢とは、修学旅行で訪れたアメリカで出会い、その後共に日本へ帰国しました。
次第に惹かれていく彼女は、滝沢に恋心を抱きます。森美咲の声は、声優の早見沙織さんが務めました。
これまでに、「鬼滅の刃」や「賭ケグルイ」、「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」などの人気作品にも出演しています。
大杉智(CV:江口拓也)
森美咲の同級生である大杉智は、高校時代から彼女に片思いをしています。大学では同じサークルに所属しており、恋の悩み相談は仲間には明かさず、恋愛サイトを利用しています。
彼は、咲と食事に行く約束をしていた日に、滝沢のバイクに彼女が乗っている姿を目撃してしまうのです。滝沢に不信感を抱いた彼は、独自に調査をした結果、犯罪者なのではないかと疑い始めます。
声優を務めたのは、「機動戦士ガンダムAGE」や「黒子のバスケ」、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」などの作品に出演した江口拓也さんです。
平澤一臣(CV:川原元幸)
平澤一臣は、美咲や大杉が所属するサークル・東のエデンの参謀を務めています。論理的思考を持っている彼は、モバイルサイトを運営する「東のエデン」を足掛かりに起業しようとします。
平澤一臣の声を演じたのは、声優の川原元幸さんです。大人気アニメ「ケロロ軍曹」などの作品に出演したり、数多くの洋画作品の吹替も行ったりしています。
葛原くるみ(CV:齋藤彩夏)
咲の後輩で同じサークルに所属している葛原くるみは、モバイルサイト・東のエデンをプログラミングで制作している凄腕のプログラマーです。周りからは「みっちょん」とも呼ばれています。
声優を務めたのは、「おじゃる丸」や「ふたりはプリキュア」などの人気作品に出演経験がある齋藤彩夏さんです。
近藤勇誠(CV:白熊寛嗣)
刑事であり、セレソンゲームの参加者である近藤は、2000万円もの借金を抱えています。後に、配布されたノブレス携帯の電子マネーを、ギャンブルや女性関係などでほぼ使い果たしてしまいます。
記憶を失っていた滝沢に、セレソンゲームの存在を教えるきっかけになった人物です。声優は、「オーバーロード」や「テルマエ・ロマエ」などの作品に出演している白熊寛嗣さんです。
気になるあらすじや結末を徹底解説!
多くのファンから支持されている「東のエデン」では、複雑なストーリーが展開されており、多くの謎が生まれます。ここでは、物語のあらすじや結末について解説していきます。
2010年11月22日、日本各地に10発のミサイルが落とされました。しかし、この事件による犠牲者は不思議なことに一人も出なかったため、人々はすぐに忘れ去ってしまいます。
それから3ヶ月が経った頃、咲は修学旅行でサークルのメンバーとアメリカへ訪れていました。サークルの仲間と離れ一人でホワイトハウスの前に訪れた彼女は、トラブルに巻き込まれそうになってしまいます。
そのピンチを救ったのは、ホワイトハウスの前に何故か全裸で佇む滝沢朗でした。彼は記憶を失っており、手には82億円もの電子マネーがチャージされた携帯電話がありました。
現地で仲良くなった2人は、その後一緒に日本へ帰国することになります。2人はアメリカから帰国する前に、東京に11発目となるミサイルが落ちたことをニュースで知ります。
日本では、2010年に起こった奇妙なテロ事件以降、不穏な空気が蔓延していました。その際には犠牲者は出ませんでしたが、今回のミサイルは旅客機に衝突し、墜落してしまったのです。
最初の被害とは違い、死者が出たことにより、状況が大きく変わりました。日本を救うべく、12人の人間に100億円の電子マネーとノブレス携帯が渡され、「セレソンゲーム」が開始しました。
滝沢は、空港で刑事であり、セレソンのメンバーに選ばれた近藤に出会い、セレソンの存在を知ります。記憶を失う前にセレソンのメンバーが持つノブレス携帯を使っていたことを知り、自分の過去を探るために調査を始めました。
セレソンゲームの最大の見どころは、それぞれで異なるプレイヤーの行動です。日本救済を目的としているにも関わらず、自己中心的で身勝手な考えによって、日本に新たなミサイルを落とすなど、予想していなかった出来事が起こります。
関心がない者、欲求を満たすままに行動する者、犯罪者を裁く者など、様々なプレイヤーが参加しています。実は、日本に落とされたミサイルはこのゲームによるものだったのです。
ゲームの首謀者である結末を決め込んだ大人たちと、それに抗う若者たちの対立する様子が描かれている作品になっています。現在の日本の社会問題に対するメッセージ性が強いことや考えさせられることがあることから、多くの人々が高く評価をしています。
「迂闊な月曜日」とは一体何を指しているのか?
2010年11月22日(月曜日)に発生した奇妙なテロ事件を、人々は「迂闊な月曜日」と呼んでいます。このように呼ばれるようになったのは、首相がこの事件に対して「迂闊でした」と発言してしまったことが原因です。
日本各地に10発のミサイルが落とされたにも関わらず、奇跡的に犠牲者が出ませんでした。
セレソンゲームとは?
作中に登場するセレソンゲームとは、テロ事件によって被害を受けた日本を救うために開催されたゲームです。12人のプレイヤーが選ばれ、それぞれに100億円の電子マネーとノブレス携帯、ジュイスが配布されました。
参加を拒絶したり、私利私欲のために与えられたアイテムを使用したりすると、ペナルティが課せられるシステムになっています。プレイヤーはお互いの正体を知りません。
具体的にはどのようなゲームなのか?
Mr.OUTSIDEという人物によって開催されたセレソンゲームは、日本救済を目的としています。ゲームの参加者は合計で12人、そのうち1人はサポーターという役割を担っており、誰がサポーターなのかはプレイヤーには知らされていません。
「この国を正しき方向へと導く」ことが、このゲームを終わらせる方法です。もし、プレイヤーのうち誰か一人でもこれを成し遂げた場合、敗者は消滅します。
ここで言う消滅とは、記憶が消去されることを意味しています。
使われている道具
選ばれし12人のプレイヤーが、日本を救うために各々で異なる義務を果たしていくセレソンゲームですが、実際にゲーム内では一体どのような道具が使われているのでしょうか?ここでは、参加者一人ひとりに配布される道具の役割を解説していきます。
ジュイス
全員に配布されたノブレス携帯を通して応対する専属のコンシェルジュのことを指します。音声のみのアイテムであり、それぞれのコンシェルジュの人格が異なっています。
エデンシステム
これは、咲や大杉が所属している大学サークル・東のエデンが開発したモバイルサイトのことです。携帯のカメラやパソコンで読み込んだ画像をもとに、瞬時に検索できる優秀なシステムです。
非常に便利であるため、大学の生徒や教員なども利用していました。しかし、誹謗中傷や個人情報漏洩など、システムが悪用されてしまい、ある女性学生を退学に追い込む事件が起こってしまいます。
世間コンピューター
大学サークル・東のエデンの開発時に、アドバイザーとして携わった板津が開発したシステムです。凄腕のハッカーでありながら、現在は引きこもりになっています。
「○○になる確率」と入力すると、その日が訪れるまでの日数が表示されるといったシステムで、ゆくゆくはエデンシステムと組み合わせることで、正確で完璧な未来予測ができるのではないかと検討されていました。
AirShip
このアイテムも板津が開発したものです。公安の盗聴を避けることを目的としており、実際に東のエデンのメンバーが導入しました。
動画や通話、電子マネーで送金できることから、多くの人々が通信手段として利用しています。
滝沢明とは一体何者なのか?
全裸で記憶を失った状態で登場する滝沢は、一体何者なのでしょうか?彼の正体や記憶を失っていた理由、目覚めた時に手にしていた携帯などについてご紹介します。
作中では「滝沢朗」という名前で登場していますが、それは偽名であり本名は「飯沼朗」といいます。
なぜ記憶を失っていたのか?
滝沢は、セレソンゲームのメンバーに選ばれていたため、日本の主要政令都市に10発のミサイルが落とされることを知っていました。その事実を知ってしまった彼は、いてもたってもいられなくなり、何とか自分の力で国民を避難させようとします。
滝沢はネットの掲示板に、日本を救うためにはどうしたら良いか問いかけます。ミサイルを落とされるのが11月22日であることを知った滝沢は、その日に各主要政令都市でオフ会を開催しますが、集まったのは200人のニートのみでした。
しかし、彼らが必死に国民に呼びかけたことによって、多くの人々が避難し、ミサイルによる犠牲者を出すことなく事を終えたのです。ニートたちの活躍により被害を免れましたが、避難した人々は財産を失ったことに腹を立て、ニートたちに怒りをぶつけるようになります。
ニートたちを救おうと、滝沢は自分がテロ事件の犯人だと言って注意をそらします。そうしている間に、滝沢はニートたちを国外へと逃がし、自分もアメリカへ向かうのです。
アメリカでテロ事件の真実を公表しようと考えた滝沢は、拷問対策に備えるために自らの記憶を消してしまいます。
謎の携帯電話の正体とは?
目覚めた時に手にしていた携帯電話の正体は、セレソンゲーム参加者に与えられるノブレス携帯でした。滝沢は自らの記憶を意図的に消去したため、ノブレス携帯の存在を忘れています。
大学生サークル「東のエデン」
咲が始めたサークル・東のエデンには、どのようなメンバーが所属しているのでしょうか?また、行っている活動などについてご紹介します。
所属しているメンバー
サークル開設者である森美咲、葛原くるみ、平澤一臣、大杉智、春日晴男、おネエの6人のメンバーが所属しています。個性が強く、一人ひとりが異なる能力を持っています。
どのような活動をしているのか
様々なシステムやプログラムを開発している東のエデンですが、本来はリサイクルコミュニティとして設立されました。中古品や古着、使わなくなったアイテムなどのリサイクル品を、フリマで販売するのが主な活動です。
現在のメンバーである平澤が参加したことによって、東のエデンはモバイルサイトを展開することになります。
板津は生きていたのか?
東のエデン開発に携わった板津の過去を探るために、彼が引きこもっている家に訪れます。彼は、テロ事件やセレソンゲームについて知るために様々ことを調べていました。
調査を進めていくうちに、セレソンNo.10である結城の履歴を見ることになります。そこには、「日本国主要政令都市6都市を空爆」という履歴が残っていたのです。
真実が書かれてある履歴を見てしまった板津を処理しようと、滝沢を追っていた結城は自身と協力関係にあるセレソンNo.1の物部と共に、板津の自宅の前まで訪れます。それを知らずに板津は家の外に出てしまい、結城が運転していた車にはねられてしまうのです。
死亡したのではないかと思わせるようなシーンでしたが、その後生存していたことが明かされています。
現在の日本の状況と似ている
作中では、日本各地に10発のミサイルが落とされたテロ事件が起こったにも関わらず、国民の関心は時間と共に薄れていきます。この状況が、新型コロナウイルスが蔓延する現代社会と酷似していると言われているのです。
連日コロナ感染者のニュースが報道されていることに慣れてしまい、国民の危機感は薄れています。作中に登場する「自己責任」という言葉は、ニートたちに向けられたセリフです。
この言葉は、コロナウイルスの感染対策に対して同じような意味で使われています。今の日本の状況を見ると、どれだけ対策をしていても、感染してしまえば自己責任だと非難されてしまいます。
また、ネット上には不確かな情報が飛び交い、人々を混乱に招いています。このような状況が、作中で繰り広げられる情報戦に似ていると言われているのです。
「攻殻機動隊」との共通点を考察!
ファンの間で話題になったのが、「攻殻機動隊」と共通している部分がいくつか見受けられるということです。「攻殻機動隊」は、同じく神山健治氏が監督を務めた作品です。
では、この2作品にはどのような共通点があるのでしょうか?
世界観が同じ
「東のエデン」は2010年の日本を舞台にしており、「攻殻機動隊」はその20年後の2030年の日本が舞台になっています。2作品の世界観をつなぐために、作中ではいくつかの伏線となるシーンが登場します。
ミサイルによるテロ事件は計2回起こってしまいますが、1回目の事件では犠牲者がゼロでした。しかし、2回目の事件では旅客機に搭乗していた乗客乗員236人が死亡してしまいます。
多くの犠牲者が出てしまったこの事件の生存者は6歳の児童2人だけでした。そのうちの1人が、「攻殻機動隊」の主人公・草薙素子なのです。
それだけではなく、どちらの作品にも「播磨脳科学研究所」が登場したり、ジュイスの音声が「攻殻機動隊」の先頭ロボ・タチコマであったりと、いくつかつながりがあります。
現代社会の問題点を提起している
「攻殻機動隊」のサブタイトルにもなっている「スタンド・アローン・コンプレックス」という現象が、現代社会の問題点を提起していると言われています。これは、集団で1つの知性を形成し、行動するという現象です。
これに似た現象で、「群知能」という自然界でも起こる現象があります。イワシなどが群れで行動するのは、種を生存させようとする本能から起こるものです。
群知能は人間社会にも起こることで、皆が同じ行動を取ることによって、個性を失い劣化してしまうのではないかと危惧されています。
「東のエデン」原作との違いは?
この作品はオリジナルストーリーなので原作はありませんが、小説版が出版されています。小説版では、アニメでは描かれていないエピソードが収録されており、情報量も豊富であるため、物語を読み解き、より深く理解したいという方は、ぜひ小説を読んでみてはいかがでしょうか?
東のエデンを観た人の感想
https://twitter.com/suke_kouno/status/1284088561159958529?s=20
作品を通して、現代社会がどれほど生きづらいのかを強く訴えていると感じたというコメントや、今の日本の問題を表しているといったコメントが見受けられました。問題点を提起しているように、メッセージ性が強い作品であることが分かります。
東のエデンのあらすじや考察に関するまとめ
今回は、神山健治監督のオリジナルストーリー「東のエデン」についてご紹介しました。作中に登場する個性的なキャラクターや、メッセージ性の強い内容など、観る人を考えさせながらも、楽しませてくれる作品です。
本作は2010年の日本を舞台に描いていますが、現代社会との共通点がたくさんあると思っている方は少なくありません。自分なりに考察し、様々な謎を解き明かしてみてはいかがでしょうか?
また作品をゆっくりと楽しみたい方は、U-NEXTでも視聴できます。